繊維の基礎知識  2021-03-16

素材関係の用語の乱れがひどくなっているように感じられる話

呼び名を工夫することは素晴らしいことです。

有名な例としては、ナイシトールという薬品ですが、これは以前は違う商品名だったそうです。その頃はさっぱり売れませんでしたが、ナイシトールに変更してから売れ行きがけた違いに伸びたそうです。

 

ですが、既存の用語を知らないで、それを違う意味に使うことは無用の混乱を引き起こすことになるので、個人的にはまったく賛同できません。

例えば「エコレザー」という呼び名です。

最近は何でもエコなので、食傷気味ですが、合成皮革や人工皮革に対して「エコレザー」という呼び名を付けて販売している業者やブランドが数多くあります。

その表記を見た際、個人的には疑問を感じました。なぜなら「エコレザー」というのは何年も前にすでに定義されていて、内容が全く異なる物だからです。

日本では2006年に基準が制定されていますから今から15年も前の話です。去年や一昨年にポッとできたわけではありません。

 

エコレザーとは|ecoleather (jlia.or.jp)

 

エコレザーは、1990年代半ばからヨーロッパを中心に普及・発展し、2002年には中国でも本革エコマーク基準が発表されるなど、世界的なトレンドにまでなっています。 日本では、2006年に、NPO法人 日本皮革技術協会 と一般社団法人 日本タンナーズ協会 の協力の下に「日本エコレザー基準(JES)」が制定されました。 

 

という歴史があります。そして

 

日本エコレザー基準(JES)の主な認定要件は下記の3つです。

  • 天然皮革であること。

  • 排水、廃棄物処理が適正に管理された工場で製造された革であること。

  • 臭気、化学物質(ホルムアルデヒド・重金属・PCP・禁止アゾ染料・発がん性染料の使用制限)および染色摩擦堅ろう度に関する一定の基準を満たしていること。

とのことです。

フェイクレザーを「エコレザー」などと勝手に呼ぶようになったのは、ここ数年のことだろうと考えられますので、明らかな誤用です。

 

またこんなのもあります。先日「長繊維綿」「短繊維綿」という奇妙奇天烈な表記を見かけました。

これを某生地工場がやっているのですから驚くほかありません。

本来なら、長綿、短綿という言葉があるのでそれを使うべきです。

なぜなら、長繊維、短繊維というのは全く別の意味の言葉だからです。

絹を除く天然繊維は「すべて短繊維」に属します。絹・合繊と比べて、個々の繊維の長さ(これを繊維長という)がめちゃくちゃ短いからです。

 

 

綿でいうと繊維長はだいたい3センチ前後です。長綿、超長綿と呼ばれるものでも10センチもありません。

一方、絹は蚕の繭をほぐしますが、この繭は1本の繊維で構成されており、その長さはだいたい1500メートルあります。

1本の繊維が1500メートルもあるから「長繊維」と呼ぶのです。

ポリエステルに代表される合成繊維は、理論上、無限の長さで作り出すことができます。ですから「長繊維」なのです。

 

カタカナでは短繊維のことをスパン、ステープルファイバーと呼び、長繊維のことをフィラメントと呼びます。

長繊維と短繊維という言葉の意味を変えてしまうと、合繊メーカーや紡績と話をするときに全く通じなくなってしまいます。

いくら機屋の親爺がイキがっていても、合繊メーカーと紡績から糸が供給されなければ、生地は製造できません。

そして、戦前から続いている「長繊維」「短繊維」という言葉は今も合繊メーカー、紡績では日常的に使用されているのです。

 

消費者の興味を惹きたい気持ちはわかりますが、すでに長い年月、業界の基本用語として使用されてきている言葉の意味を「売らんがため」に無理やりに変えることは無用の混乱を引き起こすだけなので、有害でしかありません。

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブロ(http://minamimitsuhiro.info/ )】

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