特集  2018-12-21

メガネスーパー再建から学ぶ星﨑社長の現場主義 (前編) ~眼鏡とアパレルの二社を立て続けに再建した施策とは?~

このスタイルピックスメディアを本格的に立ち上げるにおいて、ビッグネームの方のインタビューを掲載したいと思い立った。デザインやらクリエイトやらの人ではなく経営、ビジネス面でのビッグネームにしたいというのが個人的な希望だった。アパレル業界、ファッション業界にはビジネス・経営面でのビッグネームは数多くおられるが、虚名ばかり先行している方も珍しくない。そこで、思いついたのが「メガネスーパー」の経営再建に成功した星﨑尚彦社長だった。経営再建のプロとして名を馳せる名社長が、まだ実質立ち上がってもいないメディアの取材を受けてくれるかどうか不安だったが、ダメ元で取材を申し込んでみると二つ返事でOKが出た。なんという幸運。何事も言ってみるものである。
星﨑尚彦社長に強い関心を持ったのは、2年ほど前のことだ。その当時、すでにメガネスーパーの再建談があちこちのメディアで取り上げられていた。しかし、実をいうと最初のうちは再建談そのものにはあまり興味を持てなかった。なぜなら、メガネのことは自分の専門外であり興味の対象外だったからだ。それでも倒産寸前の企業を再建するというのはすごい手腕だからその部分には興味を持った。
俄然、星﨑社長に興味が湧いたのは、メガネスーパーの前に「リップサービス」というブランド店を運営していたアパレル企業、クレッジの再建にも成功したという記事があったからだ。社名はピンとこなかったがブランド名にはあっと驚いた。なぜなら「リップサービス」というブランドは2014年に負債総額63億円で一度経営破綻していて、この当時は大きな話題となった。経営破綻時の社名はオルケス。クレッジは星﨑社長が離れてからオルケスへと社名変更していたのである。だからクレッジという社名に聞き覚えはなかったのだ。星﨑社長によって2年弱で経営再建したクレッジが、後任社長によって16か月後には経営破綻に追い込まれている。これほど短期間に企業は立ち直り、そして破綻するものなのか。
そして、クレッジ、メガネスーパーと2社続けて経営再建に成功した星﨑尚彦社長は一体どのような方法論を持ち、実行してきたのだろうか。

― さまざまなメディアやご自身の著書である「ゼロ秒経営」(KADOKAWA)でメガネスーパー再建の施策に触れられていますが、改めてお願いします。
― やっと黒字化できましたので、現在は再ブランド化に取り組んでいて高付加価値化を進めている段階です。私が社長に就任した2013年7月にはメガネスーパーは5年連続の赤字続き(2008年4月期~15年4月期)で倒産寸前でした。2011年には債務超過に陥りました。もちろん、ブランド化・高付加価値化ということは必要でしたが、真っ先にやらなくてはならなかったのが、下がり続けていた利益を増やすことでした。ですから、初年度は徹底的に利益を増やすことしかやりませんでした。幟(のぼり)を立てたり法被(はっぴ)をみんなで着て呼び込んだり手書きPOPをベタベタ貼ったりと、とにかく「お客様にとってわかりやすい店」にしました。整然とまとまってはいますがおとなしすぎる店頭で活気がなかったからベタなやり方で集客したのです。

星﨑尚彦社長

 

こういうことをすると「ブランドを毀損する」と危惧する人がいましたが、それはもっともなことですが、これをやって現金を作らないと会社が倒産してしまう寸前でした。もう少しゆとりがあったなら、ブランド作りから取り組めましたが、そういう状況ではありませんでした。これはメガネスーパーの前に着任したクレッジでも同じでした。まず、利益が必要。「ブランドが潰れる前に会社が潰れてしまうぞ」という状態でした。

 

クレッジでやったことも最初は徹底的な不良在庫の処分でした。50%オフの「期間限定ゲリラセール」を毎月行いました。洋服には鮮度がありますから、絶対に売り切ってしまわねばなりません。一方、眼鏡の場合は商品寿命が非常に長く、デザインの流行り廃りが少ないですから、抱えている商品はロングテールで売れ続ける。洋服は短期間で売り切らなくては在庫として残りますが、眼鏡は新商品を仕入れなければ絶対に在庫は減ります。そういう構造の違いがありますが、とりあえず売り上げを作らなくてはならないところは同じでした。ですから両社とも私は「まず売ること」から始めたのです。

-再生させた手法はすでにさまざまなメディアで取り上げられていますので、今後の新しい施策について伺えますか?
-まだ確固としたものではありませんが、地方では幹線道路沿いに当社路面店があります。眼鏡業界に限らず地方店は大概が幹線道路沿いの路面店か、イオンモールに代表される大型ショッピングセンター内にテナント入店するかのどちらかです。大型ショッピングセンターにすべてが集約されるのも面白くないので、当社が呼びかけ何社かを集めて幹線道路沿いに路面店を集約できないかと考えています。

実際、今の幹線道路沿いにはさまざまな路面店が並んでいますが、互いに何十メートル~何百メートルか距離があります。お客様は買いまわるためにそこをわざわざ自動車で移動しなくてはならず便利とはいえません。そこで何社かが共同で駐車場を共有し1か所で数店舗が集まるようなワンストップな買い物場所を作れないかと考えているところです。今後様々な企業に声をかけて連合を組んでいきたいと思っています。
地方といえば、もうすでには実施済みですが、お年寄りのご自宅や老人ホームなどの施設への出張訪問サービスを広げているところです。地方の路面店ですと、平日の昼間はあまり来客がありません。そうすると販売員や店長は待っている時間の方が長いのです。ですからそういう時間は店を閉めて施設や要望があった個人のご自宅へ訪問した方が確実に売り上げにつながります。小売業ではいまだに「店は開け続けなければならない」と勘違いしていますが、お客様が来ないのであれば店を開けている必要はないのです。しかも訪問を始めてわかったことですが、出張訪問をした場合、個人宅でも施設でもキチンと売り上げにつながる確率が高いのです。だったら来店を待っていて時間を潰すよりは店を閉めて訪問した方が効率的ではないでしょうか。私は常に効率的・合理的であることを念頭に置いて仕事をしています。

当社店舗では他社のメガネであっても修理を受け付けています。他社店舗の多くでは自社商品のみ修理を受け付けています。当社がどうして他社製品の修理も受け入れるかというと、修理を持ち込まれたお客様を当社の顧客にできる確率が極めて高いからです。言葉は悪いですが他社から顧客を奪う絶好のチャンスだからだというこれも極めて合理的な理由からなのです。
合理的・効率的に考えなくてはどんな分野でも経営は成り立ちません。

後編へ続く

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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