フルフィルメント  2020-06-20

Amazonへの出店は新規客獲得に有効なのか?

ベイクルーズが19ブランドをamazonに出品するという事で驚愕しております。というのもベイクルーズと言えば大手アパレル企業の中でも自社EC売上が大きく、ECモールの依存度を意図的に下げているのかな?と予想していたからです。

 

「ベイクルーズ」「シップス」の自社EC強化策――カギは「ネットと店舗の併売促進」

前期(2019年8月期)の仮想モールを含めたEC全体の売上高は前期比18%増の395億円。そのうち自社ECは同45%増の284億円だった。EC売上高に占める自社ECの割合は72%と売り上げの多くを自社通販サイトが占めている形だ。

 

上記記事からもわかるようにベイクルーズの自社ECの比率は72%と非常に高い。

 

今年も大手アパレルのZOZO比率をまとめてみた!

(データが昨年のものですみません…。今年のZOZO比率出してないのでそのうち書きます。)

 

大手アパレルの自社EC比率ってパルやユナイテッドアローズでも20〜30%程度。オンワード樫山は比較的自社EC比率が高いのですが、他社ECモールと顧客層が合っていなかったのか大きな売上が無かった事が原因でしょう。しかも2018年末にZOZO撤退で話題になっていましたね。しかもしかもオンワードのデジタル化担当役員の村田さんは元ベイクルーズ。こんな状況だったので勝手に、

 

「ベイクルーズはモール依存度を下げて、そのうちZOZOも離脱するのでは?」

 

なんていう事を予想してたのです。それが大きく覆された事態となりました。

 

無視できないAmazonの売上規模

単純に考えるとAmazonで獲得できる売上は無視できないのも理解できます。Amazonファッションは売上を公開していないのであくまで推測に過ぎないのですが、

 

アマゾンのアパレル売上高は2020年までの4年間で2倍以上に!?

本国でのAmazonのアパレル売上は全体の10〜20%と推測されており、これを仮にそのまま日本で適用するとどの程度になるのでしょうか。

 

アマゾン日本事業の売上高は約1.7兆円【Amazonの2019年実績まとめ】

日本国内の流通総額は2019年で1兆7442億1900万円。マーケットプレイスを含めると3兆円程度との事。これを先ほどの10〜20%に適用したとすると、1700億円から最大で6000億円がAmazonファッションのアパレル売上となります。日本のAmazonファッションは他国と比較して苦戦しているようなので、よく売れていても2000億円くらいなのかとは個人的に思っていますが。(ちなみにZOZOは直近の通期決算で3450億円。)

 

出品する事で見込めるAmazonの売上

では実際に出品する事でどの程度の売上が期待できるのでしょうか。ZOZO・Amazon同時に出品しているブランドからお話を聞く限りでは、昨今急速に売上の差が縮まってきているとのことです。まだZOZO売上の方が大きい企業が多いようですが、ブランド属性によってはZOZOの2/3くらいの売上を取るケースも見られるとか。僕の経験上では、ジュエリーブランドならAmazonの方が売れるというケースも見られましたね。(男性がプレゼント用に買うケースが多いから?)

 

過去、ファッションECモールに複数出品するブランドは、売れるモールによってSKU数に差をつけていました。単純に言うと、ZOZOはよく売れるのでSKU数を増やしやすいし、売れないモールはハリボテみたくなっていた、という事です。しかしAmazonに限っては出品するSKU数にはそれほど差が無いようです。売上も見込めるし、力の入れようが同等のようですね。Amazonは新規とリピーターのセッションの割合が9:1とも言われているので、記事中にある通り新規獲得は相当見込めるのではないかと。

 

料率はどの程度なのか?

ブランドがECモールに出品して利益が取れるかどうかの判断は全て「料率」、つまり出品手数料にかかっています。ZOZOでは基本35%で、ブランドのパワーバランスによって変動する、といった形ですが、Amazonも同様のプランがあるようです。10年前に僕が担当ブランドをAmazonに委託で放り込んでいた時は35〜40%程度だったと記憶していますが、最近はプランが複雑で「売上に対して◯%」といった単純な契約になっていないケースが多いようです。このあたりは社外秘なので聞けないのですが、もちろん利益が出る計算だから出品するのでしょう。自社ECのささげをそのまま他社モールで適用している企業も増えてきており、手間とコストも軽減できますから、モール出品のハードルは大きく下がっています。

 

ブランディングに影響は無いのか?

楽天の評判が悪かった時代(今もいいとは言えませんが)によく言われていましたが、「ダサい」と思われるECモールに出品する事でブランドが毀損されないか?という懸念ですね。ここに関しては僕も数年前に同様の意見だったのですが、ECの世界にどっぷりいるとそんな印象が全く無くなってきました。というのも、ECモールでクーポン打ってトラフィックを大きく稼いで売上伸ばしても、他のモールや自社ECでの影響が限定的であるケースが多く見られるからです。確かに僕も仕事柄、モールの売上対策を立案する事もあるのですが、結局はモール内でどう施策を講じるかに偏重します。モール内でのSEO対策や広告での露出、モール顧客に対するメルマガなどですね。

ていうかそうしないと、ソーシャル等でわざわざ外から獲得したファンを、手数料が取られるモールでクロージングするのが合理的では無いからです。そういうユーザーは全て自社ECに送客するのが良さげでしょう。

 

狙いは新規獲得だけど…

各社のEC担当者にお話を聞いていますと、どのブランドもECモール出品に対してはポジティブです。ユーザーがしっかりセグメントされていて、出品する事でプラスアルファの売上を獲得できるのであれば、そこを取りにいくのは当然と言えば当然です。(料率の問題はあるにせよ)個人的な懸念点は、新しくECモールに出品した場合、そこで獲得できるユーザーは実は自社ECで獲得すべきだったユーザーだったのでは?という事ですね。今回のベイクルーズの件で言いますと、Amazonに出品する事で獲得するであろう新規顧客は、例えば店頭だけで購入していた方や、まだブランド認知が無かった方も含まれてくるかと思います。そういった方がAmazonで購入する事で、もう自社ECでは購入してくれなくなる…、といったケースも出てくるのではないかと。その前にAmazonペイを導入するなどの施策があっても良かったのではないかと思っています。

 

モールで買う人はモールでしか買わない、というのはその通りだと思うのですが、それはクーポンやタイムセール・配送サービスの充実のような囲い込みがあるからでしょう。ですから、モールに囲い込まれる事を物理的に出来ない状況にしておくのも自社ECには必要な事だと思っています。ファッションEC黎明期からECモールはブランドの潜在顧客を囲いこみ、今現在も外部リンクを許さず顧客流出を防いでいるのですから。

 

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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