ファッション全般  2019-02-04

【在庫処分最前線】「実用化できるリサイクル技術は存在しない」- 在庫処分屋がサステナビリティの最適解である理由(ショーイチ)

【在庫処分最前線】
第1回 ショーイチ 山本昌一社長
・縮小傾向を感じる国内衣料品市場
・リサイクル繊維製品は経済性の問題で支持されにくい
 
近年、大手アパレルブランドの不良在庫品の廃棄問題に注目が集まっているが、ブランドステイタスを維持するために廃棄するという方法は、別にバーバリーに限らず、これまで多くのブランドが採ってきた手法である。アウトレットストアを出店するという手法もあるが、逆にアウトレットストアを出店しても在庫処分が追い付かない場合もある。
 
某アパレルでは直営アウトレットストアで年間16億円くらいの売上高があるというが、それでも不良在庫品は一掃できず増える傾向にある。16億円分以上に売れ残りが生じるためだ。そしてそういうアパレル企業は珍しくない。
アウトレットストアでも在庫処分が追い付かないとなると、残る手段は2つ。産業廃棄物として捨てるか、バッタ屋と呼ばれる在庫処分業者に安値で引き取ってもらうかのどちらかしかない。
 
今回から3回に分けて、在庫処分業や新規の在庫処分サービスを展開する企業の社長インタビューを特集として掲載する。
 
その第1回は衣料品の在庫処分業者最大手のショーイチを運営する山本昌一社長である。
メディアにもしばしば登場する山本社長が語る在庫処分業の現状とは?
 
 

在庫処分トップシェアの理由と責務

 

-国内市場の動向をどう感じている?
国内衣料品市場は縮小していると感じます。一つには衣料品の消費不振があるでしょうが、もう一つは、衣料品の消費不振を受けて、各メーカーやブランドが生産調整を行っているからだといえます。
 
 
-バーバリーやH&Mの在庫廃棄問題が暴露されて、衣料品の在庫処分問題に注目が集まっているので、競合する在庫処分業者(バッタ屋)は増えているのでは?
当社は創業20年になりますが、創業当時と比べると、逆説的ですが在庫処分業者は年々減っているように感じます。もともと若い人があまりやりたがらない業種で、創業当時も随分と業界年齢が高かったことを覚えており、その状況は今のもあまり変わっていません。ですから高齢化で廃業する在庫処分業者は増える一方ですが、新規参入する業者は少ないと感じます。
 
 
-そんな厳しい環境で、貴社の業績は?
おかげさまで13億円という過去最高の売上高を達成しました。10億円を越えてから一度、8億円に落ちた年もありましたが、そこから回復して13億円にまで伸ばすことができました。在庫処分業界では大きなシェアを取っていると自負しています。
 
 
-シェアを拡大し続けている理由は?
当社の強みは「約束を守る」ということと「面倒なことを引き受ける」ということを徹底していることだと思っています。約束を守るということは相手に指定された販路を守ったり、依頼通りにネームやタグを外したりすることです。一方、面倒なことを引き受けるというのは、引き受ける在庫の数量を数えたり、催事から帰ってきたような決してきれいとは言えない状況の商品をA品とB品を仕分けしたりということです。先方にそれをお願いすることはなく、当社が引き受けて実行します。
 
先ほどバッタ屋は増えておらず、むしろ減っているように感じると言いましたが、当社のように自前の物流倉庫を構えて、買い取る業者は本当に少なくなりました。当社以外だとラックドゥ(後日登場予定)さんくらいじゃないですかね?
 
