ブランド・ビジネス  2020-03-23

染色の基本事項~染める段階でメリットとデメリットが変わる~

白いシャツ、白いTシャツ、白いズボンなど白いアイテムはシンプルなカッコよさがありますが、かなりの変態的愛好家でない限りは、白い服ばかりは着用していません。

必ず、カラー物・柄物も着用しているはずです。

カラー物・柄物を作る際には染色が必要なのですが、一口に「染色」と言っても様々な技法があります。

染色職人ではない当方なので染色の技法については解説することはできません。

 

しかし、一口に「染色」と言っても、どの段階で着色するかという問題もあります。それぞれに特性やメリット、デメリットもあります。

色を染める機会は、綿(わた)、糸、生地、製品と4段階があります。

みなさんが着ている洋服もこの4つのうちのどれかで染められたものなのです。

 

1、トップ染め

生地を構成する糸は、特に綿やウールなどの天然繊維は、綿(ワタ)を紡いで糸にします。この作業を「紡績」と呼びます。

紡績される前のワタに着色するのが、トップ染めと呼ばれます。

 

ワタそのものに染料が浸み込んでいるので、色合いに深みがあって、少々手荒に洗濯しても色落ちがしにくい特徴があります。

しかし、ワタの時点で着色されているので、その色の糸やその色の商品が売れなければ、在庫リスクを抱えることになります。

 

2、先染め

次に糸を染めるやり方です。

業界では通常「先染め」と呼ばれます。

染めた糸で生地を織ったり編んだりします。

トップ染めよりは色に深みがありませんが、少々雑に洗濯しても色落ちはマシです。

ですが、これも在庫リスクが高くなります。糸の時点で色が着いているため、その色や柄が売れないと、着色された糸を他の色や柄に転用することは難しいからです。

 

 

3、生地染め(後染め)

次は生地染めです。

ここからは基本的に「後染め」と呼ばれます。

一旦、白い生地を完成させ、それを染めるというやり方です。もちろん無地もありますが、どちらかというと柄物プリントで多く見られれる技法だといえます。

これはトップ染めや先染めに比べて在庫リスクが低くなります。

なぜなら、白い生地でストックされるため、その色・柄が売れなくても他の色・柄を乗せれば転用できるからです。

 

ただし、洗濯による色落ちはトップ染め・先染めに比べて激しくなります。ネットに入れての洗濯が必須となります。

 

4、製品染め

最後は製品染めです。

Tシャツでもズボンでも何でも構わないのですが、白生地で製品まで作り上げます。

この白い製品を染色するのが製品染めです。

これは生地染めよりも小ロット生産に向いています。

なぜなら、生地というのは1反50メートルあり、それを染めなくてはならないからです。

洋服の用尺が平均で2メートル必要とすると、だいたい25枚の洋服が1反の生地から作られることになります。

例えば、その洋服が23枚しか売れなかったとしたら、残り4メートルの着色した生地は売れ残り在庫となってしまいます。

ところが、製品染めの場合は必要な枚数だけを縫い上げてから、それを染めますのでそういう売れ残り在庫が原理的には発生しないことになります。

しかし、洗濯での色落ちは生地染めよりも激しくなる場合が多く、トップ染めや先染めに比べるとかなり色落ちしやすくなります。それが味だという人もいますが、カジュアル感が強すぎるという風にも受け取られます。

 

 

単に染める段階を変えるだけでもこれだけの特徴とメリットとデメリットがありますので、基本事項としてはこれくらいは覚えておいてください。

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

  • 素材関係の用語の乱れがひどくなっているように感じられる話

    2021-03-16  繊維の基礎知識

    呼び名を工夫することは素晴らしいことです。 有名な例としては、ナイシトールという薬品ですが、これは以前は違う商品名だったそうです。その頃はさっぱり売れませんでしたが、ナイシトールに変更してから売れ行き […]

  • セーターの「ゲージ」って何を表す単位?

    2021-02-24  繊維の基礎知識

    セーターの編み生地の厚さを表す単位として用いられているのが「ゲージ」です。 ハイゲージ、ミドルゲージ、ローゲージという具合に使われます。 多くの人はハイゲージと言われると、編み目の詰まった薄手のセータ […]

  • 生地製造のミニマムロットの基準 ~織物は長さ、編み物は重さ~

    2021-02-16  繊維の基礎知識

    通常の洋服として使われる生地には織物と編み物の二種類があります。 織物は「布帛」とも呼ばれます。 一方の編み物は「knit(ニット)」とも呼ばれます。   織物で作られる洋服で代表的な物はジ […]

RECENT ENTRIES

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう(最終回)

    2021-06-30  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事では、ある組織A・Bの既存店の過去5年の数字(売上・客数・客単価)を、その組織のIRで調べた数字を図にし、組織Aの考察をしていきました。今回の記事では、組織Aには実は良い兆候が見える!という […]

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉙

    2021-06-23  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事から、違う視点でIRから見える売上・客数・客単価を考察していこう!ということを試みています。 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉘ その際に注意すべき点として、以下の項目を掲げま […]

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉘

    2021-06-16  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事では、IR情報に掲載されている客数・客単価を見るときに、MDとして注意すべき点を記事にしていきましたが、今回の記事では、違う視点で客数・客単価の数字に関して記事にしていこうと思います。 決算 […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング