商品分析について考えてみよう③

では、今回からいよいよ本題の、商品の売れ筋等を見極める際に使用されるような帳票をベースに、商品分析についての話をしていきます。 前回の振り返り その前に前回の振り返りを致しますと。。。 商品管理ルールに関するルールに関しては以下のようなことを意識すると良い!とお伝えしました。それは。。。 ・自分たちの顧客ターゲットの心理を反映できるルールにする。・顧客の用途やトレンドで大きく変化する分類を表すものにする。・必ず商品管理ルールの定義を確定させ、MD・バイヤーの主観で決められないようにする。 このことです。 今回からの話は、このことがしっかり定義されているということを前提にお話していきます。 商品の売上ランキング表はどう見たら良いの? まずは、日や週。そして、月等で見る、売上ランキング的な帳票を見る場合は、どのようなことを意識したら良いのでしょうか?では、今回は私が手作りで作り上げた(笑)以下の表をご覧ください。 おそらく、皆さん方が日々ご覧になっているものと大差はない筈です。 この表の特徴を簡単にお話すると。  ① 売上・粗利・在庫の部から構成されています。② 売上・在庫は金額や点数だけでなく、構成比も記載されています。③ Excel資料として抽出しています。(Excelを使用する必要のない最先端な組織もあるとは思いますが。)④ 在庫消化日数が記載されています。 ざっくりした特徴を言えば、こんなところでしょうか? 売上・粗利・在庫は繋げてみること では、上記で上げた項目をそれぞれ考えていくことにしましょう。  まずは、 ① 売上・粗利・在庫の部から構成されています。 からです。 この連載でも何度も述べているように、MDの仕事の目的は、 ”売上だけでなく、粗利益を多く獲得すること!” このことです。 ですが、この連載をずっとご覧になっている方ならば、理解出来ていると思いますが、粗利率の高さばかり意識していると、多くの在庫が残る可能性が高まりますし、例え、売上・粗利益を多く獲得できても、在庫が多く残ってしまえば、MDとしては失格です。  だからこそ、この連載のOTBのシリーズでも述べたように、MDは売上だけでなく、粗利益・仕入・在庫を連動して、数字を見なければならない!ということになります。 ということは💡このような、売上のランキング的な帳票も、売上・粗利・(仕入)在庫をくっつけてみることで、様々な商品分析が可能になるということになります。 もしも、現状。単品商品の売上のランキング的な帳票が、売上関連しか提示されていない!という組織がありましたら、すぐにでもこのことを改善すべきです。 次回は、今回の項目の②以降のことをお話していきます。 では、皆さん。次回もお楽しみに。

