ECディレクターの為の教科書 2020-09-25
サイトコンテンツの充実は何の為?
機会損失はある程度回避出来てきた。
メルマガ等で会員に告知も徹底している。
店舗活用で見込客をECに誘導した。
ここまで来るとEC担当者は「そこそこ運用が回ってきたな」と体感でも感じてくるでしょう。ですが、ここまではあくまで準備段階。EC運用の難易度が徐々に上がってくるのはここからです。
では次に手を付けるべきはどこになるのでしょうか?
サイトコンテンツの効果検証と充実
何故、これまでの動きが準備段階なのか?と言いますと、その多くは「目的買い」のお客様の為の施策だったからです。ECサイトは目的買いの側面が強いと、このシリーズで再三お話してきましたが、サイトの中には購入を迷われている方も当然いらっしゃいます。GoogleアナリティクスのCV経路を見るとそれがよくわかる、というお話は以前にもしましたね。
ユーザーはソーシャルメディアやメールマガジン、広告のクリエイティブやサイトコンテンツを様々経由して購買に至る、という内容でした。
そういった、購買の為の情報を探されている方々に情報量を担保し、背中を押してあげるのがサイトコンテンツの役割になります。まさに店頭接客と同様ですね。
今公開しているサイトコンテンツは効果があったのか?
また、
どのようなサイトコンテンツがCVに寄与するのか?
を常に試行錯誤する事がEC担当者の重要なお仕事になります。それではアパレルECにおける「よくあるサイトコンテンツ事例」を簡単にご説明していきます。
<シーズンルック・スタッフコーデ>
ファッションブランドなら大概は用意されております「シーズンルック」。店頭の名残りから、ルックは何となく掲載しているブランドもあるのではないでしょうか。これ、ユーザーからすると貴重なコーディネートの材料なのです。そのせいか、シーズンルックはサイトコンテンツの中でもトラフィックが多く、またCVに寄与しやすい。にも関わらず、ルックから適切に商品ページに導線を引いていなかったり、遷移した商品ページの画像がルックと全く違う色の画像を使っていたりとユーザーにとって優しくないケースも見かけます。これらは離脱の元になりやすいのでご注意ください。
同様の理由からスタッフコーデもキラーコンテンツの一つですね。大手アパレルであれば販売員さんの数も多く、その分様々なコーデのバリエーションが見れるのは強みでしょう。自ブランドだけで型数が少ないのであれば、他ブランドをコーデに差し込んでも問題ありません。むしろ、顧客がよく着用するであろうブランドを知っているなら、組み合わせる事でイメージが膨らみやすくなります。ファッション雑誌の「スタイリスト私物」的に差し込んでみるのも良いでしょう。
<ブログ・特集などの記事コンテンツ>
記事コンテンツは、顧客属性によって内容を変化させる必要がありますが、商品情報を担保するのに重要なコンテンツです。「セール告知(目玉商品の紹介など」「コラボ」「雑誌掲載」「強化品番のプッシュ」などなど、ブランドのMD設計・施策と連動して公開しましょう。メルマガ・ソーシャルとの連携も必須ですね。
女性は商品の説明より、商品の見た目・雰囲気を重視する傾向にありますので、文字数を減らし画像を増やさないと離脱率が上がりますし、画像の種類も全身が写ったスタイルがわかるものが望ましいでしょう。逆に男性はうんちく・雑学が好きだったり、商品スペックやディティールの情報を求めたりしがちです。年齢層が低い場合はこの限りではありませんが、おじさんメインなら活字活用は問題無いでしょう。
最近では動画を活用するブランドも増えてきており、YouTubeにアップして埋め込む、という形ではなく、サイト内に実装するケースも散見されるようになりました。
https://www.beams.co.jp/video/fkp/12949/
YouTubeに飛んだら離脱になるから、サイト内で見せて効果検証する為でしょうかね。
<サイズガイド>
ユーザーが購入を迷う大きな理由の一つがサイズ問題。そのせいか、サイズガイド経由でCVするユーザーもそこそこの割合で発生します。という事は、必然的にサイズ情報の精度を高めればCV獲得は増えるという事です。だからこそ、大手は「バーチャサイズ」や「ユニサイズ」などのバーチャルフィッティングを導入しているのです。大手ならその費用を回収できる規模なのですが、小規模であるならサイズガイドのイラスト・採寸方法の情報量を増やしてあげるだけで良いでしょう。それだけでも効果は見込めます。
<お客様の声・FAQ>
ブランドによってはお客様からのご意見をコンテンツに落とし込んでいる場合があります。改善した箇所がどこなのかがわかりますし、FAQ的な要素も含まれているでしょう。FAQは網羅性が高く、充実させる事でお問い合わせ件数は減少します。ソーシャルメディアなら、コミュニケーションを生み出す為に敢えて情報を絞る事で、ユーザーからのDMを誘発するといった手段もあるのですが、サイトコンテンツは不足してしまうと離脱の恐れがありますのでお気をつけください。
・効果検証はどうするのか?
ECの現場ではサイトコンテンツを正しく検証できていないケースが見られますが簡単にコンバージョンの効果を見たければ、
行動→サイトコンテンツ→(当該コンテンツを選択)
ここで「セグメント」を使い、「コンバージョンに至ったユーザー」もしくは「コンバージョンが達成されたセッション」を選択。これらの違いは、前者は当該ユーザーの過去のセッションが全て含まれるのに対し、後者はCVしたセッションのみ集計されます。関節的な効果も見たいなら前者を選択して確認する必要があります。また、「購入」だけに照準を合わすなら「購入したユーザー」というセグメントもあります。「目標」のコンバージョン設定を複数している場合は、各項目に合わせてセグメントした方が精度の高い数値になるでしょう。
また、記事コンテンツの効果検証は「どれだけ読まれたか?」や「どれだけランディングしたか?」なども測定しておく必要があるでしょう。
どれだけ読まれたか?の場合なら、当該コンテンツのスコアから、
→「直帰率」「離脱率」「平均ページ滞在時間」
を見ておきましょう。
どれだけランディングしたか?は
行動→サイトコンテンツ→ランディングページ
で確認できますし、そこから送客したいページがあった場合は、「入り口からの遷移」を選択すると見る事が可能です。
記事コンテンツには、ブランドを知ってもらう為の記事、ブランドを好きになってもらう為の記事など、それぞれ目的があるはずです。全てが購入を目指したものではないでしょうから、目的に合わせて検証する必要があります。手順としましては、
ブランドの方針・コンセプト・MD設計
↓
サイトコンテンツの設計・計画
↓
実行・検証・修正
といった業務フローになります。全てはブランド戦略とMD設計から紐解かれますので、順番を間違えないようご注意ください。

WRITER
深地 雅也
株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。
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