ファッション全般  2019-12-23

梳毛と紡毛について

前回、ウール(羊毛)の特性を踏まえて、なぜウール製品を洗濯すると縮んでしまうのかについて手短にまとめてみましたが、今回は梳毛と紡毛についてです。

羊毛を除いて、動物の毛を衣料品業界では「獣毛(じゅうもう)」と総称します。カシミヤも山羊の毛ですので「獣毛」の一つということになります。

羊毛、獣毛を問わず、「毛」を糸にする際には梳毛と紡毛という二つの技法があります。

梳毛は「そもう」と読みます。

梳毛の梳はなかなか普段は見慣れない漢字ですが、訓読みでは「くしけずる」と読みます。

ですので、漢字の意味がわかればだいたいの製法はわかります。くしけずるわけです。(笑)

 

梳毛から見て行きましょう。

原毛を長さ、太さに合わせて揃え、くしけずりながら均一な太さのスライバーを作ります。ここから紡いで糸にしていくわけですが、毛羽の少ない梳毛糸で織られたり編まれたりした生地は、薄くしなやかで光沢があります。

高級スーツなどに使われます。

製法をひどく簡略化して書きましたが、長さや太さを揃える手間、均一な太さのスライバーを作る手間など、工程数が多いので、梳毛糸は必然的に高価格となります。

そのため、高級品に主に使われます。

羊毛ですら高級品になるために、カシミヤで梳毛糸を作れば超高級生地となりますから、価格志向が強まっている最近ではカシミヤ梳毛糸で作られた生地を使う商品やブランドは極めて少なくなりました。

梳毛のことを英語ではウーステッドと言います。

 

 

一方、紡毛ではその手間が不要です。

手短にまとめるなら、繊維の太さや長さなどは無関係に一緒くたにして原毛を毛糸へと紡ぎます。太さや長さで選別する手間が要りませんから比較的工賃を安く抑えられます。

ですから、現在のカシミヤはこの紡毛糸にされることが増えています。

紡毛糸は梳毛糸に比べて毛羽が多く、がっしりした生地に使われます。ツイードやフラノは紡毛糸で織られます。

 

 

そして、原毛のままで絡み合わせて板状にするのがフェルトで、フェルトは前回に書いたウールが縮みやすい特性を生かして生地にするものだといえます。

 

最近では、梳毛と紡毛という言葉さえ知らない企画マンや業界コンサルタントも多いと聞きますが、せめて簡単な製造技法くらいは知っておくべきでしょう。

そうでなければ、なぜこのウール生地や獣毛生地が高いのか理解できないままで取引することになり、ピントのズレた価格交渉や経営アドバイスをしてしまうことになります。それの集大成が広い意味での今のアパレル業界だともいえるのですが。

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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