商品分析について考えてみよう②

前回の記事の振り返り 前回から、週や月等の会議やMTで行われていると思われる、商品分析について取り上げています。 そもそもの、会議やMTの本来の目的は、 ”(結果が出た時点から)先の状況を良くするために、ベターな案を創出・決定・実践すること” このことです。  そして、その目的を果たすために、アパレル・ファッション小売業界では、週や月等の会議・MTが行われています。 その際に、週や月の商品の売れ筋等を確認する。そのような資料は、殆どのアパレル・ファッション小売業界では存在する筈です。では、何故そのような商品分析をするのかというと? ”(結果が出た時点から先の)顧客の消費動向心理を探る・知るため。” そして、週次・月次の会議・MTでそのことから、 ”先の商品計画のベターな案を創出・決定・実践するため” そのことになります。 商品の管理ルールを考えてみよう! 今回の記事では、前回の記事でも申し上げた、上記のような商品分析を行う際に使用する、商品管理のルールやコード体系について、考えていきたいと思います。 前回も申し上げたように、皆さん方が所属する組織には、商品管理に関するルールやコード等が存在している筈です。しかしながら、普段が使用されているそのことに疑問を持つ方は、殆どいらっしゃらないことでしょう。ですが、このことがしっかり定義されていないと、上記の目的を果たす商品分析を行うことは、難しくなります。 例えば、商品管理のルールに際しましては、”適時”を司る、シーズンを表すものがあります。 春夏秋冬等の区分が一般的なものになりますが、梅春・晩夏等更に、短く区分を区切っている組織があります。(時間軸を表す商品管理ルールについては、この連載で後日話をさせて頂きます) そして、商品の特徴を表すカテゴリー・品種・アイテム等と呼ばれるカテゴリー分類(中分類)があります。レディースで言えば、ブラウス・ニット・カットソー等の分類を行っている組織が多いです。 今回は、このカテゴリー分類を例に、商品管理ルールを決めることの重要性をお伝えします。 カテゴリー分類の定義が曖昧だと。。。 以下、例を用います。 あるレディースの組織は、アウターという大分類を、 ・コート・ジャケット・ブルゾンに分類して管理していたとします。 読者の皆さん。この分類の仕方どのように思いますか?私は、このことに以下のような疑問を感じます。 ・ショートダウンはどことの分類に入れたらいいの?・テーラーJK型の防寒アウターは、JK分類でいいの?・着丈中途半端なアウターは、コートという分類でいいの? 等そのこと以外にも、数多くの疑問が浮上する筈です。ましてや、このことが組織として定義されておらず、MD・バイヤーの個人の主観で、その分類が決められているとしたら?どうでしょう。 これは、皆さんもおわかりの通り。。。 正しい商品分析などできませんし、せっかく集めた顧客に関する貴重なデータも信憑性の薄いものとなってしまいます。 上記の分類を、顧客の用途に合わせ、防寒として使用するアウター。室内でも着用するアウターとして分類する。 着丈がブランドコンセプトにとって、重要なポイントであれば、防寒アウター短・防寒アウター(コート)等の分類にする。そして、その定義を明確する!ということであれば、ブランドコンセプトに見合った、顧客データを取ることが可能になる筈です。 カテゴリー分類で意識すべきことは? だからこそ、商品管理ルールに問題のある組織は、以下のことを意識して、そのことに見合ってなければ、その管理ルールを変更する必要性があるでしょう。 ・自分たちの顧客ターゲットの心理を反映できるルールにする。・顧客の用途やトレンドで大きく変化する分類を表すものにする。・必ずルールの定義を確定させ、MD・バイヤーの主観で決められないようにする。 以上のようなことを意識すれば、商品分析の精度も上がる筈です。 また、AI等のテクノロジーの導入で、商品分析の精度が上がる!と勘違いしている人が、この業界にはゴマンといますが、商品管理ルールがしっかりしていない組織にそのことを導入しても、システム導入にかけた莫大な金額が、無駄ということになります。 ですから、今皆さん方の組織の商品管理ルールにおかしな点があれば、是非今回の記事を意識してもらい、自分たちのブランド・ショップコンセプトに見合ったルールに再考することがお勧めします。...

商品分析について考えてみよう①

商品ごとの売上ランキング表を、今回は考えてみよう! アパレル・ファッション小売業に関わらず、小売業の仕事に従事している読者の方々は、週だったり月で売上ランキング的な帳票をご覧になっているはずです。   今回からは、商品売上ランキング的な帳票を使用した分析の話を簡単に、できるだけわかりやすく皆さんに伝えていこう!と思います。   月・週・日の商品分析は何のために行うの? では本題に入る前に💡 そもそも、何故小売業において、商品ランキング的な帳票を、日々または週でチェックしているのでしょうか?その目的とは、一体何なのでしょうか?   それは。。。 ”(結果が出た時点から先の)顧客の消費動向心理を探る・知るため。” このことになります。 そして、週次・月次の会議・MTでそのことから、 ”先の商品計画のベターな案を創出・決定・実践するため” このことです。   えてして、会議やMTなどは、ときに過去の結果を受けた反省ばかりに終始し、場合によっては、上司が部下に罵声を浴びせる場となっているケースが多くあります。 しかしながら、会議やMTの本来の目的は、先に述べたように、 ”(結果が出た時点から)先の状況を良くするために、ベターな案を創出・決定・実践すること”  このことを忘れてはいけません。 この目的を見据えた上で、商品ランキング的な帳票を分析し、顧客の先の心理を探る・知ることが重要なのです。   商品の管理ルールが重要 しかし、この上記の ”(結果が出た時点から先の)顧客の消費動向心理を探る・知るため。” には、あることが欠かせません。   それは何かと言うと💡 ”商品管理に関するルールがしっかりとなされていること。” このことが重要です。 そもそも、皆さんは、自身が所属する組織の商品管理に関するルールやコード体系に疑問を持ったことがありますか?かつての私は、そのことに疑問を持ったこともありませんでした。 ですが、何も考えないままに普段使用している、自身が所属している商品管理に関するルールやコード体系が、もし自分たちのブランドやショップに見合ったものになっていなかった場合。。。 ”(結果が出た時点から先の)顧客の消費動向心理を探る・知るため。” このことを達成することはできません。 次回からは、この商品管理のルールやコード体系について、考えていきたいと思います。...