じゃあ、それ以外はどういう形態なのかというと、メーカーやブランドから在庫品の情報を得て、同業他社へ卸すという「ヨコヨコ(横へ流すという意味)」の業者がほとんどです。ヨコヨコの業者は引き取ってもすぐに同業他社へ卸すので、倉庫も在庫も持たないという商売形態です。
 
 

リサイクルが合理的な手段ではない理由

 

-H&Mやバーバリーの在庫廃棄に注目が集まったがどのように見ている?
ぶっちゃけていうと、消費者は今注目していますが、廃棄は何十年も前からあった問題で、それが脚光を浴びてしまったといえます。ただ、衣料品・繊維製品のリサイクルに関しては合理的で有効な手立ては今のところ無いと言われています。有効なのは古着販売くらいでしょうか。
 
リサイクルの定義として「新品にできるか?」というものがあります。しかし、繊維のリサイクル製品の多くは「経済的」に問題があるので、日本の消費者に選ばれる商品にはなり得ないのが実情で、古着店・新古品店への転売以外は「廃棄する」以外に手立てがありません。
 
例えば、今、不良在庫になったニットウエアをほどいて糸に戻してからまた編みなおして製品化するという取り組みがありますが、ほどく工賃と編みなおす工賃がかかりますので、製品の販売価格は高くなってしまいます。いくらリサイクルで環境に良い取り組みだといっても、在庫のリサイクル品にわざわざ高い金を払って購入してくれる消費者はそれほど多くいません。
 
これに限らず、20年前からさまざまなリサイクルが提案されてきましたが、いずれも「高いのに品質は良くない」物が多かったため、いずれもほとんど消え去ってしまっています。ペットボトルを溶かして作った再生ポリエステルも同様です。再生ポリエステルは作るのにコストがかかって高くなるのに、生地にすると普通のポリエステルよりも硬くなってしまいます。高くて硬い生地を買いたいという消費者はあまりいませんよね。(笑)
 
研究開発を続ける必要はありますが、今すぐに実用化できるようなリサイクル技術は存在しないと聞いています。
 
 

海外店舗を活用した在庫の再分配施策


―新たな取り組みがあれば。
当社は2018年から東南アジアに販売店を作り始めています。現状はマレーシアに2店舗、タイに1店舗、カンボジアに2店舗あります。現地では「在庫処分品」とは謳っておらず「ジャパンアウトレット」として販売しています。販売状況については「絶好調です」といいたいところですが(笑)、2勝3敗ペースで推移しています。
 
東南アジアは今後経済発展が見込めるので、在庫処分品の現地販売というよりは、ローカライズマーケティングの一環だと考えて取り組んでいます。売れる商品はやはり日本とは違っています。
 
東南アジアでは地下鉄がなく、バイクで移動する人の割合が高いという状況を反映して、女性服だとショートパンツは売れますがミニスカートは売れません。ミニスカートでバイクに乗るのは無理だからです。また空調の効いた部屋と野外の気温に温度差があるので調節のためにカーディガンは売れます。
 
東南アジアは経済発展しつつあるとはいえ、貧富の格差が激しく、一握りの富豪と貧しい大衆という構成になっており、比較的低価格で買える中古屋や在庫処分店は喜ばれています。
 
 
-そのほかにも新たな取り組みがあれば。
CSRの一環として廃棄商品をカンボジアへ持っていって販売し、その売上高の一部を現地の日本語学校へ寄付するという活動を2年前から開始しました。なぜカンボジアなのかというと、現地で日本語学校を運営する熱意ある日本人の若者とたまたま知り合い共感したので支援することにしました。
 
ぼくは今まで、「人」ベースで商売をしてきて、信用できる人や好きな人と取り組んできました。カンボジアは東南アジアの中でも人口が少ないのですが、信用できる人が頑張っているからぼくも支援したいと思って始めました。
 
そしてせっかくなら、親日家を増やすために日本語学校への支援を選びました。日本語を学んでくれるカンボジア人が多数増えれば、いずれ、日本へ働きに来てくれるかもしれませんし、当社がさらに海外で店舗網を増やす場合、現地で働いてくれるようになるかもしれません。そんなふうに考えています。
 
-ありがとうございました。
 
【関連記事】

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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