ファッション全般  2020-05-11

斜行しないTシャツ生地を作るためには ~撚糸という工程の重要性~

ちょっと間が空きましたが、コロナショックからの営業再開が徐々に始まってきています。

 

今回も基礎知識をお届けします。

以前に、複合素材の4つの作り方をご紹介しました。その中に、交撚(こうねん)という技法があることを書いています。

例えば、綿とウール、綿とポリエステルのように違う種類の糸同士を撚り合わせて1本の糸にするという技法です。

糸自体が複合しているので、この糸で織られたり編まれたりした生地は自動的に複合素材になるというわけです。

 

糸と糸を撚り合わせる工程を「撚糸(ねんし)」と呼びます。非常に地味な工程なので、この工程が存在していることすらご存知ないファッション系の方も多いのではないかと思います。

しかし、地味で知名度が低いこの撚糸という工程ですが、生地の出来具合、ひいては衣料品の出来具合まで大きく左右する重要な工程の一つなのです。

もっとも、紡績、撚糸、織布、染色、整理加工と様々な工程がありますが、重要ではない工程など何一つないというのが本当のところなのですが。

 

Tシャツを洗濯して乾かすと、生地が斜めによじれてしまうことがあります。経験された方も多いと思うのですが、これを斜行(しゃこう)といいます。

どうして斜行するのかというと、Tシャツの生地が単糸で編まれているからです。しかも同一方向に撚られた単糸だけで編まれていると洗濯をすると斜行します。

 

紡績という工程は英語ではスピンニングと言いますが、原綿を回転させながら紡いでいきます。少なくとも一巻き巻き終わるまでは右回転ならずっと右回転、左回転ならずっと左回転で紡ぎます。途中で逆回転させることはありません。

で単糸というのは、紡いだ糸そのままなのでこれで生地を編んで洗濯をするとどちらかの方向にねじれます。これが斜行と呼ばれます。

では斜行しなくするためにはどうするのかというと、逆回転の糸を撚り合わせて双糸と呼ばれる糸を作ります。これをするのは撚糸工程なのです。

 

業界では、「SZの糸」なんて呼び方をします。

右回転で紡がれた糸をS撚り、左回転で紡がれた糸をZ撚りと業界では呼びます。

どうしてSとZかというと、ネットでは以下の図のような説明がなされます。

 

しかし、これだけではどうして右撚りがSで、左撚りがZなのかわかりづらいのではないかと思いますので、下手くそですが手書きでSとZと呼ばれるようになった理由を図で表してみたいと思います。

 

こういうことで右回転がS、左回転がZと呼ばれるようになったというわけです。

 

このS撚りの糸とZ撚りの糸を撚り合わせて双糸にすると、どうなるかというと、右回転と左回転が均衡して互いの方向へ行こうとする力を相殺することになります。

(正確にはZ撚りを二本合わせてS方向にZ撚りの回転数の半分で撚糸することでトルクを相殺した双糸となります)との専門家からの指摘がありましたので補足しておきます。

 

その結果、生地は斜行しないということになります。

 

どうです?この撚糸という工程、地味で知名度も低いと思いますが(撚糸工場の人ごめん)重要な工程であることがお分かりいただけたでしょうか?

 

あと、ワイシャツなんかで高級品・高品質品になれば「100双」とか「80双」の生地で作られているということが謳い文句になりますが、この100双、80双というのも双糸です。100番手の糸の双糸、80番手の糸の双糸という意味です。

100番手の双糸なので50番手単糸、80番手双糸なので40番手単糸と糸自体の太さは同じですが、表面の滑らかさや光沢感が変わってくるというわけです。

 

そんなわけで、今回はS撚りとZ撚りについてでした。

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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