指名検索はどう購買に繋げるのか?

ブランドネームで検索行動を起こす「指名検索」ですが、これが発生しているとそのブランドは当然需要があるという事です。しかし、それが発生しているにも関わらず売上が適切に取れていないケースもあったりします。今回はそこを深堀りしてみましょう。   Googleアナリティクスで計測できる「CV経路」という項目があるのですが、こちらを見るとユーザーがどういった経路を経てCVに至ったかがわかるようになっています。このデータ上では指名検索だけを抜き取る事ができませんが、次に発生する行動をここから予測しておくと指名検索についても対策が取れるようになってきます。   ユーザーは再訪を繰り返してCVに至る CV経路を普段からよく見ていればわかるのですが、ユーザーは1回の訪問でCVに至る事はほとんどありません。大概は、検索から何度も訪問したり、ソーシャルを何度も経由したり、またはノーリファラー(ダイレクト)で訪問を繰り返した後、CVに至ります。どれかがクリティカルな要素、というよりはソーシャルの画像や商品画像、商品コメントや記事コンテンツ全てが購買決定要因の1つであるという事です。なるべくそれらに触れてもらう事でCVの確率を高めていきます。この傾向が見えてくると指名検索後に起こる行動は下記のようなものだと理解できます。 ①ブランド名を含むキーワードで検索後、流入。↓②サイトコンテンツを回遊、もしくは離脱してからソーシャル閲覧。↓③ブックマークしてから訪問を繰り返す。商品ページをブックマークする場合も。↓④購入 ②が飛ばされる事もあるかとは思いますが、概ねこのような感じでしょうか。という事は、指名検索を確率高く購買に変えていきたい場合、②と③で購買決定要因を増やしてあげればいいのです。特に③はブックマークまでしていますから取り分けCVが獲得しやすいですね。 まず②の項目ですが、こちらはざっくり言えば「サイトコンテンツの充実」でしょう。ブログ・特集記事からスタッフのコーデ画像、シーズンルックなどなど。ここに関してはコンテンツマーケティングの要素なので、また詳しくお話しますが、商品への導線をちゃんと引いてあげるだけで効果は上がります。逆に導線が適切に引かれていない場合、大きく機会損失しますのでご注意ください。特に販売員コーデやシーズンルックのようにコーディネートが見れるコンテンツに関しては導線が命です。視認性が悪い、リンクがどこに貼られているかが不明瞭、商品クレジットが無いなど、このような事でめちゃくちゃ機会損失しているサイトはよく見られます。 ③に関してですが、こちらは特定の商品ページ自体をブックマークしているユーザーも少なくありませんので、商品詳細ページで背中を押してあげるような情報をしっかり掲載しておきましょう。例えば、 ・どんな会員特典があるか?ポイントはどの程度つくのか?・当該アイテムを使ったコーディネート と、簡単に掲載できそうなのはこのあたりでしょうか。もちろん、 ・バーチャルフィッティング導入・商品に関する記事を差し込む のような事をやっているブランドはありますね。 BEAMSの商品詳細ページなどは特に情報量が豊富で購買を後押ししてくれるかと。 また、指名検索の中で「ブランド名 アイテム名」や「ブランド名 掲載雑誌名」のように目的買いの側面が強い場合は、商品ページでもしっかりSEO対策しておき、ユーザーがすぐ目的のページへ行き着くようにしておきましょう。サイト内検索データから、どういったワードで検索されているかも確認し、それを商品名に差し込むとより効果的ですね。   商品タイトルにブランド名を差し込んでおくか、もしくは最低限ディスクリプションにだけ差し込んでおくのも良いでしょう。商品コメントにもブランド名と共に検索されそうなワードを差し込んでおき、回遊してきたユーザーが迷わないようにしてあげるのも重要な作業です。   Googleアナリティクス上にて「閲覧開始数」の増減もしっかり確認し、SEO対策したページがちゃんと検索で引っかかったのかを検証しておきましょう。商品ページからのランディングが多い場合、回遊してきたユーザーがその商品をブックマークしてくれている可能性も高いです。   競合サイトにユーザーを取られている場合 ブランド名検索で競合、つまり他社ECモールや卸先のECにユーザーを取られているケースもあるでしょう。その場合はsearch consoleからブランド名検索のクリック率を確認してみましょう。 こちらがsearch consoleの画面ですね。「クリック数」「表示回数」「クリック率」「掲載順位」と並んでいまして、言葉の通りなんで見方は難しくありません。問題はどの指標を見るかですね。ブランドの指名検索をチェックする時に見るのは下記のような感じでしょうか。 ・クリック数と表示回数の増減 … 施策を打った際に指名検索が増加したかどうか。ブランドの知名度を図る。・掲載順位 … 記事コンテンツを含むSEO対策で順位がどう変動したか。・クリック率 … 指名検索の発生から適切にECサイトへ流入があるか。 今回のケースで注目したいのがクリック率ですね。ブランドの指名検索が発生した際に、公式サイトであるなら掲載順位は高くなりやすいのですが、にも関わらずクリック数が少ない…。なんて事は起こっていないでしょうか。つまりクリック率がやけに低い、という事ですね。知名度が高く、SKU・ページ数も多いECモールは指名検索の際に競合になりやすいのですが、ブランド公式が掲載順位で1位でもクリック率が低い場合はこれらの競合に取られている可能性が高いです。逆に、掲載順位が2位以下だったとしてもクリック率が高ければそれほど問題では無かったりします。ここを常に計測していなければ対策が取れませんのでご注意ください。掲載順位を上げるべきなのか?クリック率を上げるべきなのか?それとも実は現況で大きな問題は無いのか?の判断が出来ないからです。  ...

