ブランド・ビジネス  2019-11-18

サンプルにも製造コストがかかっている

洋服を製造する際、いきなり完成品が出来上がるのではなく、サンプルが作られ、それを修正して完成品となることは、意外に知られていません。

消費者はもちろんのこと、販売員やセレクトショップの本部スタッフですら知らないのは珍しくありません。

 

これは如何に服作りが簡単なようで難しいかということを証明しています。パターン通りに、デザイン画通りに服を作ればすぐに売り物になるわけではないのです。

計算され尽くしたはずのパターンでも、実際に試着してみるとどこがキツイ/緩いということは珍しくありませんし、着心地に問題がなくても外から見たシルエットやバランスに問題がある場合も多くあります。

また、それなりに考えれられたはずのデザインでも、襟はもうちょっと高い方が良いとか、ポケットを増やした方が良いとか、実際の立体物になると、平面や頭の中だけでは見えなかった問題点が見えてきます。

そのために必ずサンプル品が作られます。

サンプル品を見たことがないという企画担当者の名を借りたセレクターも東京の本部には数多く存在していますが、彼らが目にする商品も実は、前段階でサンプルは作成されているのです。

 

そして、これはさらに多くの業界人も知らないことですが、サンプル製造費というのは、1枚当たりのコストは正規量産品よりも大幅に高くなっているのです。

もちろん、生地代・副資材代は必要ですし、縫製工賃も必要になります。

生地は用尺が2メートルとすると、きっちりと2メートル分費用がかかりますし、それどころか、長さが短いためにアップチャージさえ取られかねません。

わかりますか?1反=50メートルの生地を1反買うなら、まだ提示された1メートル●●円の50倍となりますが、2メートルだけ買うとなるとそのままの●●円では済まずに、アップチャージが発生する場合があります。

 

そして、正規量産品と比べて高くなるのは、何よりも縫製工賃です。

デザインとかそのアイテムにもよりますが、相場としてサンプル1枚の縫製工賃は1万円はすると考えておいてほぼ間違いないでしょう。もちろんそれ以下もありますし、それ以上の何万円にもなる場合もありますが、正規量産品のように1着1500円とか2000円程度の縫製工賃ではないということです。

 

そう考えると、サンプルは1着あたりだいたい1万何千円かの製造コストがかかっているということになります。消費者が「サンプルだからタダなんでしょう?」というのは単なる無知で済ませられますが、アパレルメーカーやセレクトショップがサンプルのコストを支払いたくないというのはいかがなものでしょうか?残念ながら、名の通ったアパレルやセレクトショップが製造業者にこのサンプルコストを押し付けようとすることが珍しくありません。

 

1000枚とか5000枚とかそれ以上の発注があれば、サンプルコストを押し付けても製造業者はペイできるでしょうが、昨今の多品種小ロットでたかだか50枚やそこらの量産しかオーダーできないくせに、サンプルコストを製造業者に押し付けようとするのは、傲慢なジコチュー以外の何物でもありません。

そんなことをやらかしながら、口では「サスティナブルガー」とか言うのですから呆れるほかありません。

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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