繊維の基礎知識  2020-09-28

専門家による「意味のないコダワリ」が消費者を混乱させる

生地には、大きく分けて織物と編み物の2種類があります。もう一種類、不織布もありますが、衣服にはあまり使われません。

逆にいうと、衣服に使われる生地には織物と編み物しかない、とも言えます。

特徴は大雑把にいうと、

 

・織物はストレッチ素材が入っていない場合、伸縮性があまりない

・編み物はストレッチ素材が入っていなくても伸縮性がある

 

というところにあります。

本来、メンズのシャツ、スーツ、ジーンズ、チノパンなどは織物で作られており、伸縮性がほとんどありませんでした。伸縮性がある方が、着ている人にとっては動きやすいことは言うまでもありません。

そのため、ストレッチ素材が普及してからは、シャツ、スーツ、ジーンズ、チノパンなどはストレッチ混の生地で作られるケースが増えました。

理由は簡単です。伸縮性があるため着用者にとって快適だからです。

 

わざわざ固くて不便な服を着たいという人は少数派です。

 

一方、本来は織物で作られていたスーツ、シャツ、ジーンズなどのアイテムが編み物で作られることも増えました。これも理由は簡単です。伸縮性があって着用者にとって快適だからです。

ニットシャツ、ニットスーツ、ジャージシャツ、ジャージスーツ、などと呼ばれています。

織物は別名で布帛とも業界では呼ばれます。

一方、編み物はニット、ジャージとも呼ばれます。

しかし、ニットというと「セーター」のことを指す場合もあり、「パンツ」と同様に文脈によって判断しなくてはならないというめんどくささもあります。

 

布帛(織物)でこれまで作られていたアイテムを編み物で作る場合、セーター生地で作ることは稀です。Tシャツやカットソーと同じような編み生地で作られることがほとんどです。

同じ「編み物」と言っても、セーターは「横編み」で、カットソー類は「丸編み」と区別され、使用する機械(編み機)も生地の構造もまったく異なります。

生地の構造はまったく違いますが、織物とは全く違っており、やはり「編み物」と呼ぶほかないのです。

 

しかし、本来布帛で作られていたアイテムを作るため、丸編み類は「布帛に近い」などと認識する業界人も少なくありません。

消費者に近いスタイリストや販売員にこういう認識の人がいるため、消費者にとってはなおさらわかりにくくなっています。

 

また、編み生地の専門家でも丸編み類を得意としているのか、横編みを得意としているのか、によって認識は異なります。

横編みを得意としている人達の中には、「丸編みをニットとは認めていない。丸編みは布帛に近い」などと主張する人もいます。

気持ちは分からなくはないですが、丸編みも編み生地なので「knit」でなければ何だと言うのでしょうか?確実に織物ではありませんし、不織布でもありません。

丸編みというからには「編み物」の一種なのです。

 

セーターとカットソーの最大の違いは何かというと、セーターは基本的に縫製せずに編み合わせるのですが、カットソーというのはcut&sone(切って縫う)なのです。裾や首元が縫製されていればそれはセーターではなくカットソーなのです。

そして、カットソーというのは織物で服を作る際には必ず行われる工程なのです。

ですから、余計に横編みの人からすると「布帛に近い」という意見になるのかもしれません。

 

しかし、そんな意味のないこだわりが、消費者をますます混乱させています。

意味のないこだわりにしがみつくよりは、消費者にもっと体系的にわかるように説明し、認識してもらうようにするのが専門家の本来の姿勢ではないかと思います。

 

 

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

RECENT ENTRIES

  • 復習問題~仕入予算編④~

    2020-10-21  アパレルMDの為の教科書

    今回は、前回出題した問題の解答を発表します 復習問題~仕入予算編~③ (問題15) 1年の売上2億円。粗利率55%。値入率65%の組織がある。この組織の1年での消化率(売上原価÷仕入原価)が90%だっ […]

  • 大手アパレルが何十個もブランドを持っている理由

    2020-10-19  繊維の基礎知識

    今回は趣向を変えてみます。 一応、初心者向けの基礎知識という内容は変わりませんが、初心者の皆さんは、オンワード樫山やワールド、三陽商会といった百貨店向け・ファッションビル向け大手アパレルがどうして、各 […]

  • 復習問題~仕入予算編~③

    2020-10-14  アパレルMDの為の教科書

    皆様。前回の問題が解けましたでしょうか? 復習問題~仕入予算編②~ 今回は、仕入予算関連の問題を引き続き出題致します。今回も皆様。是非問題にチャレンジしてみてください。     ・ […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング