定番品の仕入予算設計は”売れる分だけ仕入する!”でいいの?②

定番品の仕入予算設計は”売れる分だけ仕入する!”でいいの?②

定番品の仕入予算設計は”売れる分だけ仕入する!”でいいの?②

前回の記事では、商品管理ルールに”定番品”という定義を持ち込んだ場合。仕入予算設計の基本ルールである。”売れる分だけ仕入する!”という大前提で仕入予算を組む際には、期首在庫の金額がどれくらいあるのか?が重要になる!ということをお伝えしました。

今回の記事では、定番品の仕入予算設計は”売れる分だけ仕入する!”で良いのか?ということを述べていきます。

売れる分だけ仕入する!だと、期首在庫と期末在庫は同じ金額になる

前回の記事で決めた、アパレル小売Aの組織の商品管理ルールに関する定番品の定義は以下の通りです。

(あるアパレル小売組織のA)
・定番品の定義は1年中店頭で展開している商品
・更に言う定番品の定義は、数年来に渡って年中展開している商品
→そして、その他のルールは以下の通りです。
・決算月は2月末(今回は2020年3月~2021年2月末)
・この組織の2020年度の春商品の販売期間は2019年12月~2020年4月末

定番品の仕入予算設計を仮に売れるだけ仕入する!にした場合。当然ですが、1年での売上原価が仕入原価予算ということになります。ということは?アパレル小売組織Aの定番品は、期首在庫と期末在庫が同じ金額となります。以下の図をご覧くださいm(__)m

この図をご覧になって、皆様も薄々気づいてくれたように思いますが、仮にこの図にある期首在庫金額が多い場合。例えば、売上原価=仕入原価予算にしても、在庫回転率が年間1くらいにしかならなかった場合に、皆様は、仕入原価予算を売上原価と同じにしますか?当然しない筈です。

在庫が多い場合は、売れる分だけ仕入する!ではダメ!

その場合は、わかりきったことですが、(1年の)売上原価>(1年の)仕入原価予算としなければ、在庫は多いままになってしまいます。

前回の記事の冒頭でも述べましたが。。。

”定番品を多く品揃えしている組織は、はっきり申しまして在庫過多に陥っている組織が殆どです。これは、私がこの仕事始めて、多くの組織をみていきましたが、総じてそのような状況でした。”

というのは、このことが要因なのです。

定番品という概念をMDの商品管理ルールに入れると、”定番品だから長く売れるから在庫が多くても大丈夫!”というような慢心が組織に産まれます。また、前回の記事でも述べたように、その定義も曖昧で、顧客視点から見れば”定番品”とも捉えられない商品までも定番品分類されていますから、そのことも相まって在庫が増えていく!ということです。

ですから、私は”定番品"という概念をMDの商品管理ルールに持ち込むことは、あまり推奨していません。

組織の特徴を考慮した上で、適正な在庫金額基準を決めよう!

話を元に戻して、仮に定番品と呼ばれる期首在庫が多かった場合には、その組織の特徴やブランドコンセプトに見合った、平均在庫の基準(期末在庫の設定)を組織として決定しなければなりません。

その場合は、以下のようなことを考慮して頂けると良いでしょう。

・組織の特徴を考慮し、売上予算が達成できる適切な在庫金額の基準は?
・翌月以降の売上原価の何か月分の在庫を持つ?
・在庫回転率の設定を設ける?
・展開アイテム数は?1item辺りの店頭・バックヤード・センター倉庫の在庫比率は?
・商品のリードタイムは?

このこと以外にも、組織によって相対的に物事を考えて必要事項を抽出し、組織にとっての定番品の在庫基準を決めておくと良いでしょう。また、定期的に定番品を降格・昇格させるというようなルール作りも必要でしょう。今回の記事は、以上になります。

次週は、筆者休暇の為、お休みとさせて頂き、8月19日(水)からは、これまでこの記事で連載してきたことの復習問題を複数回主題し、皆様方の、MDの数字面の理解が深まるようサポートができればと存じます。