繊維の基礎知識  2020-10-05

細番手の糸を使わなくても光沢感のある生地が作れる技術「コンパクト糸」と「ボルテックス糸」

高級ブランドのワイシャツ生地はツルっとしていて光沢感があります。

これの理由として「細番手の糸を使っているから」と説明されることがありますが、それだけではありません。細番手の綿糸で生地を織っても、織り方や整理加工によって光沢感がなくザラっとした手触りにすることもできます。

光沢感があるかないか、表面感がツルっとするかどうかは、糸の細さよりも生地を織る糸が毛羽(ケバ)立っているかどうかにあります。

極言すれば、太い糸でもケバ立っていなければ、光沢感があってツルっとした手触りの生地を織ることができます。

また、細い糸は紡績するのにもそれなりの技術が必要なので製造コストが高くなります。

 

コストを抑えるためにそこそこの太さの糸を使いながら、光沢感のある生地にするための手法としては、前回の「繊維の基礎知識」シリーズで書いた「シルケット加工(別名マーセライズ加工)」があります。これは苛性ソーダという薬品で糸の毛羽を溶かすのです。

その結果、加工後には光沢感のある生地になります。

低価格ブランドでも広く使われている加工です。

 

で、後加工ではなく、糸そのものを紡ぐ際に毛羽を少なくするという手法もあります。

その代表的なものは2つあります。

1、コンパクトヤーン(コンパクト糸)

2、ボルテックス糸(MVSとも表記)

です。

 

両方の製法は異なりますが、出来上がった生地は似たような感じに見えます。

ちょっと説明文をここからお借りします。

http://pmworks.biz/technique/katerm/compact-yarn/

綿糸を製造する機械=リング精紡機に特殊な毛羽を伏せる装置が取り付けられていて、糸が所定の太さ(番手)に延伸された後、トラベラーで撚りをかけられる前段階で毛羽が糸の内側に入り込む。

通常の紡績では、綿糸はどうしても毛羽立ってしまうが、毛羽を伏せながら紡績することで、毛羽の少ない綿糸になるという理論です。

この製法ができるまでは、糸の毛羽をガス火などで焼いていたが、これは調節が難しく、下手をすると糸が焼かれた分だけ細くなってしまうという危険性もありました。それに比べるとはるかにリスクが低く、糸の太さも維持できるというのがコンパクトヤーンです。

 

もう一つのボルテックス糸とは、村田機械が開発した独自の精紡機「ボルテックス」により精紡された綿糸のことです。

ボルテックス精紡機は独自の技術で、綿糸の毛羽立ちを最小限に抑えることができるため、ボルテックス糸で織られたり編まれたりした生地は光沢がありツルっとした表面感になります。

MVSという名称は、ムラタボルテックススピナーの頭文字をとった名称です。

 

これらの技術は確立されてそれぞれもう20年以上が経過しています。

その割には、川下のファッショニスタには知名度が低いと感じるのですが、この2つの技術開発によって、低価格なのに光沢感のあるワイシャツ生地やTシャツ生地などが製造できるようになりました。

 

低価格ブランドでツルっとした生地のワイシャツやTシャツを見かけたら、シルケット加工なのか、コンパクト糸使いなのか、ボルテックス糸使いなのか、この3つのうちのどれかだと考えて間違いありません。

 

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

RECENT ENTRIES

  • 復習問題~仕入予算編④~

    2020-10-21  アパレルMDの為の教科書

    今回は、前回出題した問題の解答を発表します 復習問題~仕入予算編~③ (問題15) 1年の売上2億円。粗利率55%。値入率65%の組織がある。この組織の1年での消化率(売上原価÷仕入原価)が90%だっ […]

  • 大手アパレルが何十個もブランドを持っている理由

    2020-10-19  繊維の基礎知識

    今回は趣向を変えてみます。 一応、初心者向けの基礎知識という内容は変わりませんが、初心者の皆さんは、オンワード樫山やワールド、三陽商会といった百貨店向け・ファッションビル向け大手アパレルがどうして、各 […]

  • 復習問題~仕入予算編~③

    2020-10-14  アパレルMDの為の教科書

    皆様。前回の問題が解けましたでしょうか? 復習問題~仕入予算編②~ 今回は、仕入予算関連の問題を引き続き出題致します。今回も皆様。是非問題にチャレンジしてみてください。     ・ […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング