ブランド・ビジネス  2019-02-18

【在庫処分最前線】「服を生産しなくても在庫は発生する」 -供給量を抑えても解決しない問題がある(WEFABRIK)

【在庫処分最前線】
第2回 ウィファブリック 福屋剛社長
在庫処分業者や在庫処分の新サービスに取り組む業者を紹介することで、在庫処分の現実を伝える特集の2回目である。
 
今回は、在庫処分の新サービスを展開するウィファブリックの福屋剛社長である。ウィファブリックは在庫処分のBtoB向けフリーマーケットサイト「スマセル」を運営する。実店舗運営や同業他社への卸売りではなく、インターネットを使った法人向けフリーマーケットサイト「スマセル」という新サービスはいかにも現代っぽい。福屋社長に現状とその展望をお聞きする。
 
 

-初めに。「スマセル」を立ち上げられた経緯は?
私は瀧定大阪という大手生地問屋、または生地商社とも呼ばれる企業で勤務していました。業務でインテリア製品の企画・生産・販売を一貫して行ってきたのですが、現在、ブランドの洋服の在庫廃棄が問題になっていますが、原料から生地に至るまで業界的には様々な流通フェイズで滞留在庫~廃棄の問題が発生しております。そのような引きの問題をふくめた様々な課題を解決するため、独立して株式会社ウィファブリックを創業しました。
 
創業当時は、会社員時代の経験から、生地や糸の廃棄問題を解決するために、その在庫生地や糸を使って新しくデザインした製品を作り、「RDF」というアップサイクルブランドとして販売することを主眼としていました。
 
「RDF」は今でも展開していますが、開始すると同時にたくさんのデッドストックを提供したいオファーがありました。創業したばかりで資金力も人員もなかった私たちは、すべてのオファーに応えることは物理的・資金的には不可能でしたから、オファーを選別して応じていました。しかし、その時に「本当はすべての在庫生地を生かしたくてこの会社を始めたのに、えり好みしていて良いのか?」という疑問を抱きました。「じゃあ、すべてのオファーに対応できるような形態を考えよう」ということで2017年7月にスマセルを立ち上げました。
 
創業当初は糸・生地をメインに扱っていたので製品メーカーのオファーは断っていましたが、スマセルを立ち上げて製品も受け付けることにしました。
 
 

-スマセルの現状規模は?
糸・生地だけでなく製品まで対応したことで一気に加盟社は拡大しました。月に200社のペースで参加企業が増えており、現段階では3000社が登録しています。商品数、売上構成比ともに、製品が8割、生地・原料が2割です。
 
「スマセル」の特徴は、出展社は完全に匿名で出品できるところにあり、ブランドのイメージを極力壊さないようにしています。名前は明かせませんが、大手から中堅の繊維商社はほとんど登録してくれていますよ。生地は1反から買えるため、小規模デザイナーズブランドや「ミンネ」などのハンドクラフトサイトで販売している手作り作家さんなどが購入されます。
 
小規模デザイナーや手作り作家さんは、生地工場や生地問屋で買おうとすると、ミニマムロットに達しなかったり、口座が開けなかったりするので、今までは手芸屋洋品店や生地の在庫処分店などで買っていることがほとんどでした。しかし、スマセルにはそういう手芸用品店では売っていないような生地が数多くあり、しかも1反(50メートル)から買えるので重宝してくださっています。
 
このほか、スマセルでは中国、台湾、東南アジアなどのアジア方面からの買い付けも増えています。現地のエージェント、フラッシュサイト、小売店、リサイクル目的などが多く、当社は、これを単なる在庫処分とは考えず、現地でのテストマーケティングととらえており、ここでのデータは出品社がアジアに進出する際に役立ててもらえると思っています。
 
やっぱり日本での売れ筋とは異なっている場合が多く、端的に言えば、原宿系のような日本独自のファッション商品はあまり売れず、シンプルでベーシックな服が売れやすい傾向が当社のサイトではあると感じます。
 
 

-近年、急にアパレルブランドの在庫廃棄問題がクローズアップされましたが、これをどう見る?
洋服に限らず、私が勤務していた繊維商社でもそうですが、在庫は常にありましたし、安売りしても残った場合は廃棄していましたから、今に始まったことではありません。在庫廃棄をなくそうという風潮は賛成できますが、単にアパレルブランドが生産数量を抑えれば解決できるというものではありません。アパレルブランドの製品に限らず、アパレル・繊維業界は各工程段階で在庫が生まれる業界構造になっているからです。
 
繊維業界は糸(紡績、合繊製造)→染色加工→織布&編み→縫製→アパレルブランド→小売店というように、各工程が分業によって成り立っています。各工程はそれぞれにミニマムロットを設定しており、糸〇グラム、生地〇メートル、縫製〇枚というようなミニマムロット設定になっており、必ずしも消費者や小売店が欲しい単位通りではありません。小売店が望む単位よりもミニマムロットは大きく設定されています。
 
ですからどうしても各工程で不良在庫が生じてしまうのです。これは情緒的な掛け声だけでは決して解決できません。
 
売れ残らないような取り組みは、アパレルブランドだけで何とかできるものではありません。当社は、そこでRDF、スマセルという活動のほか、ブランディング事業にも取り組んでいます。
 
 
-貴社のブランディング事業とは?
売れる要因の60%はデザインだと言われていますから、依頼があったブランドやメーカーの商品デザインの段階から当社が協力します。毎年、請け負っている先は今のところまだ7社ほどです。しかし、将来的にもっとクライアントが増えて、滞留在庫に悩む企業に対して売れるデザインや企画を共に考え、在庫が可能な限り残らないような仕組みを作っていきたいと考えております。
 
一例を挙げると、あるブランドを担当していますが、3年くらい前は本当に苦戦していましたが、当社が商品デザインに関して修正することで回復してきました。本来どのような企業も持っているその企業独自の強みというものを商品~ウェブ~店舗~紙媒体に至るまでを可視化し、売れるモノづくりを一緒に考えるのが当社のブランディング事業です。
 
また不動在庫に関して販売以外の解決策も模索していて、寄付やバイオマス燃料化なども取り組み始めています。
 
 
-それ以外に新しい動きがあれば
昨年10月末にラックドゥさん(後日掲載予定)と共同で、ジェイアール京都伊勢丹でポップアップショップを開催しました。商品提供が当社で、販売担当がラックドゥという役割分担でした。それ以降、商業施設からポップアップ開催の要望が増えています。直接に消費者と触れ合うことで勉強になることも多いので、今後はそういうBtoCにも取り組んでいきたいと思っています。
 
-長時間、ありがとうございました。
 
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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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