ブランド・ビジネス 2019-09-30
店舗を定点観測することから得られる気付き
アパレル業界では店舗を見て回ることが勉強になると言われます。
個々人の気付きのペースというのは様々ですが、個人的には天才的閃きを持ち合わせていないため、一見で何かを感じ取れるということはほとんどありません。
しかし、同じ店を何度も何度も見ていると「あれ?この店はもしかして?」と気付くことがあります。
そういう意味では店舗を見ることは勉強になると思いますが、それは即効性ではなく、遅効性だと思います。もちろん、世の中には少数の天才がいるので、その天才にはこれは当てはまりません。
先日、メックスというメンズカジュアルチェーン店が倒産しました。
本社は東京都青梅市です。東京都と言っても青梅市はまあ、田舎に属しますから、地方拠点で頑張っていた衣料品関係の企業の一つだといえます。
「GGD」「HVC」「グランドグローバル」などの屋号の店を合計37店舗運営していました。
メンズアパレルを展開するメックス(mex co.,ltd.)は、9月17日に東京地裁へ自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。負債は約12億7800万円。メックスは1990年8月に設立された男子服小売業者で、ターゲットは主に20~30代の男性。OEM生産で自社ブランド「ジージーディー(GGD)」「エイチブイシー(HVC)」「グランドグローバル(GRAND GLOBAL)」などを展開し、ショッピングセンターやファッションビル、駅ビルに出店している。
とあります。
「GGD」「HVC」は関西でも見かけたことがあります。
また
しかし、積極的な店舗出店などが仇となり、人件費や出退店費用の高騰などから2015年3月期、2016年3月期と連続で赤字を計上。2017年3月期の年売上高は約28億円を計上し多少浮上したが、以降もアパレル不況の影響を受け、厳しい経営が続いていた。信用不安が散発し、2019年3月期の年売上高は約21億円にまで低迷しており、ここに来て今回の措置をとることとなった。
とのことです。
実はこの会社は数年前からおかしいと思っていたのです。それは店舗を見てきた結果、「ちょっとおかしいな?」と思い始めたのです。
あべのキューズモール1階には通路を挟んで「GGD」と「HVC」の2店舗を出店していました。先日行って見ると、もう店舗は閉鎖されていました。破産申請の発表の翌日くらいに閉鎖されたのでしょう。
この店のどこがおかしいと思ったのかというと、毎年シーズン末には、凄まじい値引きをします。70%オフは当たり前、990円とか790円商品も目白押しです。
よくHVCを見ていましたが、ウィゴーとジーユーに挟まれた場所にありました。
こんなに安いのにいつ店を見ても、ちっとも売れてる気配がないのです。店内に客もいません。
両隣のウィゴーとジーユーはいつもお客で賑わっています。同じような値段帯なのに賑わいが全く違うのです。
これが単年度のことなら「たまたまそういう時期もある」といえますが、少なくとも記憶している範囲でいうと4年間くらいそういう状態が続いていたのです。
これは尋常ではありません。客入りから類推すると売上高は物凄く低かったでしょう。両隣のウィゴーやジーユーの足元にも及ばなかったのではないでしょうか。
これだけなら「単なる万年不振店舗」に過ぎませんが、不可解だったのが、まったく撤退する気配すらなかったことです。
これほどの不振が何年も続けば普通は撤退します。しかし、倒産の発表があるまで撤退する気配は微塵もありませんでした。
ここでおかしいと思い始めたのです。
撤退するにも相応の費用が必要ですし、デベロッパーとの契約が満期でない場合は、違約金を払わねばならない可能性もあります。
恐らく、撤退する費用すらなかったのではないかと考え始めました。非常に資金繰りに窮しているから、不振店も撤退させられないのではないかと思って、店頭を見ていました。
そうすると案の定、今回の倒産報道です。
それにしても1年前にはこんな記事が掲載されていたのですから、驚くほかありません。
リアル店は複合型を郊外SCに、ECは長期的に強化していく
メックスが「ロードサイト店を全店閉めた」理由
http://shogyokai.jp/articles/-/521
ロードサイド店どころか全店閉鎖になってしまいました。(笑)
このように店舗を定点観測していると気付く点が出てきます。
店舗見学からの学び方は人それぞれで色んな方法があるでしょうが、こういう気付き方もそのうちの一つだといえますので、天才肌でない方は気長に定点観測してみてください。
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