ファッション全般  2019-08-12

人間は環境負荷をゼロにはできない

サステイナブルやエコなどの切り口が大流行しています。
しかし、基本的に人間が快適だと感じる状況や人間が快適に過ごせる状況は、自然環境とは真逆であることを忘れてはなりません。
人類が生きていれば、自然環境は本来の姿ではなくなるのが当たり前なのです。
 
もちろん、公害問題は軽減させなくてはなりません。その前提は当方も共有しています。
だが、人類が快適に過ごしつつ、自然本来の姿をそのまま保つということは、現在の技術では不可能だということも事実です。
 
「在庫廃棄問題解決へ、企業の枠を超えた新プロジェクトがスタート」
https://www.fashionsnap.com/article/2019-08-07/for-fashion-future/
 
先日、こんな記事が掲載されました。
もちろん、基本的には当方も反対ではありません。とはいえ、完全に在庫ゼロやごみゼロは不可能なので、行き過ぎた取り組みには疑問を抱いています。
衣料品からは外れますが、食材の場合、基本的に廃棄率ゼロにはなりません。
野菜だと、皮や根、ヘタ、種などは取り除きますから、その部分は料理する際に廃棄されます。ジャガイモの芽なんてのは、毒がありますから必ず取り除かねばなりません。
そうすると廃棄率1~5%程度はどうしても生まれてしまいます。お分かりでしょうか。
 
衣料品もこれと同じです。
この記事では衣料品素材のことに言及していますが、事実として疑わしいと言わねばなりません。
 

第3部は、ローランド・ベルガーのパートナーの福田稔氏、『ワイアード』日本版編集長の松島倫明氏が登壇。海外の事例を交えつつ「日本はベースの理解を上げる教育も課題。サステイナブル(持続可能な)などがバズワード化している面もある。例えば素材の話だと、コットンとレザーは、環境負荷の国際的な指数だとコットンの方が少ないが長く着られるのはレザー。消費の仕方によって変わるため奥が深い」(福田氏)ことも紹介された。
 

この部分です。
 
コットン(綿花)を育てるには環境負荷がかかるといわれています。その代替としてここではレザー(本革)が例に出されていますが、これはちょっと意味がわかりません。
綿製品よりレザー製品の方が長持ちするからサステイナブルというのはどうでしょうか。
製造に環境負荷がかかるのはレザーも同じです。レザーのもととなる原皮は、わざわざ牛、豚、羊を殺さずとも、全世界で何十億人もの人間が毎日肉を食べるため、自動的に生産されます。
肉を取った後の原皮は不要物ですが、自動的にどんどんと生産されます。今こうしている間にも食肉用に屠殺された家畜から原皮が生産されています。
原皮をなめして初めてレザーになりますが、なめしという工程からは膨大な汚水が生じます。国内の各工場はろ過装置を設置して環境負荷を下げていますが、途上国ではどうでしょうか?
また、なめす際にも有害物質を使います。最近は植物から採れるフルベジタブルタンニンを使ったタンニンなめしが有名ですが、基本的にレザーは重金属を使ったクロムなめしを行います。クロムなめしの方がソフトなレザーに仕上がるため、ソフトさが売りのレザーはもれなくクロムなめしだと考えて差し支えないでしょう。
レザーは果たしてコットンより環境にやさしいのでしょうか?(笑)
 
結局のところ、衣服用の原料のほとんどは何らかの環境破壊を行って生み出されています。綿がダメだからレザーとか、ウールがダメだから石油から作った合成繊維なんていうのは、単なる小手先のまやかしでしかありません。
 
現在、空気や炭素から繊維を生み出す研究がなされていますが、真のエコ素材というのはこれしかないでしょう。ただ、これも実現した暁には、何らかの副作用やデメリットも発見されるかもしれません。
 
公害問題を軽減させる取り組みは重要ですが、環境にまったく負荷をかけない素材というのは、現時点では存在しませんから、キレイすぎるイメージ作りはほどほどにしておくべきでしょう。

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

  • 国内デザイナーズブランドはファッションショーを開催しても売れない

    2019-10-14  ブランド・ビジネス

    華やかに思われがちですが、厳しいのがアパレル業界ですが、その中でもとりわけ厳しいのがデザイナーズブランドではないかと思います。 一部の大手ブランドを除けば、その台所は火の車なのです。 先日、東京コレク […]

  • 投資ファンドによるM&Aでジョンブルが新体制に

    2019-09-16  ファッション全般

    どんなに優れた賢者でも、どんなに頑健な鉄人でも必ず老化し、死ぬ。 そのため、事業でも技術でも継承する必要があります。活動を永遠に続けられる者はいない。   事業継承というのは、簡単なようでい […]

  • 洋服の価値はわかりにくい

    2019-09-09  ブランド・ビジネス

    2週間ほど前に某ウェブメディアからの依頼で原稿を送ったのですが、その後何の返事もないので、お蔵入りになったのだろうと思います。 せっかく書いたのにお蔵入りはもったいないので、こちらで紹介したいと思いま […]

RECENT ENTRIES

  • 国内デザイナーズブランドはファッションショーを開催しても売れない

    2019-10-14  ブランド・ビジネス

    華やかに思われがちですが、厳しいのがアパレル業界ですが、その中でもとりわけ厳しいのがデザイナーズブランドではないかと思います。 一部の大手ブランドを除けば、その台所は火の車なのです。 先日、東京コレク […]

  • 店舗を定点観測することから得られる気付き

    2019-09-30  ブランド・ビジネス

    アパレル業界では店舗を見て回ることが勉強になると言われます。 個々人の気付きのペースというのは様々ですが、個人的には天才的閃きを持ち合わせていないため、一見で何かを感じ取れるということはほとんどありま […]

  • ファッション業界における採用事情①

    2019-09-29  店舗マネジメント

    全ての業界で言えることかもしれませんが、特にファッション業界では人材の採用は非常に重要な位置付けになっています。   今回は『ファッション×採用』という掛け合わせで掘り下げていきたいと思いま […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング