仕入予算は適当に考えたらダメ⑥

仕入予算は適当に考えたらダメ⑥

仕入予算は適当に考えたらダメ⑥

今回もAさんのバッグ屋をモデルに仕入予算について考えていきます。
Aさんのバッグ屋の目標数字は以下の通りです。

・売上予算 1億1千万円
・粗利率予算 50%
・仕入原価予算 5,500万円
・値入率設定 60%
・仕入元売価予算 1億3,750万円
・年間OFF率 20%

前回の記事では、値入率と粗利率の設定が大きい場合のメリット。デメリット。そして、差が大きすぎる場合は、基本的には粗利率の設定を上げるべき!というお話をさせて頂きました。

今回は、値入率と粗利率の設定が殆どない場合のケースと、仕入原価予算管理の弱点についてお話していきます。

値入率と粗利率の差が小さい場合

今回のAさんのバッグ屋のケースでは、粗利率が50%設定になっていますが、仮に、値入率の設定を52%(仕入原価率48%)。値入率と粗利率の差が2%。このような場合はどのようになるのでしょうか?

このケースを仕入元売価予算として置き換えると、以下のようになります。

5,500万円÷(1-52%)=約1億1458万円(仕入元売価予算)

となり、売上予算1億1千万円に対して、余分に仕入ても良い仕入元売価金額は、たったの約458万円となります。これを年間OFF率でいうと、年間約4%のOFF率となります。

このケースですと、このブランドは事実上セールをしない!ブランドということができるでしょう。

・このケースのメリットとしては?

→(仕入)原価率の設定を高くした場合には、価格以上の価値のある商品を品揃えしやすい。
→”セールをしないブランド!”という顧客の信頼が得られやすい。

・デメリットは?

→目標売上に達しなかった場合。セールが出来ないので在庫が多く残ってしまう。
→仕入点数がギリギリなので、目標売上に達しづらい。
→セールという在庫消化手段がとれないので、最悪の場合は商品を廃棄することになってしまう。

このようなことが考えられます。

特にデメリットの部分は、ラグジュアリーブランドなどで多く見られる現象です。このことを見越した上で、ブランド・ショップの値入率・粗利率のターゲットを決めましょう!

仕入予算を原価管理することの弱点

最後に、仕入予算を原価管理することの弱点をお話します。

*原価管理の弱点。

→値入率が想定より良くなると、仕入点数が増える恐れがある。

このような場合は、予算目一杯の仕入をせずに、仕入点数を調整する必要性が出てきます。

例えば、今回のAさんのバッグ屋のケースでは、当初設定した売上予算は1億1千万円。値入率は60%。粗利率は50%。仕入原価予算は5,500万円です。

ですが、期中でMD・バイヤーの努力が功を奏し、値入率65%に達したとします。

その場合。当初の仕入原価予算である5,500万円を使いきっては危ない!ということです。

当初の値入率設定60%の場合。仕入元売価金額に置き換えると?

→5,500万円÷(1-60%)=1億3,750万円(仕入元売価予算)

となります。仮にAさんのバッグ屋の1点当たりの平均元売価金額が5,000円だとしたら?バッグの仕入可能点数は27,500点となります。

ですが、期中の仕入原価率削減努力によって、値入率65%を達成した場合。

→5,500万円÷(1-65%)=約1億5,714万円(仕入元売価予算)

となります。上記の例に照らして、仕入元売価金額平均を5,000円だとすると?

バッグの仕入可能点数は31,429点となり、約3,930点ほど多く仕入可能となるということです。

このケースの場合では、仕入原価予算5,500万円を使いきるのではなく、点数を確認しながら仕入原価予算を余らせて商品発注をしなければ、在庫がより多く残ってしまう可能性が高まるということになります。

このことに注意しながら、期中での仕入れ業務をおこなってください。

次回は、残した在庫をどう考えるの?というお話をさせてもらいます。
では、皆さん次回もお楽しみに。