MD視点での決算書の読み方  2021-03-03

決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう⑭

これまでの記事で、架空の組織を数字を決算書から抜き出し、OTB表を作成しました。完成した表は下記になります。

決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう⑬


更にこの組織の設定は、下記の通りです。

・中価格帯のメンズベーシックカジュアルショップ
・この年(このOTB表の年)は全体的に数字が良く黒字だった。しかし、秋冬商戦は売れたが在庫消化に苦戦した!

 

更に、これまでの記事で述べた”第4半期に過度なセールを行っても、期末在庫が増える結果にしか終わらなかった。要因がどこにあるのか?”ということを、以前の記事で4項目掲げました。前回の記事では、4項目目の(この組織の)在庫過多に気づくのが遅い?という理由は、下記の2つの点から見て取れるということを掲げました。

❶ (1年での)売上原価÷(1年での)仕入原価→消化率
❷ 粗利率の推移

 

前回の記事で❶の件は述べましたので、今回は❷の件について考えてみたいと思います。

 

 

〇粗利率の推移を追うことで見えること

この組織の各四半期ごとの粗利率を、下記の図でもう一度確認してみましょう。

以下。図から数字を抜き出すと。

第1四半期49%。第2四半期46.5%。第3四半期50%。第4四半期40%。

となっております。

常々、私はMD講義の場で、”セールして商品が売れると粗利(率)が下がる!”ということを講義しています。ということは?

セール時期である第2四半期(6~8月)と第4四半期(12月~1月)の粗利率が低い!

というのは、一見で読者の皆様方もお分かりになるだろうと思います。

 

もし仮に、この組織の仕入原価率が40%(値入率60%)とすると。。。(因みに、アパレル小売業の経験が長いMDや企画・生産等の方は、現場(店頭)に行けば、ある程度の仕入原価率が想像できる筈。すると、決算書分析の精度は更に上がる。MDにとって常に現場(店頭)に足を運ぶというのは、とても重要なことである)

→第2四半期のOFF率は約25.2%。第4四半期ののOFF率は33.3%。

(この組織の第1四半期。第2四半期もかなりOFF率にはなるが、アウトレット店やECでの常時セール品展開していることを考えれば、このくらいの数字の推移になっているところは多い)

となります。(計算の仕方は、下記の私の過去連載をご覧くださいm(__)m)

復習問題~売価・原価・粗利益・値入編①~

このOFF率が高いか低いかというのは、置いておくことにして。第2四半期に比べ、第4四半期のOFF率の方がかなり高く出ているということは?少なくとも、この組織は、秋冬商戦に関しては、在庫が多いから減らさなければヤバイ!ということは、認識できているようです。

ですが、第2四半期の期末在庫が、期首在庫よりも6,000万円増加していますから、実は、春夏商戦の時点で、この組織は在庫過多に陥っていた?という可能性があります。実際、この組織は、メンズベーシックカジュアルのショップですから、考えられることとしては、年中売れる定番商品のような品揃えが多く、そのような商品の在庫が増えた?更に言えば、Tシャツ等の秋でも売れる春夏商材の在庫が増加したようにも見え、すでにこの時点で在庫過多に陥っていた可能性は高そうです。

しかも、この組織は冬のアウター販売に期待しているのか?第3四半期の仕入構成比が、先の記事でも述べたように、37.3%というかなりの大きい仕入金額が発生しているのですから、当然、在庫過多に陥る可能性が高かった!という結論に至りますが、実際、粗利率の推移を見てみると、そのことに気づくのが、どうやらアウター販売が主となる10月以降だったようです。

これまでの記事で、この組織の

”第4半期に過度なセールを行っても、期末在庫が増える結果にしか終わらなかった。”要因がどこにあるのか?”ということを、考察してきましたが、このような特徴を持つ組織が、今回のような状況に陥らないようにするためには、(MD的に)どのようなことが必要なのか?ということを、次回の記事で述べていきます。

では、皆さん。次回もお楽しみに。

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佐藤 正臣(マサ佐藤)
WRITER

(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。仕事依頼は上記弊社ウェブサイトリンクよりお願いします。唯一の趣味は古着収集。

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