売上・粗利・仕入・在庫表を活用してみよう!(最終回)

このシリーズも最終回 前回の記事では、私が以下のようなストーリー設計をしました。 A 6月~8月のセール施策を強める。 (予算より粗利率2%ダウン。今回のケースだと約5%オフ率アップ) B 増えるであろう7月の仕入枠を有効利用し、7月・8月の売上見込みを当初の予定より上げる (7月売上予算比97%。8月は102%) C 7・8月の売上見込みのアップのストーリーを考えた上で、仕入予算の92.1%まで仕入枠を拡げる。 (前回の記事のストーリー設計では仕入予算比20%以下になった) D 当初のストーリー(7月の仕入が予算比20%以下のもの)よりも売上・粗利高ともにアップ。 そして、”拡大する7月の仕入金額を、どう有効利用するのか?というストーリー設計”をどのように考えたらいいのか?ということを今回考えよう!ということでした。 殆どの組織は、7月の投入商品が決まっている? 昨今。殆どのアパレル・ファッション小売業の組織では、先数か月分の商品計画がなされている筈です。 今回のケースで言えば、4月30日という設定にしていますが、当然のことながら、7月にどのような商品を入荷・投入するのか?ということが、具体的なところまで決まっている筈です。 要は、その具体的に決まっている投入商品を、そのままの予定で投入しても良いのか?ということになります。 ここから、下記述べることは私の独断と偏見でしかありませんが、私なら当初の予定通りに商品を投入する!ということは行いません。その理由は? ”当初の予定通り商品を発注しても、売上予算の90%くらいの実力しかない可能性が高い。ましてや、仕入予算比90%程度の枠しかないのだから、更に売上が下がる懸念もある。” という理由です。 ここでは、細かいことは省きますが、現状のアパレル・ファッション小売業のMDスケジュールでは、7月に投入する商品の企画は、かなり早い段階から始まっています。おそらく、半年以上前のことです。そのような早い段階で準備された商品で、7月の売上が劇的に改善される可能性は低い!ということです。楽観的観測で、先の商品に対して”疑い”を持たないようなMDは、それこそ失格と言えます。 7月の投入予定商品を再編しなければならない? では、今回のケースではどのように考えたらいいのか?というと。。。 ”売れる可能性が高い商品を、7月の仕入枠で活用する!” ということになります。 では、4月30日の時点で、どのようなことが考えられるのか?ということを、以下私の独断と偏見で記載します。 ① 売れ筋・関連商品の追加投入② 死に筋商品中止(先々の商品も)③ 品切れ率を減らす/アイテム数量を減らす(1アイテムの数量の増加) このようなことを実践します。 まず①についてです。 →4月30日という段階では、春商品から夏商品に入れ替わっている組織が多いことでしょう。ということは💡 その時点で、ある程度商品の売れ筋・死筋情報は得られている筈です。また、SPA商品の場合は、この時点で商品企画を考えることは、難しいでしょうから、売れ筋商品の追加を行います。 また、元々の7月商品の中で、何が売れそうか?という情報も多少なりとも入ってますから、その商品に比重をおくような発注を行います。 次は②です。 →7月投入商品の中には、4月30日時点で、これは売れないな。という商品もある筈ですし、そのことがある程度4月30日時点では、わかる筈です。そのような商品を発注するのを中止します。 このことで、迷惑をこうむる部署・取引先等も発生する可能性もありますが、惰性で商品発注して、在庫をそのまま残してしまうことよりは、よっぽどマシでしょう。 最後に③です。 →このことは、②と付随します。投入予定商品を中止すれば、その分7月の投入アイテム数が減ります。例えば、7月の仕入予算が100万で10アイテム投入予定ならば、1アイテム当たり10万発注できます。これを5に減らせば、1アイテム当たり20万となります。 要は、①②のことを実行したうえで、売れそうな商品がなるべく、店頭で持続するようにし、売れ筋商品を切らさない処置を講ずるということです。...

