MD視点での決算書の読み方  2021-01-27

決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう⑩

これまでの記事で、架空の組織を数字を決算書から抜き出し、OTB表を作成しました。完成した表は下記になります。

決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう⑨


更にこの組織の設定は、下記の通りです。

・中価格帯のメンズベーシックカジュアルショップ
・この年(このOTB表の年)は全体的に数字が良く黒字だった。しかし、秋冬商戦は売れたが在庫消化に苦戦した!

 

このことを鑑みて、このOTB表から読み取れることを。

① 売上
② 粗利
③ 仕入
④ 在庫

 

の順序で考察していこうということで、前回の記事では、①の売上から読み取れることは何か?ということをお伝えしました。今回の記事では、②の粗利益から読み取れることを、一気通貫なもの見方でお伝えできればと存じます。

 

 

〇粗利益から見えること

以前の連載でもお伝えしたように、時期による粗利率の増減は以下のことが考えられます。

A 値入率の悪い(仕入原価率が高い)商品が売れた。
B 値引き・セール等売変施策を強いられた。

 

このことが考えられます。
セレクトショップのシーズンの立ち上がり期などは、Aの事象がおこりますが、今回の設定は中価格帯のメンズカジュアルショップですから、そのようなことが考えにくいと言えます。

また、セール施策をあまり行っていないと推測される3月~5月の第1四半期も、9月~11月の第3四半期も粗利率が50%程度の状態ですから、組織全体の値入率は、さほど高いとは言えないと言えるでしょう。(言い換えれば、仕入原価率がそんなに低くないということ。)

今回のこの組織の設定に。

・この年(このOTB表の年)は全体的に良かった。しかし、秋冬商戦は売れたが在庫消化に苦戦した!

 

とありますが、このことが如実に表れているのは、第4四半期の粗利率の低さです。

春夏商戦のセール時期と考えられる第2四半期の粗利率が46.5%となっていますが、秋冬商戦のセール時期と考えられる第4四半期は、粗利率が40%となっています。このことだけでも、秋冬物の在庫が重く、通常よりも過度なセール施策を強いられた!ということが見て取れます。しかも、決算在庫である。第4四半期の期末在庫(次期の期首在庫にあたる)は、前年よりも1億5千万円の在庫原価分が増加しています。このことから、過度なセールを行っても、それ以上に在庫が残ったと見ることができます。

しかしながら、これ以上のセール施策を行えば、顧客からみたブランド・ショップの価値を棄損することにも繋がりかねず、期中では厳しい在庫コントロールが強いられたでしょう。ですが、この結果による副産物も数字から見て取れます。それは何か?というと。

”(秋冬物の)在庫が処理しきれず、期首よりも在庫が増加したので、結果的に通期の粗利が良くなった!”

 

このことです。

もしも仮に、前年並みの在庫金額落としこもうとすれば(このケースだと第4四半期の粗利率は約34%程度にしなければ前年並みの在庫に着地しない。セールすることで、更に売上が上がれば粗利益高は増えるが、今回の数字の推移を見るとその可能性は少ないだろう?)、第4四半期の粗利率が更に下がり、全体の粗利益が少なくなります。このことで、損益計算書が赤字になる可能性も上がります。今回取り上げた組織の前提として。。。

・この年(このOTB表の年)は全体的に数字が良く黒字だった。しかし、秋冬商戦は売れたが在庫消化に苦戦した!

 

とありましたが、このようなケースでは、営業利益が黒字でも、セール施策をあまり行わないことによる、在庫増加が懸念(資金繰りの悪化に繋がる)されますので、MDの皆様は、このようなことにも注意しましょう。

では、次回は第4半期に過度なセールを行っても、期末在庫が増える結果にしか終わらなかった。要因がどこにあるのか?ということを考えてみます。

では、皆さん。次回もお楽しみに。

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佐藤 正臣(マサ佐藤)
WRITER

(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。仕事依頼は上記弊社ウェブサイトリンクよりお願いします。唯一の趣味は古着収集。

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