繊維の基礎知識  2021-02-01

メンゾメって何やねん?「綿染め」は「わたぞめ」と読もう

先日、ユニクロの店舗で安売り商品を物色していると、プロのナレーションによる店内放送が耳に飛び込んできました。

 

「~~メンゾメを施した~」

 

 

という一節です。

ずっと聞き流していたのですが、謎のキーワード「メンゾメ」で改めて集中して聞き直しました。

 

すると、ウォッシャブルコットンメリノクルーネックセーター(商品名長っ)という商品の説明文でした。

ユニクロの通販サイトにはこう書かれています。

ウォッシャブルコットンメリノクルーネックセーター (男女兼用) | ユニクロ (uniqlo.com)

 

・手触りの良いコットンに19.5マイクロンの高品質メリノウールをブレンド。
・ニットなのに洗濯機で洗えるマシンウォッシャブル。
・シルエットは今のトレンドに合わせてフィットを見直し、全体的にリラックス感をプラス。
・裾リブは絞り過ぎず程良くフィットさせ、シャツインした時も腰まわりを押さえつけすぎないように調整。
・襟リブは少しだけ太くして存在感を出したので、シャツなどのインナーの邪魔にもならない。
綿染めのため色に深みがあり、より美しいニットに。

 

そう、謎の文言「メンゾメ」とはこの赤字にした「綿染め」のことだったのです。

もちろん、ナレーターの人はナレーションのプロですが、繊維製品のプロではありません。読めなくても当然かもしれませんが、収録の際にはファーストリテイリングの本社の誰かが絶対に同席しているはずですから、これを指摘できなかったということは業界の知識レベルとしていかがなものかと感じます。

 

この「綿染め」ですが、正解は「わたぞめ」と読みます。

綿という漢字は確かに音読みではメンですが、訓読みではワタとなります。ただ、普段生活をしていて綿をワタと発音する機会はあまりありません。

しかし、綿毛と書いたときに「メンモウ」とか「メンゲ」と読む人はあまりいないでしょう。たいていの人は「わたげ」と読むはずです。

綿・毛なら綿(めん)ウール混の略である場合が業界にはありますが。

 

 

では「わたぞめ」とはどういう状態なのでしょうか。どうして色に深みが出るのでしょうか?(ユニクロの説明文が正しいと仮定して)

以前にも書いたことがあるかもしれませんが、衣料品の染色には4つの段階があります。

どの工程で色を着けるのかということです。

 

1,綿染め

2,糸染め

3,生地染め

4,製品染め

 

という具合です。

まず、製品染めですが、これは白生地で製品の形に縫い上げてから染める方法です。白いTシャツを黒や紺に染めます。

 

生地染めというのは、生地を染めるというやり方です。生地を染めて、それを裁断し縫製し洋服にします。

糸染めというのは、糸を染め、その染めた糸で生地を織ります。

 

で、メンゾメならぬワタゾメですが、これは糸になる前の「わた」の段階で染めます。染めた「わた」を糸にして、その糸で生地を作ります。

 

洗濯をしても色が最も落ちにくいのは、ワタゾメで、ついで糸染め、生地染め、製品染めの順になります。しかし、在庫リスクは逆に製品染めが最も低く、生地染め、糸染め、ワタゾメの順に高くなります。

 

どうしてこういうことになるかというと、ワタの段階で染色すれば、繊維の隅々まで染料が行き渡り洗濯をしても落ちにくくなります。糸の段階、生地の段階となるに従って染料が浸み込みが浅くなります。最も浅いのが製品染めです。

しかし、製品染めは白い製品を作るので、売れる色だけに集中して染めることができます。例えばピンクのTシャツが売れたとすると、Tシャツを全部ピンクに染めれば良いのです。逆に売れなければ、白いままで在庫に眠らせておいてどれか売れる色が現れたらそれに染めれば良いのです。だから最も在庫リスクが低い。

 

生地の段階で染めてしまうと、売れない場合、製品染めよりリスクが高くなります。糸の段階で染めれば、売れない場合さらにリスクが高まります。そして、ワタの段階で染めてしまえば売れなかったときにほとんどが在庫になってしまうというリスクの高さがあります。

 

ユニクロのこの商品は、そのハイリスクなワタゾメを施したということで、なかなかの覚悟に基づいているということです。

そんな「覚悟」を込めた商品の説明のナレーションが「メンゾメ」では企画担当者や製造担当者も苦笑するほかないでしょう。

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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