ECディレクターの為の教科書  2020-06-23

ECの特性を理解する事が運用のスタート

「EC担当者」という言葉を耳にするとWebに詳しくなければならない、と思ってしまいませんか?それは一つの事実ではあるのですが、逆にWebに詳しければ売上を作れるのでしょうか?

 

筆者はアパレルECの現場に10年程いますが、過去Web、特にEC周りに詳しいだけの人が売上を作れたケースを見た事がありません。それよりも、信念を持ってブランドを育てたいと思っている人の方が大きな売上を作っていますし、その熱量と比較するとWebの知識など微力だと感じる事が多数です。

 

一方でEC関連の知識があれば「もっと機会損失は防げた」「認知してもらえるチャンスが増える」と感じる事もあるのですが、どれもブランドとしてある程度の需要を生み出してからのお話になります。つまり0→1でブランドを作る段階において、EC関連の知識がそれほど重要だとは思わないのです。

 

ブランドの初期段階で認知を高め、ファン獲得をするのに最適なチャネルは「店舗」や「近しい人からの紹介」だったりします。それが一部ソーシャルメディアに置き換えられてきた、というケースは見られますが、結局ECでブランドを売りたければ、「認知」「需要」を先に作るしか無いのです。

 

ECは需要を創出するものではない

では何故、需要自体を創出する訳ではないECがここまで持て囃され、重要なチャネルとして位置付けられているのでしょうか。それは、まだEC売上の天井が見えていない事に起因しています。アパレル小売大手各社のEC比率は年々上昇しているのですが、何故このような事が起こっているのでしょうか。

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国内のEC比率は現在右肩上がりで成長中であり、2018年時点で6.22%。ファッション分野に限定すると13%弱というデータが出ています。まだまだ低い数値ではありますが、リアルからECへと消費が徐々に以降されているのですから、それに連動してEC比率も当然上がります。アパレルに限らず成長市場であるからこそ、まだ天井が見えない。そのせいかECに希望を持つ事業者が多いのではないかと推測します。

 

また、ECは実店舗と比較すると利益率が高いチャネルと言われていますが、新規客獲得コストについては議論が別れます。先述した通り、認知を作るには店舗が最適です。過去、アパレル大手がECをスタートした際は、多店舗展開により既にブランド認知が高い状態でしたので顧客獲得コストが必要無かったのです。出店に関わるイニシャルコストや運営していく為のランニングコストは当然ECが安いのですが、ここだけはズレてはいけない認識でしょう。

 

Webの特性を理解すれば「出店したら売れる」とは思わない

問題は、全てのブランドに等しく成長のチャンスがあるのかどうか?という点です。冒頭でお話しましたようにECで売上を伸ばすには認知度やブランド力が必要です。ECはユーザーが能動的に働きかける事で売上を作るショップなので、目的買いの側面が強い。

 

リアル店舗のようにブランド認知も無く、ふらっと立ち寄った人が商品を購入していくような購買行動は、物を直接見る事で知れる情報(素材・シルエット・販売員の接客・店舗が作り出す世界観)があるからでしょう。これをWebに無理やり置き換えるとするならECモールやソーシャルメディアでしょうか。

 

ECモールであるなら、モール内でクーポンを撒いたり、広告を出稿する事で露出を増やして売上を伸ばす事も可能なケースはありますが、そのロジックで購入するユーザーはモールの外で購入する可能性が低い。モール側も一度購入したユーザーは囲い込みたいでしょうから、お得なクーポンやセールでとにかくリピートを促進します。出店ブランドの外部リンクを許さない姿勢を見てもわかりますが、顧客の流出をとにかく防いでいます。しかし、その顧客は本来であればブランド直営店の顧客になるはずだった方かもしれないのです。

 

ソーシャルメディアを使っての新規獲得のチャンスは大いにありますが、社内リソースの問題が大きいのでしっかり手を付けれているブランドがそれほど多くありません。結果、既存ファンの数が可視化されたにすぎず、運用に力を入れて新規獲得できているブランドの方が少ないでしょう。このような特性を理解していれば、「ECを出店しただけで売上が取れる」などというお気楽なお話は出てこないでしょう。

 

何から始めるのが正解なのか?

結局「どうしたらECで売れるのか?」を判断するには、今ブランドが置かれている状況と、取れているデータから判断せざるを得ません。

 

そもそも誰にも刺さっておらずファン獲得が困難であるならばコンセプトや商品企画から見直す必要があるでしょうし、商品が良くても知名度が伸びていないのであれば、ブランドを認知してもらう為のプロモーションやWeb戦略を考案しなければなりません。

 

こちらの記事ではECディレクターが、自ブランドの置かれている状況をデータから冷静に判断し、次に打つべき一手を間違わず打てるようなノウハウを記載していきます。アパレルECの現場では、各々が日々託されたルーティーンをこなす事に注力し過ぎるあまり、ブランド全体を見据えたECの立ち位置を理解できないまま業務が進行しているケースがよく見受けられます。ECを支援する外注企業も数多く存在しますが、担当者がアパレル・小売出身では無いからか、小売に対する理解すら無いというケースが存在し、最適化が行われないまま機会損失を産み続ける事も珍しくないのです。全体を指揮する役割がどの現場でも不足し、アパレルの小売出身者がECに必要なスキルを身につけ対応していく事が大いに求められる中、筆者の記事がその一役を担ってくれるのであれば幸いです。

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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