売上・粗利・仕入・在庫表を活用してみよう!⑦

前回の振り返り 前回の記事では、MDが持ち合わせる権限。 ① (売れる商品を売れる分だけ)仕入すること。② 買いやすい価格に変更(セールする)し、売上点数を伸ばすこと。 を使い、7月の仕入枠を開け、7・8月以降の売上・粗利益をできるだけ多くする!ストーリーを作ろうということでした。 繰り返しますが、今回、私が用意したシチュエーションは下記になります。 1. 現在は4月30日。3月・4月(事実上確定しているとする)は確定の数字2. 5・6月は仕入予算通り商品は発注済み3. これから7月の商品発注を行うところ。LTは2か月。商品店頭着日は7月1日。4. 3月・4月の売上予算比は両月ともほぼ90%程度で推移 そして、今回私が以下述べるストーリー設計は、あくまで私の独断と偏見です。このこと以外の手段など無限にありますし、本当のことを言えば、組織によって様々な制限があることでしょう。ですので、あくまで1例としてお考えくださいm(__)m 仕入枠を確保し、売上を上げるストーリーを作る 私が、考えたストーリーは以下の通りです。   これを箇条書きで纏めますと以下に通りになります。   A 6月~8月のセール施策を強める。 (予算より粗利率2%ダウン。今回のケースだと約5%オフ率アップ) B 増えるであろう7月の仕入枠を有効利用し、7月・8月の売上見込みを当初の予定より上げる (7月売上予算比97%。8月は102%) C 7・8月の売上見込みのアップのストーリーを考えた上で、仕入予算の92.1%まで仕入枠を拡げる。金額は約3,200万。 (前回の記事のストーリー設計では仕入予算比20%以下になった) D 当初のストーリー(7月の仕入が予算比20%以下のもの)よりも売上・粗利高ともにアップ。   このようになります。このことを詳しく以下説明していきます。   まず、Aからです。→6月から8月の、セール施策を強めることで、粗利が下がり売上原価がアップします。売上原価がアップする!ということは?売上点数が予定よりも、上がるということになりますので、その分、仕入できる枠も空く!ということになります。また、セール施策を強めることによって、売上そのものも上がる可能性があるので、6月も、当初の売上予算比90%の見込みから、94%へとアップさせています。   そして、Bになります。→Aの施策が実行されれば、当然ですが、仕入枠が拡大することになります。   そこで、Cです。→拡大させた7月の仕入金額を、どう有効利用するのか?というストーリー設計をしっかり考えた上で、そのことで7・8月の売上見込みをアップさせ、7月の最終仕入金額を確定させる!ということになります。   上記に出てきました。。。 ”拡大させた7月の仕入金額を、どう有効利用するのか?というストーリー設計” このことが、特に重要になります。   次回は、このことを考えた上で、このシリーズのまとめを行います。では、皆さん。次回もお楽しみ。

