繊維の基礎知識  2020-09-07

スウェットもニット(編み物)なんだが?

どうも、業界で標準とされていることが一般消費者に正確に伝わっていないと思われます。

以前「Tシャツなのにニットなんです」という謎の文言を有名ファッションブロガーが書いていたことを話題にしましたが、「ニット」という言葉の意味を消費者やスタイリストだけでなく、企画担当者やブランドの中の人までが理解していないのではないかと感じます。

 

業界に30年近くいるジジイからすると「ニット」の定義ってそんなに理解しがたいものなのだろうかと不思議でたまりません。

以前も書いたように、ニットというのは「編み生地を使った服」全般を本来は指します。

 

1、セーター

2、Tシャツ類

3、トレーナー&スエットパーカ(最近はフーディーとも)

 

などが主で、日本の業界では「ジャージ」とほぼ同義語として使われます。

ただ、ジャージは日本では2つの意味があって

 

1、編み生地で作られた洋服

2、トレーニングウェアみたいなあれ

 

 

です。

 

なぜこんなことを書いているかというと、有名ファッションブロガーもさることながら、先日、ジーユーのPOPで謎の文言を見かけたからです。

画像を見てください。

 

 

文字おこしも同時にしておきます。

 

「スウェットライクニットとは?」

スウェットのような伸縮性のある、リラックスできる着心地と、ニットの上品な質感を、いいとこどりした新感覚素材

 

とありますが、どうでしょう?意味がわかりますか?

 

当方にはさっぱり意味が理解できません。

この文言をOKしたジーユーの中の人は大丈夫なのでしょうか?

 

そもそもネーミングからして「?」しかありません。スウェットとはもともとニット(編み物)なのです。スウェット=ニットなのです。ライクどころかニットそのものです。

そして、ニット(編み生地)の最大の特徴は「伸縮性があること」です。織物のことを布帛(ふはく)とも呼びますが、織物の最大の特徴の一つは「伸縮性がほとんどないこと」です。

織物の代表としてデニム生地を召喚しましょう。

デニム生地は、主に10番の綿糸を使って織られた綾織りという織り方の生地です。綿100%のデニム生地でできたジーンズを穿いたことはあるでしょうか?

どうでしょう?ほとんど伸縮性が感じられないはずです。

 

ですから、スキニーやスリムのような細身ジーンズは綿100%では圧倒的に動きにくくなります。そのため、ポリウレタンという伸縮性のある糸を交織することでストレッチデニム生地にするのです。

ここまでは理解できますか?

 

手元にウール100%や綿100%のセーターがある方はご用意ください。

どうですか?布帛とは違ってポリウレタン無しでも伸縮性があるでしょう。

 

「セーターに伸縮性がないという前提」自体がはっきり言って意味がわかりませんし、事実誤認も甚だしいわけです。

この商品を実際に触ってみましたが、スウェットというよりはセーターに近い編地でした。ということはわざわざ「スウェットライク」とか「スウェットのような伸縮性」などと書く必要性は全くないのです。

 

それにしてもジーユーという売上高2500億円ものビッグブランドがこういう事実誤認をするとはちょっと驚きです。

 

さまざまな原因が考えられますが「言葉の定義があやふやなままに使っている業界人が多い」ということと、「業界が売らんかなのために時々呼び名を変えてしまうこと」の2つが考えられます。もちろんそれ以外の原因もありますが。

このため、「ニット」という言葉の定義もあやふやなまま、いつの間にか「セーター」と置き換えてしまい、一般消費者だけでなく、業界人にも周知させられなかったといえます。

年商2500億円のジーユーというビッグブランドが、こんなわけのわからないPOPを店頭に設置すれば、消費者を一層混乱させるだけです。改訂されることを望みます。

 

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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