繊維の基礎知識  2020-10-12

「1反未満での生地製造依頼・生地買い付け」があまり歓迎されない理由

基礎の基礎ですが、生地の1反というのは何メートルかご存知でしょうか?

業界の川下にいる人は意外に知らない場合があります。1反の生地は50メートルあります。

洋服1枚を縫製するのに必要な生地の長さを「用尺」と呼びますが、洋服の用尺はだいたい2メートル前後である場合がほとんどです。

もちろん例外もあります。半袖Tシャツだと用尺は1メートル未満ですし、ロングコートやロングワンピース、ロングドレスなんかは用尺が3メートルとか4メートル必要になってきます。

用尺が平均で2メートルだとすると、1反の生地で25着前後作れるということになります。

 

これが基本です。

 

洋服を作るために生地を買いたいと思ったとき、どこで買うかというと、

1、町の生地店

2、生地問屋(繊維専門商社ともいう)

3、生地の工場から直接

という感じになります。

1着だけ作りたい場合だと生地は2メートルか3メートルしか要りませんから、町の生地店で買った方が安くて便利でしょう。

ただし、町の生地店には、珍しい生地とか手の込んだ超高級生地なんかは置いてないことが多いので、そういう物が欲しければ、生地問屋から仕入れるか生地工場へ直接交渉するかになってきます。

 

しかし、生地問屋はまだしも生地工場は2メートルだけなんて注文に応じてはくれません。売るのはもちろん、製造することも応じてくれません。

それはどうしてかというと生地は1反50メートルだからです。

最低50メートルの受注がないと生地を製造できないのです。

製造しようとしてできないことはありませんが、1メートルあたりの金額は恐ろしく高くなります。

 

これは別に生地工場がぼったくっているわけではありません。

一々、糸をセッティングしなおして、機械が上手く動くかどうか調整や試運転を行って、それでようやく本生産になるのです。この本生産がたった2メートルとか3メートルだったら、その長さの生地にそうした手間賃がすべて乗っかってくるのです。結果的に1メートルあたりの金額はべらぼうに高くなります。

ですから、オリジナルで生地を製造するなら、せめて1反はないと、工場にとっては割が合わないのです。また発注する側にとっても割が合いません。

また生地工場に2メートルだけ売ってくれと言っても、あまりいい顔はされません。理由は残り48メートルが余ってしまうからです。そして、48メートルの生地なんて普通のアパレルには少し短いので売れませんから、工場にとっては2メートルだけ売ってほしいなんていうのはほぼ迷惑になるのです。

 

しかし、最近では、そういう1反未満の切り売りをしてくれる生地問屋や工場も中にはあります。

ではどうしてそういう売り方が可能なのでしょうか?

 

それは大量生産アパレルが、5反とか7反とか10反とかを買ってくれるため、切り売りで余ったメートル生地も含めて仕入れてくれるからなのです。

 

生地を短メートルで切り売りしてほしいという声をよく耳にしますが、わたしは、こうしたシステムを買う側に教え込んでからそういう売り方をすべきだと考えています。

それをしないと、買う側は「売ってくれて当たり前」という考えになります。実際にこうしたシステムを川下の人や専門学校生はほとんど知りません。

そうした人たちに何のレクチャーもなしに「はいはい」と切り売りしてしまえば、「そうしてくれるのが当たり前。してくれない問屋や工場はケチ」というふうに思ってしまう人も相当数出てきてしまうでしょう。

それは決して、業界のためになりません。

短メートルで生地が買えるのも大量生産アパレルという受け皿があるため、本当は1反未満での生地の買い付けや製造依頼は経営を圧迫するものだということを川下も含めて広く告知しておく必要があると考えます。

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

FOLLOW
FOLLOW

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

RECENT ENTRIES

  • 復習問題~仕入予算編④~

    2020-10-21  アパレルMDの為の教科書

    今回は、前回出題した問題の解答を発表します 復習問題~仕入予算編~③ (問題15) 1年の売上2億円。粗利率55%。値入率65%の組織がある。この組織の1年での消化率(売上原価÷仕入原価)が90%だっ […]

  • 大手アパレルが何十個もブランドを持っている理由

    2020-10-19  繊維の基礎知識

    今回は趣向を変えてみます。 一応、初心者向けの基礎知識という内容は変わりませんが、初心者の皆さんは、オンワード樫山やワールド、三陽商会といった百貨店向け・ファッションビル向け大手アパレルがどうして、各 […]

  • 復習問題~仕入予算編~③

    2020-10-14  アパレルMDの為の教科書

    皆様。前回の問題が解けましたでしょうか? 復習問題~仕入予算編②~ 今回は、仕入予算関連の問題を引き続き出題致します。今回も皆様。是非問題にチャレンジしてみてください。     ・ […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング