ブランド・ビジネス  2019-06-24

現実に目を背けて「ユニクロは実用品」という謎の呪文を唱え続ける業界人

98年にユニクロのフリースブームが起きて以来、我が国のアパレル業界は基本的に、低価格ブランドが注目を集めるようになりました。また2008年以降にH&Mやフォーエバー21などの低価格グローバルブランドが本格上陸を果たし、ピーク時の勢いはなくなったものの、低価格ブランドがさらに注目を集める結果となりました。
 
百貨店に中価格帯の服を卸売りしたり直営店を出店していた旧態依然とした我が国のアパレル各社のオッサン・オバハン連中はこぞって「低価格品は実用品、ワシらの商品は嗜好品」とこの20年間、呪文のように唱え続けてきました。
しかし、それで何かが変わったのでしょうか?彼らの凋落ぶりが一層顕著になっただけのことではありませんか。
 
そんな中、ベテランのコンサルタントである生地雅之さんが先日、アップされたブログの中に次のような一節がありました。
 
https://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/ochi/d801336a-4ab6-49b5-a8eb-046a2f984e7c
 

今やGMSの肌着や靴下、ユニクロのフリースでさえ、必需品で無く必欲品と意識しないとマーケット判断を間違うのです。
 

この見方こそ、旧態依然のアパレル企業社員、業界紙メディア記者にもっとも欠けている視点と言わねばなりません。
これは何も衣料品に限ったことではありません。本来、日用雑貨を扱う100円ショップとて同じです。
「低価格品=実用品」というステレオタイプがまかり通るなら、どうしてダイソーやセリアなどの各ショップはあれほどディスプレイに工夫を凝らすのでしょう。さらに言えばどうして商品のデザインも洗練させ続けているのでしょう?
調理に使うシャモジなんてどんなデザインでもいいではないですか。100円で使えるなら。
しかし、実際は100円で売るために、彼らは商品のデザインを工夫し、ディスプレイにも工夫を凝らしているのです。それは、一部に嗜好品の要素が消費者から求められているからです。
 
100円で使えれば何でもいいじゃないかという観点なら、アメリカの100円ショップのような垢ぬけなさになるのです。
3年前の記事ですが、これをどうぞ。
「米国の100均ショップってどうなってる?」
https://www.fashionsnap.com/article/2016-10-21/100-usa/
 

これらの米国100均ショップが、どういうものかというと、日本とは相当な違いがあります。キッチングッズ、コスメ、おもちゃ、文具、ハロウイン等のシーズン商品と一通りのものは置いていますが、洗剤やトイレットペーパー等の日用品、食料品など、節約の為に買いに来るお客さんが殆ど。見ていて楽しくなる様なアイデイアグッズやファンシーな商品は皆無。ましてや観光客が来る事はありません。

 
とのことで記事から画像をお借りしますと、こんなひどいありさまです。

 
日本でこんな100円ショップはよほど寂れた田舎にしか今では存在しません。ホームセンターでさえもっと小マシな陳列をしています。
「低価格は実用品」というなら、100円ショップはアメリカのようになっていなくてはおかしいのです。お分かりでしょうか?
しかし、現実はそうなっていません。洋服も同様です。
 
アホの一つ覚えのように20年間「ユニクロは実用品」と唱え続けてきた結果が今のアパレル業界の惨状です。実用品だというなら、どうして今夏発売したユニクロ×エンジニアドガーメンツのポロシャツがデザインによっては早くも完売したのでしょう?
今まで部屋着に使っていたポロシャツが一斉に破れて買い替え需要が大量に発生したのでしょうか?(笑)そんなアホな(笑)。
 
旧態依然のステレオタイプのオッサン・オバハンたちはいまだに「低価格品は実用品」「ユニクロは実需品」と唱え続けていますが、それは現実を見ていないだけなのです。
そして現実に目を背け続けるなら、さらにユニクロや他の低価格ブランドに負け続けることになるのです。一矢報いたければ現実を直視するほかないのですが、現実に目を背けたまま滅びてゆくならそれはそれで自業自得でしかありませんので、当方は外野から生暖かく見守って行きたいと思います。
 

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

  • 国内デザイナーズブランドはファッションショーを開催しても売れない

    2019-10-14  ブランド・ビジネス

    華やかに思われがちですが、厳しいのがアパレル業界ですが、その中でもとりわけ厳しいのがデザイナーズブランドではないかと思います。 一部の大手ブランドを除けば、その台所は火の車なのです。 先日、東京コレク […]

  • 投資ファンドによるM&Aでジョンブルが新体制に

    2019-09-16  ファッション全般

    どんなに優れた賢者でも、どんなに頑健な鉄人でも必ず老化し、死ぬ。 そのため、事業でも技術でも継承する必要があります。活動を永遠に続けられる者はいない。   事業継承というのは、簡単なようでい […]

  • 洋服の価値はわかりにくい

    2019-09-09  ブランド・ビジネス

    2週間ほど前に某ウェブメディアからの依頼で原稿を送ったのですが、その後何の返事もないので、お蔵入りになったのだろうと思います。 せっかく書いたのにお蔵入りはもったいないので、こちらで紹介したいと思いま […]

RECENT ENTRIES

  • 国内デザイナーズブランドはファッションショーを開催しても売れない

    2019-10-14  ブランド・ビジネス

    華やかに思われがちですが、厳しいのがアパレル業界ですが、その中でもとりわけ厳しいのがデザイナーズブランドではないかと思います。 一部の大手ブランドを除けば、その台所は火の車なのです。 先日、東京コレク […]

  • 店舗を定点観測することから得られる気付き

    2019-09-30  ブランド・ビジネス

    アパレル業界では店舗を見て回ることが勉強になると言われます。 個々人の気付きのペースというのは様々ですが、個人的には天才的閃きを持ち合わせていないため、一見で何かを感じ取れるということはほとんどありま […]

  • ファッション業界における採用事情①

    2019-09-29  店舗マネジメント

    全ての業界で言えることかもしれませんが、特にファッション業界では人材の採用は非常に重要な位置付けになっています。   今回は『ファッション×採用』という掛け合わせで掘り下げていきたいと思いま […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング