ファッション全般  2019-03-11

我が国に初めて上陸したジーンズは中古品だった ~我が国のジーンズの歴史~

15年前に比べるとマストアイテムではなくなりつつあるのがジーンズですが、我が国にジーンズが本格的に上陸したのはいつごろでしょうか?
 
今回は、ジーンズの歴史ではなく、我が国のジーンズの歴史をまとめてみたいと思います。

 

我が国で洗い加工が発達した理由

我が国にジーンズが本格的に上陸したのは第二次世界大戦直後です。
 
我が国にはアメリカからの輸入品としてジーンズが上陸したのですが、これはあまり知られていないのですが、このときのジーンズは新品ではなく、履き古した中古品だったのです。今の感覚でいえば古着ジーンズという感じの物でした。
 
ちょっとここで想像してもらいたいのですが、それまで我が国の国民のほとんどはジーンズというズボンを見たこともありませんでした。そこに上陸したのが中古ジーンズです。
 
中古ジーンズは当然のことながら、色落ちして、生地は柔らかくなっています。
 
初めてジーンズなる物を見た日本人は、恐らく「ジーンズとは薄いブルーで柔らかい厚手生地のズボン」と理解したはずです。
 
現在のジーンズは未洗いのリジッドや、糊を落としただけの濃紺のワンウォッシュ、その他さまざまに色落ちさせた加工ジーンズがあります。
 
未洗いは別として、ワンウォッシュやそれ以上の色落ちをさせるための特別な加工場があります。これを通常、業界では洗い加工場と呼んでおり、ジーンズというアイテムにはなくてはならない工程であり工場だと位置づけられています。
 
我が国には今でも多くの洗い加工場があり、さまざまな洗い加工の技法がこれまで生み出されてきましたが、その理由として、当方は、日本人が初めて接したジーンズが中古品だったためではないかと考えています。
 
初めて見たジーンズが、ブルーが薄くなった中古品だったため、ジーンズとはそういう物だと日本人にインプットされたのではないでしょうか。
 
その後、アメリカから新品のジーンズが輸入されるようになりますが、リジッドを初めて見たとき、日本人はさぞかし驚いたのではないかと想像されます。
 
色は濃紺で生地は硬いからです。それを中古品に近づけるための工程が洗い加工ということになります。
 
 

国産ジーンズの誕生

 
我が国の国産ジーンズが生まれるのは1960年代前半まで待たねばなりません。
 
現在、残っている最古のブランドは「ビッグジョン」ですが、国産第1号のジーンズブランドは「キャントン」というブランドです。
 
これは大石貿易という会社が、アメリカのキャントンミルズ社のデニム生地を輸入して、企画製造したのです。そのデニム生地を縫製したのが、ビッグジョンの前身であるマルオ被服という縫製工場でした。
 
当時としては高価な商品でしたが瞬く間に大人気となったそうです。しかし、ブランドスタートから3年ほどで「キャントン」という名前が使えなくなります。なぜならアメリカのキャントンミルズ社が商標違反だとして訴え、大石貿易が敗訴したからです。
 
大石貿易の敗訴は当たり前だといえます。例えば、現在、東南アジアの現地企業が、カイハラのデニム生地を使ってオリジナルブランドのジーンズを作ったとします。そして、ブランド名を「カイハラ」と名付けたらどうでしょうか?
 
カイハラは必ず告訴します。大石貿易が「キャントン」と名付けたのはこれと同じことです。そして、縫製を担当していたマルオ被服も自社オリジナルのジーンズブランドを60年代後半に立ち上げます。これが今も続いている「ビッグジョン」ブランドです。
 

 
ですから、国産第1号のジーンズブランドはキャントン、国産第2号ブランドで現在残っている最古のブランドはビッグジョンというのが事実となります。
 
 

国産デニム生地の製造が始まったのは1970年代

 
現在、デニム生地製造は「日本の伝統的産業」と言われることがあります。
 
しかし、我が国でデニム生地が製造されるようになったのは、キャントン、ビッグジョンの誕生の後になります。キャントンのみならず、ビッグジョンもブランドスタート当初は、アメリカからの輸入デニム生地で製造していたのです。
 
我が国でデニム生地が作られるようになったのは比較的最近のことで、1970年代に入ってからのことになります。我が国で初めてデニム生地を製造した会社が、カイハラなのです。
 

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

  • デニムとダンガリーとシャンブレーの違い

    2020-05-19  ファッション全般

    先日、ある著名ファッション関係者のブログを読んでいたら、デニムシャツとしてシャンブレーシャツが紹介されていました。 前振りでシャンブレーシャツを扱って、後半には「一方、デニムシャツとは・・・」という説 […]

  • 斜行しないTシャツ生地を作るためには ~撚糸という工程の重要性~

    2020-05-11  ファッション全般

    ちょっと間が空きましたが、コロナショックからの営業再開が徐々に始まってきています。   今回も基礎知識をお届けします。 以前に、複合素材の4つの作り方をご紹介しました。その中に、交撚(こうね […]

  • 複合素材の作り方は4種類ある 混紡・交織・交編・交撚

    2020-04-13  ファッション全般

    今回も基礎知識シリーズです。 我々が着ている服は生地でできていますが、最近は「〇〇100%」という生地は減って、例えば「綿50%・ポリエステル50%」とか「綿35%・ポリエステル45%・レーヨン20% […]

RECENT ENTRIES

  • 仕入予算は適当に考えたらダメ③

    2020-05-27  ブランド・ビジネス

    ・Aさんのバッグ屋の目標数字を再確認 前回の記事では、セレクトショップのバイヤー経験者Aさんをモデルに仕入予算を考えよう!という話になりました。 仕入予算は適当に考えたらダメ② Aさんの立ち上げるショ […]

  • 仕入予算は適当に考えたらダメ②

    2020-05-20  ブランド・ビジネス

    ・仕入の基本は。。。 前回の記事から、仕入予算に関するお話をしています。 仕入予算は適当に考えたらダメ① ここで、単刀直入に仕入の基本の考え方を述べますと!! ”売れる分だけ仕入する!!” このことが […]

  • デニムとダンガリーとシャンブレーの違い

    2020-05-19  ファッション全般

    先日、ある著名ファッション関係者のブログを読んでいたら、デニムシャツとしてシャンブレーシャツが紹介されていました。 前振りでシャンブレーシャツを扱って、後半には「一方、デニムシャツとは・・・」という説 […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング