ブランド・ビジネス  2019-10-14

国内デザイナーズブランドはファッションショーを開催しても売れない

華やかに思われがちですが、厳しいのがアパレル業界ですが、その中でもとりわけ厳しいのがデザイナーズブランドではないかと思います。

一部の大手ブランドを除けば、その台所は火の車なのです。

先日、東京コレクションに出展経験もある「ノゾミ イシグロ」が破産しました。負債総額はわずかに7900万円でした。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191009-00010000-biz_shoko-bus_all

 

2013年6月期に売上高約1億2000万円をあげていた。しかし、その後は需要の低迷などにより、近年、年間売上高は約4000万円で推移。ファッションショーを休止するなど、業容を縮小していたものの、経営も限界に達したため2019年8月末に事業を停止し、今回の措置となった。

 

とあります。

主な販路はセレクトショップ、専門店への卸売りです。

卸売りにしても年商4000万円というのはかなり厳しい数字です。なぜなら、この4000万円のうち、半分前後は商品の製造費として消えてしまうからです。

残りは2000万円です。この2000万円の中にまだ家賃・光熱費・人件費・通信費・運送料などの経費が含まれていますから、手元にはほとんど残りません。残らないどころか、恐らく赤字ではないかと考えられます。

 

ノゾミ イシグロといえば東京コレクションではそれなりに古株として知られたブランドですが、それでもこの有様です。他のほとんどの東京コレクションブランドも似たり寄ったりの経営状況です。

おまけに東京コレクションでファッションショーを行うには1000万円くらいの費用が必要だと言われています。コレクションは年に2回ですから、年間2000万円。

これで決定的に赤字となります。

 

元々、我が国市場ではデザイナーズブランドというのは成長しにくいジャンルだといえます。

もちろん、売上高が多ければ多いほど良いとは思っていません。少なくても少人数で採算が取れればそれはそれでビジネスとしてはありです。

しかし、年商4000万円規模では到底採算は取れないのです。運営人数にもよりますが、卸売りベースで最低1億円くらいなければビジネスとして成り立ちません。しかし、そのラインにさえ到達できない国内デザイナーズブランドがほとんどなのです。

 

とりわけ、東京コレクションでショーを開催し続けながら、採算に乗せることは至難の業だといえます。

 

東京コレクションのショーが煌びやかに報道されながらも、セレクトショップや専門店からの受注にほとんど結びつかない理由の一つには、バイヤーの海外ブランド偏重・国内軽視の姿勢があるといえます。

東京コレクションの開催日程がパリ、ミラノ、ニューヨークが終了してからであることを指して、

 

「欧米コレクションで受注を決めてしまっているので、その後の東京コレクションには予算枠が残っていない。開催日程を見直すべき」

 

という意見があるのですが、これは半分当たっていて半分外れています。

なぜなら、東京コレクションもバカの集まりではありませんから、その可能性はとっくに承知しています。現に何年か前に海外に先駆けた日程で行われたことがあります。

しかし、その時の出展者によると、やはり受注にはほとんど結びつかなかったそうです。

バイヤーは異口同音にこう言ったそうです。

 

「欧米コレクションを見てから発注を決めたいから、今発注することはできない。欧米コレクションが終わってから考える」

 

と。

 

要するに、日程を前にしようが後にしようが、バイヤーの結論は変わらないということです。そしてその結論は欧米コレクションありきなのです。そして欧米コレクションさえあれば国内はどうでもいいのです。この欧米偏重の姿勢が無くならない限り、国内で卸売り向けにコレクションショーを開催することはカネの無駄遣いに過ぎないといえます。

 

2010年以降、従来型コレクションショーを行わず、SNSで直接消費者に販売するという形式の国内若手デザイナーズブランドがいくつも現れてきました。

代表例はhazamaであり、foufouだといえます。

彼らはこれまでの先行ブランドの苦戦を見て、別の売り方を模索してきたと考えられます。ちょうど隆盛を極めたSNSを使い、ファンを集め、そのファンに直接販売することで年商1億円の壁を越えています。

ショーを開催しないので、年間2000万円の出費も抑えられます。また、直接販売なので、卸売りよりも得られる粗利益額は増えます。

 

商売のやり方は自由で、違法なことをしない限り、どんな方法で売っても良いのです。「デザイナーズブランド=ファッションショーでの卸売り」という化石みたいな図式にしがみつく必要などさらさらないのです。

従来型のそのやり方にしがみつくだけではヨウジヤマモトのような大御所ブランドでさえ経営破綻してしまうのです。

 

「ヨウジヤマモト」が民事再生法を申請、負債60億円

https://www.fukeiki.com/2009/10/yohji-yamamoto.html

 

もう忘れている人も多いかもしれませんが、ヨウジヤマモトは2009年に一度経営破綻しています。今、ヨウジヤマモトが好調なのは破綻後支援した投資ファンド、インテグラルのおかげであるといえます。

 

もっと柔軟になれば採算に届く国内デザイナーズブランドは増えるのではないでしょうか。

 

 

そんなヨウジヤマモトのY3のTシャツをどうぞ~

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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