ブランド・ビジネス  2020-03-23

ブランドの根幹はMD設計以外に無い

「御社の課題はMDです。」

 

法人を立ち上げてからこの台詞を何回言った事だろう。弊社はECのディレクションをメインとした事業を運営しているのだが、トレンドである「EC」というチャネルだけを見て飛びつく方が非常に多い。もちろん、その中には直近でECに取り組んだ方が良いお客さんも存在する。しかし、ECの肝は「機会損失を防ぐ」事にあり、日々改善をしていったところで急激に売上がアップするケースの方が少ない。そして、急激に売上が上がったブランドは大概の場合、大きく機会損失していたのだと思う。

 

筆者は元々、インポートアパレルの小売・卸売を手がける会社出身であり、インターネットには全くと言っていいほど縁は無かった。新卒の頃など、ワード・エクセルの使い方も怪しいほどにアナログ人間であり、入社してからPCの入門書を買った事を今でもよく覚えている。それが今や、ECを生業にしているのも不思議な事なのだが、本当に大切な部分は何も変わっていないのだと断言できる。

 

 

ECで即効性のある売上を作れない理由

ECに取り組もうとするブランドは必ずと言っていいほど、即効性のある売上アップを期待するが、顧客リストを保有していない、認知度も全く無いブランドを、Webで販売したからと言って誰が買うのだろうか。それなら、商業施設にでもショップを出店した方が、回遊しているお客さんは商品を購入する可能性が高い。

 

大手アパレルが自社EC事業に手を付け始めてから10数年経ち、今ECを始めようとしている業態は卸メインの企業が多い。アパレル卸業者はエンドユーザーとの関わりが直接無かっただけに、この事実について認識が甘い。小売をやっていたアパレルは、既に各店に顧客が存在していて、リストを多く保有している。ブランドをしっかりと認知している顧客の母数が圧倒的に違う為、ECを始めた時の売上のインパクトに差があるのは当然と言える。まずは顧客を作る事から始めなければならないのだが、オンラインメインで顧客を潤沢に作れるほどブランドビジネスは簡単ではない。では、何から手をつけるべきなのか?

 

 

ブランドビジネスにおけるMDの役割

このような初期フェーズにブランドの需要を創出する時こそ、MDの設計が重要になる。

 

ブランドコンセプトは?ターゲットユーザーは?それに対してどんなプロダクトを提供し、且つどの程度の発注数を見込むのか?その発注数を捌く為の施策は何か?などなど。この根幹もなくブランドをスタートする企業はそれほど珍しくない。

 

昨今流行りの「インフルエンサー」を起用する事で、集客の初速は担保できる。また、「世界観」もインフルエンサーが過去、投稿してきたソーシャルメディアを見れば理解できる。しかし、初速だけ良くても継続は難しい。何故なら、継続していくにはブランドとインフルエンサー自身の人格を分けていかなければ、インフルエンサーの旬が過ぎると同時にブランドが飽きられてしまうから、また、どういった商品を展開するかの組み立てが無ければブランドとして売上を拡大する事が難しいからだ。この設計こそMDの要素に他ならない。

 

一方で、一部の大手アパレルのMDがそこまで緻密に設計されてきたのか?という疑問もある。ここに関しては筆者の仮説なのだが、まだ市場に選択肢が少なかった頃、アパレルは極端に言うと物を出せば売れる時代であった。そういった時代に規模拡大できた企業は、多店舗展開により市場を席巻し、認知度が上がり顧客が増えた。結果、ブランドとして成り立ったのではないだろうか。大手アパレルのコンセプトメイクが未だに稚拙に見えるのは、そういった時代背景があるからだと推測している。そんな内容でも、顧客リストさえ持っていれば、新しいブランドを創設した段階で通知する事が可能だ。それだけ顧客リストを保有しているというのは強みになる。しかし後発の企業は、大手がシェアを広げた市場に商品を流通させる事が困難な為、まずはソーシャルメディア等で情報発信をし、コンセプトが刺さるかどうかを判断しなければならない。つまり、時代背景により過去とは逆のアプローチを取らざるを得ない。だからこそ、MDの重要性が高まってきているのではないだろうか。

 

 

MDが設計されていないブランドの弊害

MDが設計されていなければどういう事態に陥いるのか?についてだが、まずはオーダーにロジックが無い状態になる。商品のオーダーはコンセプトメイクから紐解かれるべきなのだけど、そうでない企業は博打的に前年対比からアイテム構成比を算出し、発注をかける。結果、消化率が上がらず、セールで商品を捌く以外に方法が無くなる、といった具合だ。昨今、流行りのD2Cブランドを見ているとそんな印象を強く受ける。筆者が過去、会社員時代に経験したブランドの例を見てみると、

 

1)デニムがアイコンのブランド

Tシャツとのコーデが主流なので、デニム・Tシャツだけでアイテム構成比4割程度。

ドレスアイテムを売りたいが、顧客に「デニムブランド」として認知されているからドレスの売上伸びず。世界観から変化させる必要があり、それを顧客に浸透させるには根幹から設計する必要があった。

 

 

2)プリントのワンピースがメインのブランド

ワンピースだけでアイテム構成比4割程度。

売上対策は、ドレスに羽織るボレロやカーディガンをセット販売する事。またフェミニンなイメージからスカートも動きやすい。

 

といった具合だ。コンセプト・アイコンアイテムが明確であるからこそ、オーダーにロジックが生まれ、そこから何をコーディネートするかで強化品番や展開のスタイルが決まる。各月に展開するスタイルが決まれば、それに沿った販促計画が決まり、ECでの訴求方法も決定する。全ての根幹がMDにあるのはおわかりだろう。ちなみにこういった課題を解決しようと弊社にご連絡を頂くのだが、相談相手が間違っている。筆者の知る限り、MDについては、

 

佐藤マサ氏にご依頼するのが適切だ。アパレルだけでなく、ファッション雑貨からスーパーマーケットまで手がけた経験は、業界でも追随を許さない存在と言っていいだろう。

 

MDスケジュール例(エムズ商品計画より)

 

アパレルの小売を経験している人間からすると、逆にこの設計無くして、どうやってセールスしたらいいのか理解に苦しむのではないだろうか。販売からEC担当に配属が変わった場合、恐らくほとんどの人間がWebの勉強をスタートするだろう。一方で、EC事業者がアパレルの小売にいつまで経っても疎いのは、小売・ブランドビジネスについて不勉強だからではないだろうか。ここには常に疑問がつきまとう。

 

アパレルビジネスの参入障壁は過去から低く、Webサービスも充実してきたおかげで誰でも簡単にビジネスを始める事が可能になった。しかし、「需要を創出する」「ブランドビジネスを継続させる」技術は過去から何も変わっていない。

 

MD設計を軽視し、在庫過多に溺れるのか、それとも余った在庫をセールで捌き粗利を削り続けるのか。そうなる前にMD設計を見直し、ブランドの根幹から変えていく努力をする事こそが、ECだけでなくブランドビジネスを成功に導く唯一の方法なのではないだろうか。

 

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深地 雅也
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