売上・粗利・仕入・在庫表を活用しよう!⑥

7月仕入予算金額通りに仕入をすると、在庫がヤバイ状況に? 前回の記事では、7月の仕入金額を予算通り発注したら、7月以降の在庫金額はどうなるのか?ということまでお伝えしました。 繰り返しますが、今回、私が用意したシチュエーションは下記になります。 1. 現在は4月30日。3月・4月(事実上確定しているとする)は確定の数字2. 5・6月は仕入予算通り商品は発注済み3. これから7月の商品発注を行うところ。LTは2か月。商品店頭着日は7月1日。4. 3月・4月の売上予算比は両月ともほぼ90%程度で推移 7月の仕入予算は、3,500万円ほどです。しかし、今回は3・4月が売上予算の90%程度しか売れてませんでしたから、5月以降の売上予測も売上予算の90%程度で予測しています。前回の記事では、この売上予測で7月の仕入金額を予算通り入れたら大幅に在庫が増える!ということをお伝えしました。 8月末の在庫予算金額に合わせ、7月の仕入金額を決めると。。。 では、試しに8月末在庫金額が予算通りになるように、仕入金額を入力してみますと、下記の図のようになります。 7月の仕入予算約3,500万円に対し、約660万円(仕入予算比約19%程度)まで7月の仕入金額を減らせば、8月の期末在庫予算とほぼ同額となります。  因みに、この金額をどのように算出したのか?といいますと。 7月の仕入の実績・見込みの欄の数字を0にします。そのときに、8月末の実績・見込みの欄の在庫金額を見ると。約2,172万円という数字が表記されます。 8月末の在庫予算金額は、約2,830万円ですから。。。約2,830万円-約2,170万円=約660万円という金額が、導き出されることになります。 仕入金額を大幅に削減すれば、7・8月の売上は更に低下する? しかしながら、当初の7月の仕入予算の20%以下しか仕入をせずに、7月・8月の売上見込みである、売上予算比約90%程度!ということが、皆さん達成できると思いますか?? そうです。皆さんも薄々感じていられる通り、こんなに仕入を削ってしまっては、売上予算の90%程度を達成することも難しくなっていまいます。 売上が悪い局面で、MDが持ち合わせる手段で売上を良くする方法は2つしか考えられません。 その2つとは? ① (売れる商品を売れる分だけ)仕入すること。② 買いやすい価格に変更(セールする)し、売上点数を伸ばすこと。 この2つです。 今回のケースで7月の仕入を減らしてしまっては、おそらく6月末在庫は売上予算の90%程度の実力の商品しかありません。その上で、在庫だけを気にして、思いっきり仕入を減らせば、更に売上と粗利益の低下を招くのは間違いありません。 今回のケースは、まだ4月30日の段階です。 ということは💡MDが持ちうる権限の①②を使い、7月の仕入枠を大きくして、売上・粗利益を増やすストーリーを考えなければならない! ということになります。 では、どのようなストーリーを描いて、7月の仕入枠を増やし、7・8月の売上・粗利益をより多く獲得するのか?ということを次回考えていきます。 今回、ここで終わりです。 次回もお楽しみに。

