ブランド・ビジネス  2020-06-07

そのビジネス、以前からありましたよね?

先日、Twitterで「P2C(Person to Consumer)」なる文言を見かけた。どうやらこれがD2Cの派生であり、2020年に大きく流行るとの事で解説されていたようだ。ざっくりとした中身としては下記になるのかと。

 

影響力のある個人が作ったオリジナル商品を自らのチャネルでブランドの背景やもの作りへのこだわり、進化する過程などをフォロワーに伝えながら直販するモデル。

 

YouTuberのヒカルさんがファッションECモールのロコンドとコラボしたブランド「ReZARD」がこれに該当する、という事なのだが、僕の記憶が確かならこの手のビジネスは既に数年前から複数人のインフルエンサーがやっている。僕が知っているだけでも早い人は2016年くらいからで、人数も10人近くはやっているのでこれが「P2Cの幕開け」と言われてもあまりピンと来ないのだ。(偉そうに言っているが僕もそういった方々とお会いしたのは丁度1年くらい前だけど)

 

ブランドのメイキングをストーリーズで公開

よくある手法としては、インフルエンサー個人が立ち上げたブランドの企画・製造の背景を逐一ストーリーズで語る、というもの。縫製工場へ行き現場を撮影して公開したり、生地のこだわりやサンプル到着にしても同様に投稿する。文字通り、ブランドのストーリーをファンに刻み、エンゲージメントを高めている。こちらの画像を見てもらえればおわかりだろうが、ブランドアカウントへのメンションを付けて、自分のファン→ブランドのフォロワーと影響力を移し替える事で、ブランドの顧客が自分のファンの中でどの程度いるのか?もわかってくる。

 

人気ファッション系Youtuberに聞く!完売必至のオンラインショップの秘訣

先日書いたYouTuberの「しゅうあい」も同じスキームだと言える。彼らもショップを始めたのは2年ほど前なので、「側」だけ見ると「P2C」はインフルエンサーブランドの中では一般的なのではないだろうか。

 

「こだわり」が形骸化する市場

YouTuberのヒカルさんの場合、Twitterのフォロワーは100万人を超え、YouTubeのチャンネル登録数は400万人を超える。顧客になり得る人の数が格段に違うし、その為に売上の規模感こそ大きく違うがやっている事は同じであると言える。(僕が観測しているインフルエンサーブランドの年商規模は5000万円前後が多い)

 

Twitterでのツイートなんて個人の感想レベルだし誰もが思った事を勝手につぶやけばいいのだけど、これを見て「勉強になります!」「参考になりました!」と言っている人たちを見ると悪影響もあるのかとは思う。というのも、僕が取材してきたインフルエンサーが口々に重要だと言っているのはこういったスキーム云々ではなく「熱量」であると断言しているからだ。自分がそのブランドを運営する理由や顧客に届けたいという強い思い。それも無くスキームだけを真似する人が増えれば「こだわりっぽいもの」が市場に溢れてしまうのではないだろうか。とは言え「このタイミングで縫製工場の風景や生地のうんちくをあげておけばいい」と形だけ真似したところで「思い」が無ければユーザーにはすぐバレるのだけど。

 

僕が出会ってきたインフルエンサーたちは顧客に対してとても真摯に向き合っているし、ブランド運営自体を大いに楽しんでいる。つまりブランド運営は彼ら彼女らのライフワークなのだ。それがテクニック論に終始し、「形骸化したこだわり」が蔓延してしまうかもしれない市場を想像するだけで嫌悪感でいっぱいになる。

 

Twitterでもユーザーネームの後ろに「D2C」と付けてブランド運営している人たちを多数見かけるが、こういったツイートに感化されビジネスを始めてしまうと失敗の確率は格段に上がる。「何故、それを自分がやらないといけないか」が無い人は、今一度それを問い直してほしい。もちろん余計なお世話を言っている自覚はある。

 

過去から「個人」はブランドを伝えてこなかったのだろうか?

最後の違和感だが、過去インフルエンサー「個人」はブランドのこだわりや世界観を伝えてこなかったのだろうか?先ほど挙げたInstagram上のインフルエンサー以外にも過去、メゾンドリーファーの梨花さんやhazamaの松井さん、最近ではfoufouのマールコウサカさんなど、ブランド運営をしながら個人の影響力を使ってブランド運営を行ってきている人はたくさんいる。そして皆さん、自身の持つソーシャルパワーを育てながら常に世界観や思いを伝えてきたはずだ。こういう事例がまるで無かったかのように語られるのは不可解でならない。

 

過去から既にあるものを、まるで新しいビジネスのように流布する事にどんなメリットがあるのかはよくわからない。もしかしたら単純にそれを知らなかっただけなのかもしれない。しかし大切な事は「P2C」などという言葉ではなく、ブランドの当事者の熱量である事を忘れてはいけない。そして今回のツイートが、勉強は好きだけど仕事には生かさないマーケターおじさんたちの娯楽だけで済んでくれる事を願うばかりだ。

 

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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