ファッション全般  2019-06-10

合理的な企画で作られた服

洋服の設計思想は、デザインやシルエットだけではなく、使用素材まで考える必要性があります。
なかなか面白い考察でしたが、人気ファッションブロガーのMB氏が無印良品の麻パンツと、ユニクロの綿麻混パンツを比較検証しています。
 
「ユニクロと無印良品、今年買うべきリネンパンツはどっちだ!?」
http://www.neqwsnet-japan.info/?p=27050
 
興味のある方は全文をお読みください。デザイン面の考察に関しては非常に興味深く、買い物をする際の参考にもなると思います。
ユニクロは、カジュアルな「ワークパンツ型」、
無印良品はドレッシーな「スラックス型」、
で一口に麻パンツといっても見え方が異なります。
 
使用素材にも言及されています。
 

ユニクロは「62% 綿,36% 麻,2% ポリウレタン」「2990円」
無印良品は「麻,100%」「4,990円(ただしセール価格で3990円)」

 
とのことです。残念なことは設計思想への考察がこの部分で止まってしまっていることです。
また興味深い部分として、ポケットの袋(業界ではスレキと呼ぶことが多い)の生地について
 

ユニクロは表生地と妙にミスマッチな速乾機能素材。
触ると分かりますが水を吸い込みにくく、またすぐに乾きやすい素材感になっています。

 
ことも挙げておられます。
で、どうしてスレキにポリエステルの速乾生地を使っているのかというと、それは恐らく、洗って濡れた手をポケットの中で拭くためでは絶対にありません。(笑)
それは洗濯したときに早く乾かせるためだと考えられます。洗濯をして干すと表の生地が乾いてもスレキが乾いていないということがよくあります。しかしスレキを速乾生地にすると、全体が乾く時間が短縮されます。
 
というよりも、ユニクロのこの綿麻混パンツは徹底的に「洗濯性の良さ」に特化した設計思想だと考えられます。
まず、使用素材ですが、先ほども挙げたように綿62%、麻36%、ポリウレタン2%となっています。麻100%の方が高くて、綿麻は安いからこちらを使用したわけではないでしょう。
麻100%のパンツは、見た目ドレッシーですが、洗濯をするとシワクチャになります。もちろん綿でもシワクチャになるのですが、麻の方が、綿よりもさらにシワが目立ちやすいです。綿麻混にすることで、麻独特のシワが緩和されます。ポリウレタンが入っているのはストレッチ性の確保と同時に、シワをさらに緩和するためだと考えられます。ポリウレタンはキックバック性があるので、元の形状に戻る性質があります。そのため、ストレッチパンツは通常の綿100%パンツよりもシワが目立ちにくいですし、穿いているうちにシワが目立たなくなってきます。
 
そして、カジュアルなワークパンツ型にしたのは、多少のシワが入っても違和感がないように見せるためでしょう。
 
無印良品の方は麻100%でスラックスタイプで、服好きな人からすると、こちらの方がカッコいいというふうに見えるでしょうが、洗濯性は著しく悪いと考えられます。
麻100%であることで洗濯をするとシワクチャになり、必ずアイロンでシワを伸ばす必要に迫られます。
 
ユニクロの場合は、ワークパンツ型なのでシワが多少入っていても違和感がありませんが、無印はスラックスなのでシワが入ったままで着用するとだらしなく、汚らしく見えます。
めんどくさがりの人は絶対に購入してはならない商品です。逆に常に洋服の手入れをすることが習慣付いている人であれば買っても問題ないでしょう。
 
無印がそこまで考えて企画したかどうかわかりませんが、麻100%という「ステイタス性」と見た目のかっこよさだけを考えて企画したのではないかと、個人的には考えます。
 
一方のユニクロは、見た目のかっこよさもある程度は考慮したのでしょうが、それよりも洗濯のラクさ、アイロンがけなしでも違和感がない、というメンテナンスのラクさを追求したと考えられます。
また、素材強度も綿麻混の方が麻100%よりも増しますから、ワークパンツ型に適していると考えられ、かなり合理的な考え方で洋服を設計しているといえます。
 
ちなみにトップセラーでも書きましたが、麻には二種類存在します。リネン(亜麻)とラミー(苧麻)です。今まではリネンの方が高級でしたが、ユニクロや無印良品の大量販売によってリネンのステイタス性がなくなり、ラミーを使うブランドが増えてきているのが数年前くらいからの特徴です。
そして、「麻」と呼ばれているにもかかわらず、亜麻と苧麻は違う種類の植物なのです。
 
それにしてもユニクロの設計思想は、数学のように合理的であることに改めて驚かされますね。
 
 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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