「その商品に需要はあるのか?」をまず確認しましょう

前回、ECでは顕在化した需要を先に取りにいくというお話をしましたが、 「そもそもうちのブランドって需要がそんなにあるのかしら?」 という方もいらっしゃるでしょう。 どんなEC関連本を読んでみても、結局物が売れるかどうかは「商品力」という結論。リピーターが増えるのも、ソーシャルのフォロワーが伸びるのも、口コミが広がるのも物ありきです。物が良くないのにECをスタートしたから売れる、なんていう都合の良いお話はこの世に存在しません。その商品の良さを増幅してくれるのがデジタルなだけですね。しかし、 「その商品は今現在、Web上でどの程度需要があるのか?」 を判断する為の指標はいくつかありますので、まずはそこからお話していきましょう。   ブランド認知が高まってくると伸びる数字 認知されたり、ブランドのファンが増えるとWeb上ではどのような変化が起こるのでしょうか。わかりやすい数字の変化は下記でしょうか。 ・指名検索・ABOUTページの閲覧数・ルックページの閲覧数・UGCの増加 ブランド名で検索行動を起こす=指名検索ですね。ブランド認知が高くなってくると当然ながらこの数字は伸びていきます。ECサイトをブックマークしておかなくても、Google検索で毎回ブランド名検索する人も結構な割合でいるでしょう。かく言う筆者も、Amazonでお買い物する際は今だにGoogle検索で「Amazon」と打ち込んでいます。指名検索は売上に直結しやすい検索行動なので、これが多いと少ないとでは状況は全然違ってきます。ではどこでこの指名検索の増減を計るのか。 Google Search Console  それがこちら、Googleの「Search Console」ですね。どういった検索キーワードでユーザーがECサイトに流入したかがわかるソフトなので、定期的に推移を追う事で増減がわかります。 「クリック数」「表示回数」「クリック率」「掲載順位」が確認できますので、指名検索が発生している(表示回数が増えている)のに流入が無かった(クリック数が増えない)場合の原因も推測が可能です。   指名検索はどう増やしたらいい? ブランド認知の指標である指名検索ですが、どうやったら増えるのか?の方法論は様々ありますね。メディア掲載したりインフルエンサーに拡散してもらったりとお金を支払う方法もありますが、一番お金がかからない方法は「店頭送客」でしょう。初期フェーズはその為にWeb(ECサイトを含む)を活用すべきです。アイテム・コーディネート紹介はもちろん、店頭で受けれるサービスの充実やキャンペーン・店頭販促の打ち出しをECサイトからソーシャルメディアに至るまでプッシュ。店頭では来店されたお客様に対し、ソーシャルやECサイトのQRコードが記載されたショップカードをお渡しし、とにかくブランド名を認知してもらえるよう徹底します。トラフィックがそれほど多くない立地に出店しているのであれば、入店客数の変動も計測しておいた方が良いでしょう。このような地道な努力の積み重ねによりブランドが認知され、指名検索が増えていくのです。Webを見て店頭に来店されるお客様は、そもそもブランドへの興味関心が高い方ですから、店頭で少し気になった商品があれば指名検索に繋がりやすい。このような手順で、ブランドとユーザーの接触回数が増えていき、最終的に購買に繋がっていくのです。 ブランドに興味関心が出てきたユーザーは、次に「どんなブランドなのか?」「どんなアイテムがあってどう合わせるのか?」が知りたくなります。その時に機能するのがABOUTページやルックページですね。ここの数字は簡単にコントロール出来るものでも無いのですが、認知度+ブランドロイヤリティのバロメーターとして活用してもらえたら良いかと。ただ、見に来たユーザーにがっかりされないように作り込んでおく必要はありますから、Googleアナリティクスにて「離脱率」や「平均ページ滞在時間」、次にどのページに遷移したかは見ておきましょう。トラフィックは多いけれど滞在時間が短く離脱率が高い、などのような現象が起こっている場合は、サイトコンテンツに問題があるかもしれませんのでご注意ください。 離脱率・平均ページ滞在時間…「行動→サイトコンテンツ→(当該ページ)」 ページ遷移…「行動→サイトコンテンツ→(当該ページ)→ナビゲーションサマリー」 最後にUGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)、所謂ソーシャルメディア上にてユーザー自身がブランドについて発信したコンテンツですが、こちらはソーシャルメディア上での口コミのようなものなので、ポジティブな口コミが増えると認知が上がり、見込み客の獲得に繋がりますし、当然指名検索も増えます。意図的に増やす事も可能ですので、また後日書きたいと思います。   まずはECで確認できる数字でブランド認知や商品力を計り、需要があればそこから広げていく、需要が無いのであれば立ち戻って商品企画やマーケティング戦略からやり直す。ここを無視していきなり広告宣伝費に資金を投下し過ぎると、費用対効果が合わないケースが見受けられますのでご注意あれ。