売上・粗利・仕入・在庫表を活用してみよう!⑤

前回の振り返り 前回の記事は、5月から8月までの売上予測を現実に即して、予算比90%程度で予測。粗利率の5月以降の数字は、とりあえず予算通りに入れてみよう!ということでした。 そして、今回のシミュレーションでは、現在4月30日でこれから7月の仕入金額を決める段階になります。 要は、商品発注MT等で商品の発注を行う!という段階です。 繰り返しますが、今回、私が用意したシチュエーションは下記になります。 1. 現在は4月30日。3月・4月(事実上確定しているとする)は確定の数字2. 5・6月は仕入予算通り商品は発注済み3. これから7月の商品発注を行うところ。LTは2か月。商品店頭着日は7月1日。4. 3月・4月の売上予算比は両月ともほぼ90%程度で推移 では、皆さん。上記の図の6月末の在庫金額がどうなっているか?を見てみてください。予算に対して、どのような数字になっていますか? 予算設計した在庫金額よりも大幅に在庫が増えそうだ! 6月末の在庫予算比が110%を超えているということに気づいて頂けた思います。 金額でいうと、約1,500万円ほどの在庫超過です。 以前の記事でも触れましたが、このことを容量で考えるとどうなるでしょう? 例えば、平均値入率が60%で、商品の1点当たりの元売価金額平均が7,000円だとすると。1,500万円÷(1-60%)=3,750万円(元売価在庫金額)3,750万円÷7,000円=約5,357点。→予定よりも大幅に商品の在庫数が増えているともいえる? このことだけ考えても、この組織の在庫がヤバイ状況になっている!ということは、容易に予測がつく筈です。 繰り返しますが、現在4月30日でこれから7月の仕入金額を決める段階になります。 因みに7月の仕入予算金額は、約3,500万円ほどになっています。この金額を当初の予定通りに仕入れますか?ということになります。 アパレル・ファッション小売業界では、商品の仕入形態に違いはあれど、ブランド・ショップのMDは常にこういうシチュエーションに立たされているケースが多くあります。 多くのアパレル・ファッション小売業の組織は、7月にどのような商品を投入する予定なのかというものは、この段階ではある程度決まっている筈です。 しかしながら、前の記事でも触れましたが、7月の商品にビッグヒット商品がある!ということを根拠を持って証明できれば、この7月の仕入予算金額を使いきっても、7・8月の売上がこの商品のおかげで、劇的に上がって、なんとかなりそう!な気もしないではありません。 7月に仕入予算通りの金額を発注した場合。 ですが、前回の記事でそういった商品はないであろう!とのことから、売上予測を、予算の約90%程度で予測しています。 因みに、7月の仕入金額をそのまま発注すると、以下の図のようになります。 如何ですか?? 8月までには、予算の倍ほどの在庫原価金額になっているということが、一目瞭然です。 ということは💡7月の仕入金額を大幅に減らさないといけない!ということになります。次回は、この7月の仕入金額をどのくらいにすればいいのか?ただ減らせばいいのか?仕入の枠を開けるために、何か新しい手を打つのか?このことを、皆さんと考えたいと思います。  今回、ここで終わりです。 次回もお楽しみに。

売上・粗利・仕入・在庫表を活用してみよう!④

前回の振り返り 前回の記事は実際に、今回のシミュレーションの売上予測を入れてみよう!ということでしたが、結果。売上予算比90%程度しか推移していないのですから、5月以降の売上予測も、売上予算比90%程度で推移すると考え、その数字を入れてみましょう。ということでした。 今回、私が用意したシチュエーションは下記になります。 1. 現在は4月30日。3月・4月(事実上確定しているとする)は確定の数字2. 5・6月は仕入予算通り商品は発注済み3. これから7月の商品発注を行うところ。  LTは2か月。商品店頭着日は7月1日。4. 3月・4月の売上予算比は両月ともほぼ90%程度で推移 実際に、5月から8月までを、ほぼ売上予算比90%程度で入力すると以下の図にようになります。 粗利率の増減の表現は、店頭での施策を意味する? それでは、次に行うことは? 5月から8月の粗利率の数字を入れていくこととしましょう。 因みに、今回のシミュレーションでの粗利率の予算は、3月から8月にかけて、徐々に数字が下がっていることに、皆さんはお気づきのことでしょう。 これは、何を意味しているのか?? この連載を長く見られてきた方ならば、すぐにわかることでしょう。 要は、粗利率の予算の上下は、店頭での商品の販売計画を意味していることと同義!ということになります。 基本的には、商品がセールして売れれば、粗利率は低くなるわけですから、店頭での販売計画になります。ですから、セール計画を、予算の段階で予め、そのストーリを設計している!ということになります。 MDの予算設計は、いつかこの連載でも記載するつもりではいますが、繊研plusさんで現在、MDの予算設計に関する記事を書いておりますので、興味のある方は、そちらをご覧いただくとよいと思います。 ”算数で極める達人MDへの道《第2講》” https://senken.co.jp/posts/mast-chap2-01 話が脱線してまったので話を基に戻し、今回のケースですと、3月から徐々に粗利率の予算が下がり、7月・8月は3月に比べて、大幅に低い予算となっています。 ということは💡7月が本格的なセールをする予定である!ということを予め、予算設計に組み込み、8月はクリアランスで在庫消化を図る!そのような、ストーリーを加味した予算に見えます。 6月末の在庫金額はどんな数字になった? では、今回はその予算設計の段階で決められた、粗利率の予算を予算通りの数字で、この表の実績・見込みの欄に8月まで入力してみましょう!すると💡以下の図のようになります。 今回のシミュレーションでは、現在4月30日でこれから7月の仕入金額を決める段階になります。要は、発注MT等で商品の発注を行う!という段階です。 では、皆さん。上記の図の6月末の在庫金額がどうなっているか?を見てみてください。 予算に対して、どのような数字になっていますか? では、次回はこの6月末の在庫金額まで見ながら、7月の仕入を考えていきましょう! 今回、ここで終わりです。 次回もお楽しみに。

