オンワードのECは成長が鈍化している?
オンワード樫山の直近の年商の推移とEC売上をわかる範囲でまとめてみました。
※21年4月からオンワードクローゼット出店スタート(現状、約40店舗)
※2020年7月にZOZO再出店
※2019年〜2020年にて1400店舗閉鎖
※2019年1月にZOZO撤退
上記の注意点を踏まえ、少し気になった点をいくつか記載しておきます。
◯年商は2015年度から右肩下がり
オンワードは2015年2月期に2800億円以上あった売上が、現在1700億円弱まで減少しています。特に大量退店のあった2020年2月以降大幅に売上が減少しているのがわかります。また、2021年2月期はコロナによって店舗が閉まったタイミングでもありましたので、売上減少が顕著に出てしまったという経緯。営業利益もめちゃくちゃ下がってますね。直近の決算にて減少幅はやや改善されてはいますが、販管費率は昨年とほぼ横ばいの状況。
◯EC売上が伸びていく中でも販管費率の改善は見られない
これはコロナに入る前から特に大きな改善はなかった模様。コロナに入る前でもEC売上・EC費率は伸ばしていたものの、販管費率は悪化の傾向にありました。実店舗より販管費がかからないと言われるECですが、このあたりの運用がどうなっていたのかは気になるところですね。
ECの販管費で費用が嵩みやすいのは「荷造運賃」「広告宣伝(クーポン・WEB広告など)」あたりでしょうか。インフルエンサー活用が非常に多い同社でしたので、そのあたりの費用も相当かかっていたのかもしれません。また、EC支援会社に運用を振っている場合は、大手はレベニューシェアの契約が多いので、売上に対する料率にて支払いが発生します。売上に対して20〜30%のケースをよく見かけますが、オンワードがこのような契約をまいていたとしたら規模が大きい分、率はもっと低いと推測されますが。
◯モール売上が思ったほど変動していない
ZOZOからの撤退を決めた2019年初旬からモール売上は減少はしているものの、21年2月期には40億円を超える売上があります。また、再度ZOZOに出店し、22年2月期にて1年間で10数億円モール売上が伸びていることから、ZOZO出店に自社EC以外の売上が伸びたものと推測されます。2020年に店頭が閉まったことから、各社モール回帰が見られましたが、オンワードも例に漏れずモール回帰の動きが見られます。
◯直近では自社ECは伸びていない
店舗撤退により、売り場面積が2019年2月期以降、大きく減少しているのがわかります。そして、ECは大量退店前に積極的に店頭顧客を送客したのか、2019年2月期〜2020年2月期にかけて大きく伸びが見られますね。売り場面積の減少とともにEC売上は大きく伸びたものの、2019年〜2021年の約2年間で国内EC売上はモール含め160億円程度の伸び。これに対し、年商は740億円減少という結果です。
コロナの影響もあり、全体の売上が大きく吹っ飛んでしまっていますが、当然ながらECで補完できる訳もなかった状況。一方、20年の4月以降は店頭が閉まったこともありECバブルが発生。その分、2022年2月期は昨対を取ることすら難しくなり、結果自社ECは3億5400万円売上が減少。2021年2月期に数字が上がりすぎたこともあり、EC売上がピークに到達したかどうかはまだ何とも言えませんね。今年度で成長しない場合はピークを迎えた可能性は多いに出てきますが…。
◯オンワードクローゼットの貢献度が低い?
オンワード樫山 OMO型店舗「オンワードクローゼットストア/セレクト」をららぽーと福岡に出店
21年4月からスタートしたオンワードクローゼットの出店ですが、現在既に40店舗程度出店していてます。EC売上を伸ばすためのOMO店舗という位置付けで、店内のあらゆる箇所にECへの導線を設置。貢献度も高い、という報道がありましたが今のところ自社ECのトップラインは伸びていない状況ですね。同様の取り組みをしているアダストリアは自社ECの売上をきっちりと伸ばしているので、ここはちょっと気になるところ。昨年が上がりすぎた、ということも要因なのでしょうが、40店舗出店するという肝入りの事業なので、貢献度は気になるところですね。
年度によって決算書に記載されいている数字が変わるので推測するしかない点も多々ありますが、オンワードのEC計画はやや懸念点があると感じてしまいます。D2Cの取り組みも非常に積極的な同社ですので、次年度は大きな成長を勝手に期待したいと思います。
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