ECって何から手をつけるべき?

ECディレクターにとって重要な決断は、「決められた予算」の中で「優先順位」を決めて施策を実行する事で、言葉にしてみると簡単に聞こえますが、経験則が無いと意外と判断が難しいものです。 既に潤沢に売れているECサイトであれば予算に余裕があり打ち手も豊富でしょう。しかし、大して売れてもいないECサイトの場合は当然ながら大きく投資なんて出来ません。故に、優先順位の付け方としては、   「低コストで売上のインパクトが大きいものから順番に」   が鉄則です。但し、ちょっとした施策で売上が大きく上がるケースというのは非常に限定的で、「需要はあったが機会損失していた場合」に限ります。例えば、   ○指名検索で流入があるのにSKU・導線設計・クリエイティブに難あり○会員やソーシャルのフォロワーが多いのに告知が不十分   のようなケースですね。既に顕在化した需要があるにも関わらず、それをちゃんと売上に変えれていないという事です。このような事態を放置しておりますと、卸先の他社モールやセレクトにサクッと潜在顧客を持っていかれる事でしょう。そうならない為にも現在のデータを検証し、今どこに問題があるのか?を読み取る事が重要です。リニューアルしたら売上が伸びると思っている人も多くいらっしゃいますが、デザインが変わったところで売上に対するインパクトは小さいので無駄にお金を使う前にデータと向き合いましょう。(むしろ既存サイトで慣れていたユーザーの離脱を招くと売上が下がります。)   新規獲得も大事だけど… ブランドにとって新規獲得って成長性に関わってくるのでめちゃくちゃ大事なんですが、そこには当然ながら新規獲得の為の時間的・金銭的コストがかかってきます。しかし、その割りに短期的な売上のインパクトは小さく時間をかけなければならないケースが多く、特にECはその特性上、新規獲得に向かないツールである事からも優先度は下げた方が良いでしょう。店舗があるなら店舗で新規獲得した方が早いですし、大手ならその後に店頭在庫連携すると大概売上は伸びます。 それよりも、今目の前にある売上をしっかり取る事で、次の新規獲得に向けた資金源にしていく事が重要です。要は「売れてきたら上層部も財布の紐が緩くなるよ」って事ですね。結果出ない時にぶつくさ文句言っても意味無いので、さっさと結果出してお金出るような環境にしていきましょう。 一方で、新規獲得の為のツールとしてはソーシャルメディアが活用しやすいというお話は前回でもしておりましたが、何も広告やインフルエンサーマーケティングの実行が必須な訳ではありません。オーガニックの投稿でも十分新規は拾えますので、社内リソースがある場合は並行してソーシャル運用を強化するのも良いでしょう。プラスの費用が発生せず、社内リソースの活用で売上が伸びるのであればそれに越した事はありませんので。   課題としては、今どこに取れていない需要があるのか?をしっかり具体化する事。そしてどうやったらこの売上を形にできるのか、です。これこそが施策の優先順位、並びにアクションプランへと形を変えていきます。Googleアナリティクスのデータや売上の推移を見ながら課題抽出・アクションプランへの落とし込みへと実行していきましょう。次回からは、具体的なシーン別での課題抽出と実行プランの立て方をご説明して参ります。