売上・粗利・仕入・在庫表を活用してみよう!③

前回のおさらい 前回の記事は、私が用意したシチュエーションに対して、5月以降(5月から8月)の売上の予測をしてみよう!ということでした。 私が用意したシチュエーションは下記になります。  1. 現在は4月30日。3月・4月(事実上確定しているとする)は確定の数字2. 5・6月は仕入予算通り商品は発注済み3. これから7月の商品発注を行うところ。LTは2か月。商品店頭着日は7月1日。4. 3月・4月の売上予算比は両月ともほぼ90%程度で推移 そして、売上・粗利・仕入・在庫表(以下OTB表)で上記のことを表現すると以下のようになります。 希望的観測で先の売上予測をしてはいけない? では、皆様方5月以降の売上予測はどのように入れましたか?? はっきりいって、このことに答えはありません。しかし、私が長年携わってきたアパレル・ファッション小売業界あるある!を今から言いますと、今回のシチュエーションは売上予算比が90%で推移しています。この状況を鑑みると、この組織の状況は決してよくありません。 しかしながら、このような状況のときに、多くのMDが、この先の状況は良くなるはず!という希望的観測。いや、こうなってほしい!という願望を数字に反映してしまいます。 このシチュエーションで言えば、先の売上予測を予算比100%以上の数字で予測してしまう!ということです。 今回のシチュエーションの場合は、先の5・6月の仕入金額は予算通りに確定しており、これから7月の仕入金額を決める!ということです。 ですが、このような希望的観測的思考な売上予測を入力すれば、この先どうなる?ということは、この読者の皆様なら、なんとなく想像はつくでしょう。 自分の間違いや非に”早く気づき、すぐに修正することができる”MDが優秀 多くの、アパレル・ファッション小売業界は、年2回~4回の商品ディレクションを行っています。 そして、発注してから商品が店頭に入荷してくる期間である、リードタイムも長い組織が多いのが現状です。 このことを前提に考えると、今回のシチュエーションの5・6月仕入確定商品は、おそらく売上予算比90%を超えるような商品がラインナップされている!とは、考えにくいといえます。 そのことを無視して、希望的観測で、5月以降の売上予測を予算比100%で予測する!というのは、組織の状況を益々危機に陥らせることにも繋がりかねません。 もし、そのような売上予測をしたいのであれば、先の商品にビッグヒット商品がある!ということを商品と数字という根拠をもって、周囲に説明しなければなりません。ですが、これは余程のことがなければ、難しいでしょう。  私が考える優秀なMDは、自分の間違いや非に”早く気づき、すぐに修正することができる”MDが優秀であると考えています。間違いや非に気づくスピードが遅いMDほど、組織に損害を与えることになります。 今回のシチュエーションで言えば、売上予算比90%程度しか推移していないのですから。。。 5月以降の売上予測と、考えるべきです。も、売上予算比90%程度で推移する ということで💡以下の図の売上の実績・見込みの欄に、5月以降の売上予測をだいたい90%程度で数字を入れたのが以下の図になります。 売上予測を入れ終わりましたので、次回は粗利益をどう考えるか?ということを、説明していきたいと思います。 今回、ここで終わりです。次回もお楽しみに。