ファッション全般  2019-05-12

昔は高い服が売れた理由

低価格衣料品ブランドは確かに増えましたが、98年のユニクロのフリースブーム以前は、すべての洋服が高かったのかというとそうではありません。
ダイエーを筆頭とする大手スーパーマーケットには40年以上前から低価格衣料品が並んでいました。
 
 
ちょっと時代は進みますが、95年頃に形態安定加工が開発され、その頃に「形態安定ワイシャツ」ブームがありました。ワイシャツなので購入者・着用者はカジュアル用途の若者ではなく、サラリーマンのビジネス着としてでした。
今でもワイシャツの形態安定加工は当たり前ですが、開発される以前は、ワイシャツというのは洗濯すればシワくちゃになるので、洗濯が乾くたびにアイロンをかける必要がありました。
奥様がアイロンをされているご家庭では奥様の負担になっていましたし、独身者にとってもめんどくさい作業でした。
洗濯して乾かしてもシワくちゃにならない形態安定加工というのは実に便利で、発売すると同時に大ヒットとなりました。
 
ワイシャツ業界にとっては空前の大ヒット商品となり、ワイシャツメーカーは軒並み潤いました。
このとき、この商品を売りに売りまくった売り場はどこだったのかというと、大手スーパーマーケットだったのです。それから、青山やはるやまなどの紳士服チェーン店です。
商品の価格は1900~3900円くらいが中心です。
この当時は、百貨店に並べるような高級ワイシャツに形態安定加工は採用されていませんし、百貨店や高級専門店では「形態安定加工=安物」と見なして、店頭に並べませんでした。何とも傲慢な話です。
 
これを見てもわかるように、今から24年も前の1995年にはスーパーマーケットの低価格衣料品はそれなりに支持されていたのです。
また、青山やはるやまなどがスーツの価格破壊で一挙に注目を集めたのは、80年代でした。
 
低価格衣料品があたかもつい最近出回り始めたようにとらえることは、事実誤認でしかないということがわかります。
 
しかし、バブル崩壊後も2000年くらいまでは、高いブランドもそれなりに売れていました。アムラーとともにバーバリーブルーレーベルが大ブームとなりましたが、あれは97年のことです。
ではどうして、その当時は今よりもまだ高い服が売れたのでしょう。
要因はさまざまあると考えられますが、当方はその最大の理由として
 

高いブランドと安い服のデザインがまったく違っていた

 
ということを挙げたいと思います。
 
先日、あるデザイン会社の社長とお酒を飲みに行きましたが、その席上、就職活動時のスーツの話題となりました。
この社長は当方とほぼ同じ年齢で、92年とか93年に就職活動をしていたのです。
当時は紺か濃いグレーが就活スーツでしたが、ファッション好きな社長は三つボタンのスーツで就活をしたかったそうです。
しかし、この当時、青山やはるやまには三つボタンのスーツが売っていませんでした。
ですから、この社長は紺の三つボタンスーツを探してダーバンやJプレスなどのいわゆる高級トラッドブランドをいくつかハシゴして商品を見比べ購入したそうです。8万円とか10万円もしたため、就活生にはキツイ出費になったとのことです。
 
 
以前に自分のブログで書いたことがありますが、当方も94年に黒の三つボタンスーツを買おうと思って、青山とはるやまを訪ねましたが、略礼服しか売っておらず、結局はアトリエサブで、6万円くらいにバーゲンで値下がりした商品を買いました。
それほどに青山やはるやまと、トラッドブランドやDCブランドに並んでいる商品はデザインがまったく違っていたのです。
ですから、仕方なしに高い服を買うほかありませんでした。
 
しかし、今はどうでしょうか。もう三つボタンスーツは流行っていませんが、高級トレンドブランドのスーツと、ツープライススーツショップのスーツではデザインがまったく違っているでしょうか?
使用している生地だとか微妙なシルエットだとか使用されている芯地だとかを比べると多少の違いはありますが、2メートルも離れればほとんど同じに見えます。
ですから、安いスーツでも構わないと考える人が増えるのは極めて当然だといえます。
 
業界が「高い服」を売りたいのなら、低価格ブランドとは圧倒的に違う「何か」を付加するしかありません。それをせずに「消費者が退化した」とか「販売員のレベルが低い」とか他責をしてもまったく効果はありません。
高い服を売りたければ、圧倒的に違う「何か」を工夫してください。
 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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