ECの特性を理解する事が運用のスタート

「EC担当者」という言葉を耳にするとWebに詳しくなければならない、と思ってしまいませんか?それは一つの事実ではあるのですが、逆にWebに詳しければ売上を作れるのでしょうか?   筆者はアパレルECの現場に10年程いますが、過去Web、特にEC周りに詳しいだけの人が売上を作れたケースを見た事がありません。それよりも、信念を持ってブランドを育てたいと思っている人の方が大きな売上を作っていますし、その熱量と比較するとWebの知識など微力だと感じる事が多数です。   一方でEC関連の知識があれば「もっと機会損失は防げた」「認知してもらえるチャンスが増える」と感じる事もあるのですが、どれもブランドとしてある程度の需要を生み出してからのお話になります。つまり0→1でブランドを作る段階において、EC関連の知識がそれほど重要だとは思わないのです。   ブランドの初期段階で認知を高め、ファン獲得をするのに最適なチャネルは「店舗」や「近しい人からの紹介」だったりします。それが一部ソーシャルメディアに置き換えられてきた、というケースは見られますが、結局ECでブランドを売りたければ、「認知」「需要」を先に作るしか無いのです。   ECは需要を創出するものではない では何故、需要自体を創出する訳ではないECがここまで持て囃され、重要なチャネルとして位置付けられているのでしょうか。それは、まだEC売上の天井が見えていない事に起因しています。アパレル小売大手各社のEC比率は年々上昇しているのですが、何故このような事が起こっているのでしょうか。 国内のEC比率は現在右肩上がりで成長中であり、2018年時点で6.22%。ファッション分野に限定すると13%弱というデータが出ています。まだまだ低い数値ではありますが、リアルからECへと消費が徐々に以降されているのですから、それに連動してEC比率も当然上がります。アパレルに限らず成長市場であるからこそ、まだ天井が見えない。そのせいかECに希望を持つ事業者が多いのではないかと推測します。   また、ECは実店舗と比較すると利益率が高いチャネルと言われていますが、新規客獲得コストについては議論が別れます。先述した通り、認知を作るには店舗が最適です。過去、アパレル大手がECをスタートした際は、多店舗展開により既にブランド認知が高い状態でしたので顧客獲得コストが必要無かったのです。出店に関わるイニシャルコストや運営していく為のランニングコストは当然ECが安いのですが、ここだけはズレてはいけない認識でしょう。   Webの特性を理解すれば「出店したら売れる」とは思わない 問題は、全てのブランドに等しく成長のチャンスがあるのかどうか?という点です。冒頭でお話しましたようにECで売上を伸ばすには認知度やブランド力が必要です。ECはユーザーが能動的に働きかける事で売上を作るショップなので、目的買いの側面が強い。   リアル店舗のようにブランド認知も無く、ふらっと立ち寄った人が商品を購入していくような購買行動は、物を直接見る事で知れる情報(素材・シルエット・販売員の接客・店舗が作り出す世界観)があるからでしょう。これをWebに無理やり置き換えるとするならECモールやソーシャルメディアでしょうか。   ECモールであるなら、モール内でクーポンを撒いたり、広告を出稿する事で露出を増やして売上を伸ばす事も可能なケースはありますが、そのロジックで購入するユーザーはモールの外で購入する可能性が低い。モール側も一度購入したユーザーは囲い込みたいでしょうから、お得なクーポンやセールでとにかくリピートを促進します。出店ブランドの外部リンクを許さない姿勢を見てもわかりますが、顧客の流出をとにかく防いでいます。しかし、その顧客は本来であればブランド直営店の顧客になるはずだった方かもしれないのです。   ソーシャルメディアを使っての新規獲得のチャンスは大いにありますが、社内リソースの問題が大きいのでしっかり手を付けれているブランドがそれほど多くありません。結果、既存ファンの数が可視化されたにすぎず、運用に力を入れて新規獲得できているブランドの方が少ないでしょう。このような特性を理解していれば、「ECを出店しただけで売上が取れる」などというお気楽なお話は出てこないでしょう。   何から始めるのが正解なのか? 結局「どうしたらECで売れるのか?」を判断するには、今ブランドが置かれている状況と、取れているデータから判断せざるを得ません。   そもそも誰にも刺さっておらずファン獲得が困難であるならばコンセプトや商品企画から見直す必要があるでしょうし、商品が良くても知名度が伸びていないのであれば、ブランドを認知してもらう為のプロモーションやWeb戦略を考案しなければなりません。   こちらの記事ではECディレクターが、自ブランドの置かれている状況をデータから冷静に判断し、次に打つべき一手を間違わず打てるようなノウハウを記載していきます。アパレルECの現場では、各々が日々託されたルーティーンをこなす事に注力し過ぎるあまり、ブランド全体を見据えたECの立ち位置を理解できないまま業務が進行しているケースがよく見受けられます。ECを支援する外注企業も数多く存在しますが、担当者がアパレル・小売出身では無いからか、小売に対する理解すら無いというケースが存在し、最適化が行われないまま機会損失を産み続ける事も珍しくないのです。全体を指揮する役割がどの現場でも不足し、アパレルの小売出身者がECに必要なスキルを身につけ対応していく事が大いに求められる中、筆者の記事がその一役を担ってくれるのであれば幸いです。