アダストリアがEC売上を伸ばせている理由
アダストリアの直近の決算から、年商・利益・EC売上・店舗数の推移をまとめてみました。
※2021年5月(2022年2月期)からドットエスティの実店舗が出店スタート。現在7店舗。 ※直近では実店舗が再び増加。 ※2020年2月期にEC不具合により1ヶ月超、運営停止。 ※2019年2月期 BUZZWITスタート。1年間で20億円程度の売上。(ZOZOメインのブランド) ※2018年2月期以降、出店抑制。2020年2月期までトップラインを維持しながら販管費削減を実現。 ※2015年2月期の店舗数はWEBストアを含む数字。
EC売上の報道が目立つ同社ですが、その中身はどうなっていたのか?気になる点についていくつか記載しておきます。
◯ECによる販管費の削減は成功していた?
昨今の大手アパレルのECシフトの狙いはトップラインを伸ばすことではなく、利益率重視にあったかと思われます。販管費の嵩む店舗の出店を抑えながらECで売上を取っていく、という流れが傾向として見られ、アダストリアは2020年2月期まではお手本のようにそれらを実現させています。
全体では2018年2月期をピークに店舗数が減少に転じており、トップラインは維持しつつも販管費を圧縮しているのが数字から見て取れます。2018年2月期から2019年2月期にかけてはEC売上が70億円程度伸びており、店舗数は47店舗減少。WEBストアは11店舗増加という内容。コロナに入り2021年2月期以降は年商を落とす結果となっておりますが、EC売上に関しては以前伸び続けております。ここはオンワードと対照的な結果ですね。
◯モールは直近で成長鈍化?
そんな好調なEC売上ですが、内訳に関しては変化があります。2022年2月期のモール売上が3億円弱程度しか伸びておらず、自社ECの比率がどんどん伸びております。アダストリアはモール脱却を狙っている様子は見かけず、2019年2月期にはBUZZWITにてZOZOメインで運営するブランドを複数スタートさせております。(現在18ブランド。自社ECやSHOPLISTの展開も一部あります。)そんな中でモール売上がほぼ伸びていない状況(第3Qまでは前年割れ)ですので、天井を迎えたのか、それとも主要ECモールでの販売手法を変更したのか。モール内での広告やクーポン配信などを抑制すると売上は伸びにくいとは思いますので、そのあたりの取り組みが原因なのか。決算書には「EC好調」としか記載がありませんので詳細は不明です。
◯ドットエスティ出店から会員・自社EC売上増加
2020年2月期にて自社ECにて不具合があり、1ヶ月超運営がストップしていたことから、一時期売上が伸びていないように見えるドットエスティですが、その後はしっかりと伸びが見られます。2021年2月期はコロナでECバブルがあった時期ですが、そこから33億円以上売上を伸ばしているのは凄いですね。多くの企業で前年割れしていたかと推測されますが、この時期にドットエスティの実店舗を複数出店し、TVCMにて大々的に告知。こちらも売上アップの要因の一つだったのではないでしょうか。
ドットエスティの店舗は出店前に店舗近隣で事前に会員登録を促進をしておりますので、これらの取り組みが21年から22年にかけての190万人会員増加に貢献していると思われます。
◯ブランド別推移
最後にブランド別の推移ですが、店舗数は全体では2018年2月期がピークでしたが、ブランドごとにばらつきはありますね。ローリーズファーム・レイジブルーは2015年2月期以降に既に減少傾向。
その他の主要ブランドは2018年2月期から2020年2月期あたりをピークに減少傾向。グローバルワークですら2020年2月期には既に店舗を減らしにかかっています。こう見ますと、EC売上を伸ばしてブランドとしてのトップラインを伸ばす、もしくは維持という思惑は2020年2月期にはそうと上手くいっていたように思います。今も店舗数が増えているのはベイフローのみで、ここはまだブランドとしての伸び代が大きいという判断でしょうか。
以上がざっくりとした所感でしょうか。これだけの規模であるにも関わらず、しっかりとECを成長させるのは素晴らしいですね。M&Aや新ブランドも続々発表されておりますので、EC売上自体はまだまだ伸びていきそうな気配です。