しまむら業績好調は「アベイル」と「バースデイ」が原因か?

しまむら業績好調は「アベイル」と「バースデイ」が原因か?

しまむら業績好調は「アベイル」と「バースデイ」が原因か?

コロナに入って他のアパレルとは逆に業績が好調に推移しているしまむらですが、直近の決算では過去最高の利益を叩き出したという報道。ECもスタートし、飛ぶ鳥を落とす勢いの同社ですが、決算書の中身を確認しましてその内訳を見てみることにしました。

売上・営業利益・販管費

2022年2月期は過去最高の売上と営業利益を記録。それまでの業績のピークと思われるのが2017年2月期でしたが、その時期と比較すると売上は181億円・営業利益6億円ほど増加。ここ数年、業績不振にあえいでいたこともあり、2017年と比較するとそこまで大きな伸びには見えませんが、アパレル全体の市場規模が大きく目減りする中ですから素晴らしいと思います。

同社の得意とするローコストオペレーションによる販管費の圧縮ですが、これもやや数字が戻ってきており、直近では販管費率は25.8%。2017年は24.8%でしたが、直近と比較すると大きな改善が見られます。低い時期は24%を切っている企業でしたが、1店舗あたりの売上高が大きく下がり続けていましたので店舗を増やすほど販管費率は改善しない傾向にありました。こちらも直近ではやや改善されているようですね。

昨年はしまむら単体にて1店舗あたり平均3.1億円程度の売上。2017年は3.3億円程度の売上があったので、こちらもまだピーク時に戻っていない状況です。

また、2020年から自社ECをスタートさせていますが、その恩恵があるかは今のところまだ見えない状況ですね。ECでの年間売上が28億円だとまだ年商に対して占める売上が少なすぎるので(0.5%程度)、業績にどう影響するかは当然ながらまだ見えません。完全な内製化なのか、レベニューシェアで料率での支払いなのかによっても販管費は変わってきそうです。インフルエンサーを積極的に活用していますが、これは仕入れ元の持ち込み企画との噂ですね。インフルエンサーへの支払いが固定なのか、売上に対する成功報酬なのかでも数字が変わってきそうです。

店舗数の推移

ここ数年、しまむらの販管費率が悪化していた要因として、先述しましたように店舗数を増やしているにも関わらず売上が一向に伸びない、という状況がありました。

特に業績が悪化した2018年〜2019年にかけて出店が顕著に見られますが、現状しまむら単体で見ると店舗数は減少傾向にありますね。大手アパレルの傾向として、出店店舗数を抑制しながらEC売上・EC比率を伸ばし、販管費を圧縮。利益率を向上させるという傾向にあります。

ブランド単体の売上を確認してみますと、ピーク時の2017年は店舗数が1365店舗で売上4,519億円37百万円に対し、2022年は店舗数1421店舗で売上4,401億18百万円。2020年から出店数を退店数が上回るようになっています。それでも1400店舗を超える店舗数は衣料品の単体ブランドではぶっちぎり1位でしょう。ユニクロは2014年から出店数を伸ばさず800店舗程度をスクラップ&ビルドで維持し、EC売上を大きく伸ばしておりますので、今後はしまむらもこのような動きになっていくのでしょうか。

店舗受け取りが9割は店舗網の恩恵?

 

これだけの店舗網があると、お客様からしたら「すぐ店舗に行ける」という状況になる訳なので、EC売上が急激には伸びにくいかと思います。その分、EC販売における「店舗受け取り」は利便性が高く、いまだ店舗受け取りの比率が9割を維持しているのは、これも原因でしょうか。

EC会員が109万人に到達とのことですが、店舗試着予約サービスである「しまコレ」のダウンロード数も100万程度だったことを考えますと、現状の会員は店舗試着から購入していた「しまコレ」ユーザーの比率も高いのかもしれません。自前の物流網から店間移動を日々繰り返しているしまむらからすると、店舗受け取りの比重が高いのは望ましいことですが、EC売上が伸びていくほどこの比率は下がっていくとは思います。

年商を押し上げたのはバースデイ・粗利の改善はアベイル

しまむら単体での売上がまだ戻ってきていないのに年商が上がった、ということは別のブランドが伸びたということですが、その要因となったのはどのブランドなのでしょうか。

2017年2月

アベイル売上:503億77百万円・粗利率34.2%(粗利益高 172億29百万円)

バースデイ売上:468億82百万円・粗利率 33.0%(粗利益高 154億71百万円)

2022年2月

アベイル

アベイル売上:544億46百万円・粗利率38.3%(粗利益高 208億52百万円)

バースデイ売上:695億5百万円・粗利率 34.6%(粗利益高 240億48百万円)

 

バースデイは売上で226億円増加。(粗利は85億円増加。)アベイルは粗利で36億円増加。アベイルは2017年から店舗数が301店舗→314店舗と、5年間で13店舗増加にとどまっており、2018年からほぼ店舗を増やしておりません。バースデイは240店舗→310店舗と70店舗増加。粗利率は維持している状況。1店舗あたりの売上も伸ばしてします。業績好調の要因はこちらですね。

シャンブルも粗利が大きく伸びており、2017年から35億45百万円増加。

在庫に関しては増えてはいるものの、キャッシュも大きく増加しており、キャッシュフローは全く問題なさそうですね。

今後はトータルでトップラインを伸ばしていくのか、もしくは販管費を下げていき利益率を高める方向にいくのか。来期の予測を見ますとしまむら・アベイルに関してはほぼ現状維持、シャンブル・バースデイはやや店舗増加という傾向なので、シャンブル・バースデイは前者、しまむら・アベイルは後者という方向性でしょうか。今年度は自社ECのアクセルを踏む年にするのか注目ですね。