アパレルの国内生産を守る方法を考えてみた!

普段ファッションビジネスを中心に学校で教えている僕ですが、今回はちょっと畑違いの事について書いてみます。

「ロエベ」が職人の手仕事を称えるコンテストを創設 世界各国から作品を募る

今年設立170周年を迎える「ロエベ(LOEWE)」は、現代における手仕事のすばらしさを称える国際的なコンテスト「ロエベ クラフト プライズ(LOEWE CRAFT PRIZE)」を創設する。主催は、ロエベ財団とジョナサン・アンダーソン=クリエイティブ・ディレクター。1846年に職人が集まりスタートしたブランドの原点に立ち返り、才能ある職人の功績を世に広めることや、芸術的先見性と革新性を併せ持つ世界各国の職人を支援・発掘することを目的に、年1回の開催を計画する。

ラグジュアリーブランドが職人を大切にしている事例をよく見かけます。こちらの記事ではロエベが職人の為のコンテストを創設したとの事ですが、ブランド主導で職人学校を作っている事例なんかもちらほら。。シャネルもルイヴィトンも、そしてボッテガヴェネタやジュエリーブランドのヴァンクリーフ&アーペルなども職人の為に学校を作っています。これはもちろんブランドの品質を担保する為、技術力の高い職人が常に必要だからです。品質を守ると共にブランドのサプライチェーンを確保しているという訳です。

一方日本に目を向けてみますと、国内の縫製工場は瀕死の状態。こちらに記載がありますが、日本全体の衣料品の97%は海外製品との事。人件費を考えれば当たり前ではありますが、日本国内ではサプライチェーンを守る取り組みはしていないのでしょうか?

弘前市がエスモードと提携し、ファッション産業の国際化を目指す

アパレルの縫製企業が集う青森県弘前市とファッション教育機関であるエスモードとの提携。これももちろん素晴らしい取り組みではありますが…、、

思惑通りにいかない産学連携

海外と日本との差。それはブランド主導で職人を育成していない事です。縫製工場は今若い人材がほとんど入って来ていない状況です。ではエスモードの学生がこの取り組みから青森県で働きたいと思うのでしょうか。将来ファッション業界を志す若者が何故専門学校に来ているのかを考えれば、この取り組みの効果が薄いのがわかります。専門学校に通う学生は「自分の好きな有名ブランドで働きたい」「ブランドを立ち上げたい」「将来店を持ちたい」といったところが中心です。いくら有名ブランドの商品を製造している現場であっても彼ら彼女らの認識は「田舎の工場」の域を出ません。しかしそれが、「ロエベの工房」と名前が付くだけでその看板を背負える訳ですから誇りを持って仕事が出来ると考えるのではないでしょうか。

ではそのような取り組みをしているブランドが日本にはあるのでしょうか。僕が無知なだけかもしれませんが、ほとんど聞いた事がありません。誰か知っている方がいれば教えて頂きたいです。以前読んだ「鎌倉シャツ 魂のものづくり」から一部抜粋しますと、

宇惠シャツ(大阪府大阪市)は四年前までは、バーバリー、コムデギャルソンなどの高級ブランドを手がけていたが、現在は鎌倉シャツのみに絞り、月四000枚から五000枚を生産している。

そして高級ブランドの生産を辞めた理由としては、

以前、宇惠シャツの他社との取引は、発注が五000枚あったかと思えば、いきなり二000枚になるなど安定しなかった。

と記載されています。コムデギャルソンくらいのブランドですらこの状況。これではブランド主導でサプライチェーンを守る事が出来ているようには思えません。鎌倉シャツでは縫製工場と定期的に会議を開き品質を担保する取り組みをしています。このようにブランド主導の取り組みでもなければ今後国内生産を守るのは難しく感じます。

僕はこの分野に関して正直そこまで強い興味がありませんし、海外の工場での人件費が安ければ市場原理で生産がそちらに移る事は自然な事だと考えています。しかし国内生産を守ろうという取り組みや日本の縫製技術を謳う工場の事例を見るたびに違和感を感じます。違和感の正体はもちろん、

「何故ブランド主導で取り組まないのか?」

です。国内でもクラフトマンシップを掲げたり、低価格商品を非難するようなデザイナーやブランドがある訳ですから、職人の育成を視野に入れて活動してもいいのでは?と思います。それがブランディングにもなりますし、品質を担保もしてくれるんですから。