ブランド・ビジネス  2017-12-04

「流通コントロール」はブランド価値を押し上げる!


モンクレールを失う覚悟は常にできている
成長を続けるモンクレールですが、日本法人は100%の外資ではなく日系企業である八木通商との合弁企業。モンクレールと言えば10数年前から既に売れ続けていて業界内でも「そのうち飽和する」という風に見られていました。それがいつの間にか複数ラインが生み出されたり(ガムルージュとガムブルーは2018SSにて終了)、コラボラインを複数出したり、いつの間にかラグジュアリーにカテゴライズされるようになってきました。ダウンメインのラグジュアリーというポジショニングは他にはなかったという事もあるのでしょうか。今でも春夏はポロシャツ以外で何売るんだ?という疑問があるものの、事業自体は好調なようです。
 
 
そんなモンクレールを日本で広めた八木通商の社長のインタビュー。随所にブランドビジネスにおいて真髄とも呼べる情報が盛り込まれていますが、特に気になった箇所が下記の部分。

例えば、モンクレールは百貨店などの出店要請をほとんど断り続けています。難しい判断ですが「敢えて出さない」という方針です。モンクレール本体にはファンドの資本が入っており、株主からのプレッシャーも厳しい。「日本ではもっと伸びるはずなのに、なんで店を出さないのか」と。例えば米国のブランドなどは一度成功すると大量に店を出す傾向にありますが、そうなるとブランドが消費されるスピードが速くなります。投資家に対して、「ラグジュアリーブランドは中長期に成長するため、一度に大量に店を出したりはしない」と明確に説明できないと、ビジネス自体がおかしくなります。
 

飛ぶ鳥を落とす勢いのモンクレールですから、もちろん出店要請は多々あります。単純に売上を伸ばそうと思うと多店舗展開が一番簡単です。仮に月売り1000万円のショップがあるとするなら10店舗で月1億円、年間で12億円です。営業利益が10%だとしたら年間1億2000万円の利益が出る。企業の成長にとって超重要なポイントですし、ましてや売上好調のブランドだとしたら安易に出店を決めてしまってもおかしくありません。また百貨店側も現状では売上不振の店舗が多いですから、売れているブランドは是が非でも誘致したい。集客を司るはずの百貨店がブランドの集客・売上に頼るというのは皮肉なものですが。。
 
 

◯流通コントロールがブランド力を向上させる

しかしここで重要な1文が。
 
「(大量出店すると)ブランドが消費されるスピードが速くなります。」
 
これって聞いてみると当たり前の事なんですが、市場規模の見極めが非常に難しい。出店数を抑えるとしても、では上限は何店舗なのか?の指標がはっきりと必要になります。ラグジュアリーブランドはここのコントロールが非常にうまく意図的に流通を減らしたりしています。例えば1シーズンのみで廃盤になるモデルなんかはその一つです。程良い飢餓感を煽る事で、「早く買わないと売り切れる」「次こそは買いたい」といった需要を喚起しているのです。価格が高いブランドでは必須の戦略ですね。
 
ユニクロのような大衆的なブランドは逆の考え方をしていて、売り切れ=機会損失と捉えているからこそ、いつ行っても売っているという安心感が必要になります。しかしこれを他ブランドが真似をしてしまうと「価格に対するクオリティ=コスパ」の勝負になりますからユニクロには絶対勝てません。良い子は絶対真似しないように。
 
 

◯人材の担保も難しくなる

多店舗展開でもう一つ重要なポイントは「人材の担保」です。店舗は店長次第で環境がガラッと変わります。スタッフの成長やモチベーション、そしてそれに連動して売上が大幅に変わる事もしばしば。多店舗展開してしまうと、その店長を担保しないといけませんしこれが一番難しい。仮に未熟なスタッフを人材がいないからといって店長に据えてしまうと、先述したように下のスタッフが育たないどころか、不平不満が店舗から出たり、それが原因で人材が流出したり、モチベーションがさがったり、、、なんて事も起こりうるのです。特にラグジュアリーはイメージが重要です。未熟な販売スタッフがブランドイメージを毀損してしまう…という事にでもなったらブランドにとって損失になります。実はここの部分も慎重に事を運ぶ必要があるのです。
 
そしてこれだけ注意を払ってブランドを育てている八木通商さんでもモンクレールを失う覚悟があると…。確かに合弁企業とは言えども、外資系ブランドの過去からの歴史を見ていますと、その株式を全て買い取って100%本国出資に…、となってもおかしくありません。しかしそういった覚悟があるからこそ、いざブランドが無くなった時の準備が整えるのでしょう。◯陽商会さんは大いに見習った方がいいかと…。

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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