ファッション全般  2020-06-18

編み生地には元々伸縮性がある

繊維・アパレル業界には「ジャージ」という言葉に二つの意味がある。

一つは生地の意味、もう一つは、あのトレーニングウェアみたいな服のこと、である。

これを非常にナチュラルに使い分けていて、聞く側もナチュラルに聞き分けている。

 

 

まあ、パンツと同じである。

ズボンの意味と、下半身の肌着のこと、と両方の意味がある。

会話の状況や内容でそれは何となく使い分けられ、聞く側も聞き分けている。

 

 

で、生地の場合、ジャージというのはいわゆる編み物である。スエット地なんかもジャージ、セーターに近いような横編みもジャージで、編み物の総称みたいな感じになっている。

ズボンやテイラードジャケットにも最近はこの「ジャージ」が用いられることが増えた。

理由は伸縮性があって動きやすいからだ。その反面、キックバック性の弱いジャージで作ると、肘や膝が出っぱなしになってしまうというデメリットもある。

綿だろうがウールだろうがポリエステルだろうが、ジャージ生地にすればもれなく伸縮性がある。それは糸自体に伸縮性はなくとも、生地の組織として伸縮できるように編まれているからだ。

綿100%のスエットシャツ(いわゆるトレーナー)やTシャツを思い浮かべてもらいたい。伸縮しない商品なんて見たことがないだろう。

よほどに特殊な加工を施さない限り、天竺だろうがスムースだろうがフライスだろうが裏毛だろうが普通に伸び縮みする。

 

先日、

 

ストレッチ性のあるジャージ素材

 

という文言を見て「頭痛が痛い」「馬から落馬した」の類だと思った。

しかし、文章を読んでみると、明言はされていないが「ストレッチ糸が入ったジャージ素材」だと言いたいのではないかと感じた。

残念ながら、ストレッチ糸が入っていなくてもジャージと呼ばれる生地は特殊加工を施したもの以外はもれなく伸縮するのである。

 

ではどうして、ジャージ生地に「わざわざ」ストレッチ糸を入れる必要があるのか。

もっとも考えやすいことは

 

伸縮性をさらに高めたいから

 

である。

 

だが、それ以外にも目的がある場合もある。

 

1、ハリコシ感を与えたい場合

2、防シワ性・形態安定感を高めたい場合

 

である。

ストレッチ糸、一般的にはポリウレタンが用いられるが、このポリウレタンは生地にハリコシ感を与えてくれる。またストレッチ性があるということはキックバック性があるということで、シワになっても反発して回復しやすいという特徴がある。

 

このため、こちらを目的として、ワイドシルエットなのにストレッチ混素材を使用する場合もある。

 

同じファッション業界・衣料品業界とはいえ、スタイリストと素材メーカーとでは求められる知識も社風も日常生活もまったく異なる。

そのため、そのギャップが埋まることは絶対にないのだが、素材メーカーが「ファッション」を語ることがほとんどないのに対して、スタイリストやファッショニスタはなぜだか「素材」や「製造加工」を語りたがることが多く、概してその発信は根本がズレていたり、内容が不正確だったりする。

そして、素材メーカーの発信よりは、そういう「川下」系の発信の方が、一般人に見られることが多く、世間に誤った内容やズレた内容やイメージを広く流布してしまうことになる。

 

みんな得手不得手がある。

 

誰だってそう、僕だってそうなんだ~♪

 

そのあたりについて「川下」の人には改めて考え直してもらいたいと思う。

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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