MD視点での決算書の読み方  2021-04-14

決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう⑳

前回の記事では、しまむらの在庫回転の良さに着眼し、その理由として。下記のような理由があると考えられ、(商品の)販売期間を短くする際の、メリット・デメリットをお伝えしました。

① (商品の)販売期間を短く設定する
② SKU展開を狭める
③ リードタイム(以下LT)の短さ

決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう⑲

今回の記事では、②・③の件。特に2の件についての考察していきます。

 

 

〇 SKUに関すること

まず、②SKU展開を狭める。という点です。これは、しまむらがどうこう?ということではなく、サイズ展開が多い、靴業界やメンズスーツ業界のことを考えれば、おわかりいただけるでしょう。靴やスーツ・ビジネスシャツ等というものは、サイズをピッタリ合わせて着ないと、多くの不具合が生じるものです。ですから、靴は0.5mmピッチでサイズを揃え、できるだけお客様に対して、売り逃しがないように、サイズ展開を拡げています。そのこと在庫が増加しますが、そのようにしないと売り逃しが多く発生し、ある程度の売上を確保できないという側面があります。

また、靴やビジネス関連のものは、デザインや素材変化もレディースカジュアルに比べれば、圧倒的に変化も少なく、必然的に販売期間が増えます。このことも重なるので、低めの在庫回転率が出てくるというのが実態です。

しまむらの場合は、ビジネス関連の商品が殆どありませんし、基本的にはレディースカジュアルが中心ですから、このことからも、高い在庫回転が実現できる!とも言えます。

 

 

〇LT(リードタイム)に関すること

最後に、③LTの短さです。

はっきりと申しますと、もしアパレル・ファッション小売業のLTのすべての組織が、LT1週間であれば、この業界の在庫問題の殆どが解決されるでしょう。この業界の識者がコンサルの方々が、盛んにQR(クイックレスポンス)を叫ぶのもそのためです。ですが、商品生産の殆どを海外に依存している(国内生産でも難しいが)、アパレル・ファッション小売業でそのことが実現されるのは不可能でしょう。

話をしまむらに戻しまして、しまむらはUNIQLOやその他アパレル・ファッション小売と違い、自社商品の開発を殆ど行っておりません。この件は、前の記事でも触れていますが、その商品の殆どが他社からの買い付け商品であり、粗利率が低くでるのも、その影響が大きいとお伝えしました。このような商品供給方針は、スーパーマーケットの衣料品部門によくみられる傾向で、しまむらは、その最先端を走っていると考えられます。

この方式のメリットは、商品企画・生産管理・パタンナー・貿易担当等の仕事を、自社で担うことが必要がないので、人件費等の販売管理費を削ることができます。また、高い掛率(仕入原価率)で商品を仕入すれば、ミニマムロットのハードルが低い場合が多く、利益は薄いが必要な商品数量だけを仕入れる!という、MDの基本で言う”適量”が達成しやすくなります。このような点から、不良在庫を抱えづらくなり、在庫回転が向上する!というわけです。

更に、言えばしまむらの場合はですと、2021年2月期の第2四半期決算資料で下記のように書かれていました。

”在庫管理では、サプライヤーと連携した短期生産サイクルを活用し、部門別の予算配分も機動的に見直して、 効率的な在庫コントロールを行ったことで、秋冬物は適正な在庫量となり、値下削減にも繋がりました。”

 

しまむらの粗利率の低さから推測されるように、しまむらは商品供給先のサプライヤーから、かなり高い掛率(仕入原価率)で、商品を仕入れていると想像されます。ですから、日頃からサプライヤーとの関係構築が出来ており、コロナ禍のような危機に陥ったときに、サプライヤーに協力してもらいながら、うまく仕入をコントロール出来た!というのも、2021年2月期コロナ禍真っ只中、良い数字をたたき出した要因の一つとも言えるのではないでしょうか?

また、図にも書かれているように、効率的な粗利・在庫コントロールが出来たのも、サプライヤーとの関係性による、仕入コントロールだけでなく、MD予算設計・運用の精度が高い!とみて間違いないでしょう。でないと、(前期よりも)仕入・在庫を減らして、売上・粗利益を高める!ということは出来ません。以上が、決算書から見る、アパレル・ファッション小売各社の考察です。

上場企業の決算書を調べ、数字を抜き出し、OTB表を作成し、その中身を考察する!

 

というのは、日々のMDの実務向上にも繋がりますので、今回の記事で興味を持って頂いた方がいらっしゃいましたら、是非、実践して頂ければ幸いです。
次回からは、アパレル・ファッション小売業各社の決算月の設定から見る点を考察していきます。
では、皆様。次回もお楽しみに。

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
佐藤 正臣(マサ佐藤)
WRITER

(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。仕事依頼は上記弊社ウェブサイトリンクよりお願いします。唯一の趣味は古着収集。

FOLLOW
  • Facebook
  • Twitter
FOLLOW
  • Facebook
  • Twitter

(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。仕事依頼は上記弊社ウェブサイトリンクよりお願いします。唯一の趣味は古着収集。

COMMUNICATION

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

RECENT ENTRIES

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉓

    2021-05-12  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事では、アパレル小売の決算月は2月が好ましい?その理由として、3月末が決算日だと。 ”❶ MD予算設計がややこしくなる→特に仕入予算”ということをお伝えしました。 決算書を読むことでMDの数字 […]

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉒

    2021-04-28  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事では、各社の決算月を調べた上。”MDにとって理想の決算日は2月末”ということを申し上げました。 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉑ 今回の記事では、その理由をできるだけ読者の皆 […]

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉑

    2021-04-21  MD視点での決算書の読み方

    〇会社の決算月を気にしたことがありますか? この記事の読者の皆様は、アパレル・ファッションを含めた小売り業界の仕事に従事されている方が多いことだと思います。ですが、読者の皆様方が所属されている企業・組 […]

RECENT ENTRIES

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉓

    2021-05-12  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事では、アパレル小売の決算月は2月が好ましい?その理由として、3月末が決算日だと。 ”❶ MD予算設計がややこしくなる→特に仕入予算”ということをお伝えしました。 決算書を読むことでMDの数字 […]

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉒

    2021-04-28  MD視点での決算書の読み方

    前回の記事では、各社の決算月を調べた上。”MDにとって理想の決算日は2月末”ということを申し上げました。 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉑ 今回の記事では、その理由をできるだけ読者の皆 […]

  • 決算書を読むことでMDの数字面の仕事を鍛えよう㉑

    2021-04-21  MD視点での決算書の読み方

    〇会社の決算月を気にしたことがありますか? この記事の読者の皆様は、アパレル・ファッションを含めた小売り業界の仕事に従事されている方が多いことだと思います。ですが、読者の皆様方が所属されている企業・組 […]

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング