残る在庫のことはどう考えたら良いの?④
前回の記事では、残るであろう在庫のことを消化率という指標を使い説明しました。
しかしながら、消化率という指標は、プロパー事業部とアウトレット(以下)事業部と通した、利益管理のことまでを想定しない!ということもありますし、前回の記事でお伝えしたように、プロパー事業部の消化率が低くても、その他OLや催事等セール事業で商品を物凄く消化できるので、プロパー事業部の消化率は低くても良い!というように、本末転倒な結果を招いてしまいます。
このような場合は、当然ですが組織全体の収益は悪化します。
今回の記事では、消化率とは別にロス率という考え方を用いて、残しても良い在庫について考えてみたいと思います。
ロスの考え方を持ち込み、消化率の設定を考える
今回もAさんのバッグ屋の例で説明していきます。
・売上予算 1億1千万円
・粗利率予算 50%
・仕入原価予算 5,500万円
・値入率設定 60%
・仕入元売価予算 1億3,750万円
・年間OFF率 20%
・消化率設定 90%
・残してもよい在庫原価611万円
このようになります。
今回のAさんのバッグ屋の例では、プロパー事業部としての商品の消化率は90%という設定を致しました。すると、1年で約611万円の原価分の商品が残ります。
この約611万円の在庫原価は、翌年OLや催事等で消化可能という根拠があるからこその消化率の設定ということでした。
これとは別にロス率を設定するという考え方があります。
今回の残してもよい在庫約611万円分を、仮に廃棄処分にしたとすると。。。
約611万円÷(売上)1億1千万円=約5.6%(廃棄ロス率)
というように、約5.6%が廃棄ロス率となります。このケースですと以前の連載でもお伝えしたように、上記の粗利率から5.6%の廃棄ロス率分を引かなければなりませんから、最終的な粗利率は、約44.4%ということになります。
しかしながら、実際に今回のAさんのバッグ屋のケースでは、残してしまった商品は、次年度OLや催事セール等で売りますから、廃棄することはありません。言い換えれば、残在庫ロスという表現を用いることができます。
ここで話を戻しますと、残してよい在庫原価の設定は、消化率という目標ではなく、残在庫ロス率という考え方を用いてもよい!ということです。
残した在庫を仮に全部廃棄処分したすると?廃棄ロス分で多くの粗利益がなくなる?
実際、Aさんのバッグ屋のケースで消化率を80%と設定した場合、残してもよい在庫原価は約1,222万円となります。すると、残在庫ロス率は?
1,222万円÷1億1千万円=約11.1%
となります。
ここからは、個人的な意見ですが、私は残しても良い在庫の設定は、消化率を用いるよりも、残在庫ロス率を用いた方が良いと思っています。
何故ならば、前述したように、残した在庫が、どれくらい損益に影響を与えるのか?ということが理解しやすいからです。
消化率80%のケースで、仮に廃棄した場合。実に11.1%も粗利率が下がることになります。しかしながら、消化率目標・残在庫ロス目標のどちらを選ぶかは?読者の皆様で判断していただければ良いと思います。
次回はこのシリーズの纏めを記載いたします。
では、皆さん。次回もお楽しみに。